
独ニッツォ社が1930年代半ばに発売していた映写機。
現存数の少ない機種。2015年9月末に独イーベイで「アーム部分にダメージがある」と売りに出されていたのを見つけて購入。輸送時にフランクフルトで行方不明となり日本に到着したのが10月半ばでした。
コンディションは悪く、埃と汚れに塗れ、電源ケーブルがなく、フィルム受け(上)の一部が破損し、分厚い鋳物のアームが途中で真っ二つに折れていました。
神奈川の隆盛工業様に連絡を入れさせてもらい、「結果を保証できない」の条件を呑んだ上で溶接を依頼。作業完了の連絡に添付されていたのが上の写真でした。(3年後に溶接業者さんの公式ブログに再録された記事前編+後編)
当時としては珍しい8ミリ/9.5ミリ/16ミリの3フォーマット互換映写機。リールの軸やゲージ、ギアを交換するのではなく、レンズ/リール受け/ゲージがひと塊になった「ヘッド部分」を丸ごと外して別形式ヘッドを付け替える形です。
モーターやランプハウス、冷却用ファン、スイッチ類は8ミリでも16ミリでも変わらないという話で、細々としたパーツを取り換えるより合理的とも言えそうです。同形式を採用していたのは他にエルモ社・躍進號(1930年代後半)、仏エルクサム社のシニア映写機(1950年頃)の二種類だけではなかったかと思われます。
レンズはニッツオ 1:1.7 35mm。映写速度は可変。ランプは400Wと明るめで熱量に対応して大きな冷却用ファンがついています。この時期の欧州で最も大きく重たい映写機で、パイヤール・ボレックス社G916のライバル機種の位置付けでした。
今回自作テレシネ機に挑戦するにあたりモーターやランプハウス、スイッチ類は不要で、リール受けとギア、ゲージが欲しかった訳です。「ヘッド部分」がそのまま使えそうです。
レンズを外して横倒しにしたのが上の写真。小型ビューワーに似ています。真上から顕微鏡よろしくカメラで覗きこんで撮影できそうな気がしてきました。