「フランス [France]」より
こちらの小冊子は「戦中オデオン座通信」と題されたもので、舞台評論家マクシマン・ロール氏の観劇記録をまとめています。1916年初頭に出された第16号では1916年1〜2月の演目が紹介されており、ファルコネッティは1月30日、2月3・5・9・12・18日に『チャールズ2世とバッキンガム公』のサラ・ダンカン嬢役で、2月10・17日に『セビリアの理髪師』ロジーナ役で登場しています。
「先日ファルコネッティ嬢がデビューしたこのサラ・ダンカンの役柄というのはまったく型通りの没個性なキャラクターなのだ。[…]ファルコネッティ嬢はうら若く魅力に満ち溢れている。声には人の心を打ち感動させる何かがこもっている。そして動きの優美さよ。彼女の真価の見極めは古典劇への出演までお預けとしておきましょう」
1916年1月30日『チャールズ2世とバッキンガム公』感想より
Mlle Falconetti débutait à l’Odéon dans ce rôle de Sarah Duncan, un rôle de tout de convention, sans caractère […] Mlle Falconetti est jeune est charmante, sa voix a des accents touchants, propre à émouvoir, ses gestes sont gracieux. Attendons qu’elle nous soit présentée dans un rôle classique pour la juger en parfaite connaissance de cause. (A propos de Charles II et Buckingham)
「古典劇のレパートリーでファルコネッティ嬢がデビュー。彼女の演じるロジーナは心がこもっており、機知に富んでいて、十分な軽やかさもあった。どの瞬間も愛らしい微笑みが優美な面立ちを輝かせていた」
1916年2月10日『セルビアの理髪師』初演の感想より
Début dans la répertoire classique de Mlle Falconetti; la jeune artiste a joué Rosine avec sentiment, avec esprit, avec suffisamment de légèreté; un aimable sourire éclairant à chaque instant son gracieux visage. (A propos du Barbier de Séville)
サインは裏表紙に残されたもので女優ポール・アンドラルとの連名になっています。アンドラルさんが「親愛なる友ベシェ(Béchet)様へ、ポール・アンドラルと…」までを鉛筆書きし、その後ファルコネッティが「…ファルコネッティ」と自身の名を添えた形です。
冊子には他にも男優二人(ジャック・ロベール、モーリス・レーマン)のメッセージ入りサインも含まれていました。アンドラル、ロベール、レーマンはいずれも舞台を中心としつつ初期映画にも関わっており、戦前仏映画史と舞台との深いつながりを伝えてくれる貴重な資料です。

ポール・アンドラル Paule Andral (1879–1956) 仏
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ジャック・ロベール Jacques Robert (1890–1928) スイス
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モーリス・レーマン Maurice Lehmann (1895–1974) 仏
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