] 映画の郷 [ 電子工作部:「綺乃九五式」にラズベリーパイのHQカメラを移植する

ラズパイ4Bが発売された時「カメラモジュールのV3が出ないかな」と密かに期待していました。そちらの音沙汰がなく不思議に思っていたところ、5月初めに新作のカメラモジュール「ハイクオリティカメラ V1」(以下「HQカメラ」)が発売されました。

センサーにSony IMX477R(英語規格書)を使用。1/2.3型で対角長7.857ミリ。センサーの縦横は実寸で4.7ミリ(高さ) ×6.2ミリ(幅)。有効画素数は12.3MピクセルでV2(8M)の約1.5倍になっています。ラズパイ4Bに接続し「vcgencmd get_camera」で確認すると無事認識されていました。

対応レンズはCS/Cマウントとなっています。手持ちのレンズを幾つか組みあわせてみましょう。

モビルスーツ風の風格があります。実際に試写した感想としてはV2カメラで発生していた「口径蝕」問題が解消されたのが何より一番の進化だと思います。

上の写真は2020年1月の雪の日にV2カメラで撮影したものです。このカメラモジュールはオリジナル以外のレンズを使うと四隅を中心に赤みがかった変色が出てしまいます。「キャリブレーション」という方法で補正をかけないと直せないもので、ラズパイベースでフィルムスキャナーを製作する際に大きな障害となっていました。

HQカメラ + ベルティオ Cinor (F20 1:1.9)で撮影した一枚。ヒストグラム右端にやや怪しい動きが見られるものの、V2カメラの欠点を修正した形になっています。

動作確認ができたので綺乃九五式スキャナーにHQカメラを移植していきます。

レンズは以前と同じくタムロンの21HA(Cマウント)。

HQカメラではイメージセンサーの幅が6.2ミリ程に広くなっています。目標としてはタムロンレンズと接写リングを組みあわせながら、この画角一杯に9.5ミリ(実際に映像が映っている部分の幅は8.5ミリほど)のフィルムを映し出していきます。

まずは必要となる接写リングの長さを計算していきます。

V2カメラの場合はセンサー幅が3.68ミリだったため3.68÷8.5=0.47。0.47倍の倍率を得るため20ミリの接写リングをあわせ、フィルム面からレンズの先端までの距離を168ミリ(16.8センチ)に設定していました。

今回センサー幅が変わりましたのでパラメーターが変わっています。

35ミリの接写リングを間に挟みます。この時CSマウント(HQカメラ)とCマウント(タムロンレンズ)の差分の5ミリがあるため、元々56ミリの焦点距離を備えていたレンズに30ミリの接写リングを組みあわせたことになります。

タムロンの仕様書に従うと、30ミリの接写リングをつけた際の最短撮影距離が119.6ミリで、その際に横幅12.1ミリの対象を画面に収めることができるようになっています。

この時、センサー面上に投影される画像の幅xは12.1:x = 119.6:86(56+30なので)となり、xは8.7ミリとなります。元々12.1ミリだった被写体がセンサー面では8.7ミリになったので0.71倍マクロレンズとして機能している訳です(ラズパイHQカメラのセンサー幅は6.2ミリですので、このセッティングで撮影すると幅8.7ミリの画像の中央の6.2ミリ分だけが切り取られて出力されます)。

最短撮影距離119.6ミリの場所に9.5ミリフィルムを置いてみます。フィルムの中で実際に映像が映っている部分の幅は8.5ミリほどです。これが0.71倍されると6.11ミリになります。ラズパイHQカメラのセンサー幅6.20ミリに上手く収まります。

V2カメラ+20ミリ接写リングの時は最短撮影距離が約16.8センチでしたが、今回のHQカメラ+35ミリ接写リングの場合は最短撮影距離が約12センチ。いままでより4.8センチカメラの先端をフィルム面に近づける必要があります。空間の余裕はあるので上手くいきそうです!

「綺乃九五式」にセッティングしたところ。

ラズパイHQカメラ + タムロン21HAレンズでの9.5ミリフィルムスキャン例(2400*1800)

1923年に発売された『パテ・マガジン 第1巻』より「金魚」の動画をスキャンしたものです。フレーム内に9.5ミリフィルムのコマがピッタリと収まっています。一部にガタツキが見られ微調整が必要ですが実用には使えそうです。

Pathé-Magazine Vol.1 “Les Cyprins Chinois”

Cマウントレンズは現在でも監視カメラなど産業用として市販されていますが、そもそも戦後の16ミリ動画カメラによく使われていた規格でした。今後クラシック・カメラ/オールド・レンズの愛好家も巻きこんで面白い作品が出てきそうな気がします。


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