日本・女優 [Japanese actresses]より
が愛子はXだ。今から五六年前迄は、ああしたスタイルは横浜の本牧あたりで、谷崎氏の”本牧夜話”に描かれたような周囲を持つ外人相手の酒場へでも行かなければ見られなかった。断髪のもじやもじや、”マダム・バタフライ”の蝶々夫人が着る様な、派手な衣装で外輪歩きの裾さばき、大きなお尻を振って、瞬時も静(じ)っとしていない。がこうしたタイプがいつか洗練されて、ダンス流行の現今では市中至るところで見られるタイプだ。そして情けないことに、この現代に生きている単純なタイプすら完全に表現できる映画女優がいないのである。これこそ愛子の持味であつて、彼女の唯一の強みなのである。
高島愛子と鈴木伝明 -青春の歌-を見て/東四郎 『映画と劇』大正14年2月号
戦中に亡くなったことが知られていますが、先日入手した『髪と女優』(伊奈もと著 1961年)によると死因は脳梅毒だったそうです。