8ミリ & 映画史・合衆国 & パール・ホワイト より
以前にパール・ホワイトが「連続活劇の女王」として人気を博す以前の初期短編を二作紹介いたしました。ホワイト初期作品の8ミリ化については英語情報もほとんどなく二作のみと思っていたため、先日別作品がイーベイに出てきて驚きました。折角の機会ですのでデータをまとめてみます。
- 1912年10月 -『仕立屋請求書始末記』Her Dressmaker’s Bills
- 1913年3月 -『或る夜の街』A Night in Town
- 1913年5月 -『女探偵パール』Pearl As A Detective
- 1913年7月 –『紙人形(ペーパー・ドール)』 The Paper Doll
- 1913年7月 -『ホールルーム・ガール』The Hallroom Girls
- 1913年9月 -『夜に彷徨ふ女(ロスト・イン・ザ・ナイト)』 Lost in The Night
- 1914年1月 -『リング』 The Ring
確認できた限りで以上7作(全作未DVD/ブルーレイ化)。制作はクリスタル社。監督はいずれもフィリップス・スモーリーで共演男優はチェスター・バーネット。今回入手したのは『或る夜の街』『女探偵パール』『ホールルーム・ガール』の三本を400フィートリールにまとめた一本。







『或る夜の街』A Night in Town
パール・ホワイトは裕福な家に使える小間使い役を演じています。夫婦が旅行で家を空けると、パールと執事はこの時とばかり勝手にクローゼットを開け高価な服をまとい、パーティーを始めます。そこに家主が不在と知らない親戚の男性がやってきてしまい、執事は慌ててパールを「旦那様の奥さん」と紹介してその場を乗り切ろうとします。ところが男性がパールに一目ぼれしてしまい…






『女探偵パール』Pearl As A Detective
パール・ホワイトは興信所の女探偵として登場。夫が机に置き忘れていた手紙から浮気を疑った妻(グレース・ダーリング)が興信所に調査を依頼。担当に指名されたのはパールでした。夫に接近し、会話を重ねる中で二人は意気投合してしまい、抱擁している場面を妻に見咎められてしまいます…






『ホールルーム・ガール』The Hallroom Girls
ルームメイトである仲良し女子二人組と、その二人と交際中のこれまたルームメイトの男子二人組。ところが彼氏の親友、彼女の親友に手を出し始めたことで関係が怪しくなり女性陣は取っ組みあいの大喧嘩に。警官まで巻きこんで男性二人が逮捕されてしまうのです…
概要から伺えるように3作とも軽めの恋愛喜劇です。
演出、脚本に新味はなく、本作を見た人の「がっかりした」評価も順当ではあります。ただし1913年の作品としては及第点、むしろ当時は質に無頓着なこの手の量産コメディが「普通」で、女優パール・ホワイトがそういった賑やかな現場で活躍し鍛え上げられていった(そして後に黒歴史としてなかったことにされる)雰囲気は伝わってきます。個人的には『女探偵パール』でのスーツ姿、『ホールルーム・ガール』の室内装飾や衣装、屋外撮影の空気感が気に入りました。
ホワイトのクリスタル期作品についてはオンラインで唯一「Those Awful Reviews」が分析しています。アニタ・スチュワート主演の傑作『呪の列車』35ミリ版を自力で発掘、デジタル化・リストアしている人物の手によるもので作品の良し悪しを的確に見極めています。