04f – Enfuseアルゴリズムを利用した焦点合成/深度合成(Focus stacking)技法について

様々な自作テレシネ機を見ている中で、Enfuseアルゴリズムを利用して後処理(深度合成)を行っている人を何人か見つけました。

深度合成は最近のミラーレス一眼にも搭載されるようになってきた機能で、同一アングルで被写体深度を変えた画像を複数撮影し、焦点のあっている部分を合成し全体に焦点があったような(=被写体深度が深い)画像を生成する機能です。マクロ撮影、遠近感のある撮影、パノラマ撮影など応用範囲が広くオンラインでも様々な方が挑戦されています。

8ミリフィルムのスキャニングでは「明るさとカラーバランスの最適化」にこの技法が応用されていました。フランスのD・ガラン氏がラズパイカメラでの作例を紹介しておられます。

merge-55963ec

左から順に露出時間0.014秒(短)、0.7秒(長)、0.14秒(普通)と3枚露出時間を変えて撮影した画像で、右端がその3枚を合成したものです。0.14秒(左から三枚目)でも十分綺麗なスキャンですが、木の台の上にある取っ手が白飛びしています。露出時間を短くする(一番左)とこの部分を捉えることができ、最終的な画像(一番右)に反映することができるようになりました。また露出0.14秒(左から三枚目)では少年の腰の下あたりは陰で黒くなっていますが、露出を長くすると尻の下に敷かれた靴底の部分が見えるようになります。やはりこれも合成後に反映される形となっています。

dgalland-gui-interface02
D・ガラン氏自作のGUIインターフェイス。
一番下の行に「暗(Dark)」と「明(light)」の設定欄があり
ここで露出時間の短い画像と長い画像の設定をしています。

似たような発想はラズパイ・フィルム・キャプチャーを作ったジョー・ハーマン氏にもみられます。

フィルムの有しているダイナミックレンジはラズパイカメラより広い。そのためある種の状況ではフィルムのコマを二回(可能ならそれ以上)撮影し、可能な限りの細部を取り出しておくとよい。露出不足気味のフィルム、あるいは陰影の多い場面について特にこれが当てはまる。

同氏はパイソンで書かれた深度合成のスクリプトも公開しておられます。

HDR画像の疑似生成、でしょうか。カラーフィルムで威力を発揮するのは分かりましたが、果たして白黒フィルムに効果があるかどうか…何はともあれ試してみましょう。

enfuse-test

左から順に露出時間1/13514(ISO1250)、1/1000(ISO500)、1/30(ISO500)

シャッタースピードを変えながら同一フレームを3度撮影したものです。カメラのISOを100に固定して設定したはずが…効いていない?

90922-enfusegui-test

EnfuseGUIというソフトを使用し、3枚の画像をブレンドします。

90922-enfusegui-test-result

元画像の露出時間1/1000秒と比べてみます。

90922-enfusegui-test-result-compare2

白黒でも思っていた以上に差が出ました。

一番はっきりと違いが分かるのが髪の部分(特に画面右側)です。元画像では白く飛んでいた部分が、合成後は細かな陰影が加わっています。逆に画面右上隅を見ると、元画像では暗転している感じだったのが合成後は画面端まで描写されています。

コントラストが抑えられ、細やかさとソフトさ、自然なグラデーションを備えた明るめの絵になった感じです。

ドイツ表現主義やフィルムノワール作品ではジャンルのコンセプトに抵触してしまう可能性もありますが、ダイナミックレンジ再現という意味で興味深く、使い方によっては効果的なようです。

弱点は同じフレームを複数回撮影するためスキャン時間も比例して長くなること。またフィルム上の傷が強調される結果にもなっています。