伏見 直江

Fushimi Naoe (1908 – 1982)

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女優を止めれば何百萬圓かの遺産を相續させるといふ棚牡丹式のウマイ話を弊履のやうにかなぐり捨てゝ斷つた彼は、どこまでも變り種である。まだ築地小劇場に居た頃の挿話だが橋の上に女乞食がブルブルふるへてゐたのを見て貧弱な財布の底を叩いて十圓紙幣一枚を惜氣もなくポント投げて遣った具合なぞどう見ても女侠客らしいところがある。

築地小劇場から帝キネに入社して瞬く間に數本の映畫を撮つて一躍スターに納まつたが、『名劔入り亂れ』という映畫で相手役の百々之助と喧嘩して帝キネをおさらばを極めた。

間もなく日活に迎へられて第一囘作品『忠次御用篇』で愛妾お品に扮して持前の侠艶振りを発揮し續いて『阪本龍馬』に出演して小氣味のいゝ藝を見せてフアンを騒がせている。江戸辯のキビキビした胸のすくような女優である。

『玉麗佳集』(1928年)