ラズパイカメラを工業用高性能レンズでマクロ化する

※ 2020年5月に発売されたHQカメラモジュールを使用したアップデート版の記事を新たに投稿しました。

焦点距離35ミリのCSマウントレンズにしました。なので接写リングが必要で、自分の場合30ミリの接写リングを使うと8ミリフィルムが画面ぴったりに収まっています(dgalland氏、2019年1月5日付投稿より)

“J’ai choisi un objectif 35mm monture CS, il faut alors des bagues d’extension macro, 30mm de bagues dans mon cas, et l’image 8mm fait juste la taille du capteur”. (2019, Cited from a post on “Le Transfert Pellicule” Forums)

フランス在住の映写機改造派ユーザー、D・ガラン氏がこんなコメントを残していました。写真を見ると産業用レンズを使っているようです。最初この投稿を見た時、そういう手もあるのだなと興味を持ちました。

最近の傾向として、ラズベリーパイカメラでテレシネ機を組む場合は
・ラズパイカメラの焦点距離を調整するのと
・トリプレットのアナクロマティック・レンズ
の組みあわせが主流となっています。

後者は色収差の収束に長けており、8ミリの豊かな色合い、16ミリの透明感をデジタルに閉じこめたい、というこだわりのユーザーに高く評価されています。とはいえ今回作ろうとしているのは「白黒の9.5ミリフィルム」に対応したテレシネ機で、そう考えると色収差に重点を置かなくても良さそうなのです。

欲しいのは解像度が高く歪みの少ないレンズ。防犯用・計測機器用で使われているレンズがしっくりきます。日本は世界有数のレンズ大国で、産業用でもキーエンス、タムロンなど優れたメーカーが活動していて型落ちで良ければ4~5千円程度で高性能レンズを入手できます。

難しかったのが「何を使えばカメラセンサーの幅一杯までフィルムを拡大できるのか」でした。接写リング(エクステンション・チューブ)を使うのは良いとして、色々調べた結果、最終的に次の組みあわせで上手くいきそうだと分かりました。

型落ちで手に入れた50ミリ(実測56ミリ)のCマウントレンズ(タムロン21HA)に20ミリの接写リングをあわせます。今回入手したラズパイカメラV2互換型はCSマウントとなっていて、CマウントとCSマウントの誤差が5ミリ発生するため、実際には15ミリ延長となりレンズ+マウントの焦点距離が71ミリになりました。

タムロン社が公表しているスペック表では、15ミリの接写リングをつけた際の最短撮影距離は167.7ミリとなっていて、横幅20.6ミリの対象を撮影すると画面が一杯になります。

比の関係(x:71 = 20.6:167.7)から計算していくと、この状態で撮影された対象はラズパイカメラのセンサー面で8.7ミリの幅で投影されます。20ミリの物が約9ミリになったので0.43倍拡大されたことになります。

しかしラズパイカメラのセンサーは幅が3.68ミリしかありません。そこで実際には8.7ミリ幅画像の中央部分3.68ミリだけが切り取られ出力されます。

最短距離の167.7ミリの位置に9.5ミリフィルム(撮影面の幅は8.5ミリほど)が置かれているとどうなるでしょうか。センサーに投影された際にはやはり0.43倍拡大され、センサー面では 8.5×0.43 ≒ 3.60ミリになります。

これはラズパイカメラのセンサー幅(3.68ミリ)とほぼ同じで、ちょうど画面一杯に9.5ミリフィルムの映像が映し出される計算となるのです。