『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』 より

1995年の仏VHS版、1930年代前半の英9.5ミリ版2巻物に続き、30年代仏9.5ミリ4巻物を手に入れることができました。全体の映写時間は約50分で、劇場公開版の半分弱をカバーしています。






英パテスコープ社版より尺に余裕があるため、周辺エピソードまで収録されており映画の全体像にかなり近づいています。VHS版、ゴーモン・パテ・アーカイヴで以前に公開されていた35ミリ琥珀染色版(VHSと同一ソース)と画質を比べてみましょう。
1)生まれ故郷の村で従軍兵士の話に耳を傾けるジャンヌ



2)ジルドレが自分を王と偽ってジャンヌを試そうとする一幕より



VHS版(中央)はパテ社所蔵の35ミリ版(琥珀染色版、右端)を白黒に変えただけでアングルや流れに変更は加えておりません。一方の9.5ミリ版では人物が大きく映るようトリミングが施されています。1)の例で手前の袖の部分がカットされるなど全体の構図が大きく変わるアレンジの様相を呈しています。
リストア版は非常に美しい琥珀色をしています。35ミリと9.5ミリとでは面積比で15倍ほどの差があって、情報量としては35ミリ版に圧倒的な軍配。9.5ミリでは粒子感が残ってしまっていますよね。ただし35ミリ版の方は室内撮影、スタジオ撮影の場面で暗い部分が黒飛びしており、ディテールが潰れてしまっています。2)のジルドレのアクセサリーや衣装デザインを比べると9.5ミリの再現力も捨てたものではないのかな、と。
もう一つ重要な指摘としてVHS版と35ミリ修復版は人の面立ちがややほっそりしています。9.5ミリ版とアスペクト比の圧縮が微妙に異なっているのです。他の場面も同様で、どうやらデジタルリストア版では左右の比がやや圧縮されているのではないかと考えています。
9.5ミリ版画像の縦サイズを変えず、横サイズを8%ほど縮めると修復版と同じ感じになりました。