1924 – 9.5mm 『二少年によるフランス周遊記』(ルイ・ド・カルボナ監督)

「9.5ミリ 劇映画」より


或る夜、ジユリアンとアンドレ兄弟は闇に乗じてファルスブールの孤児院を抜け出した。亡き父の遺言を果たすため叔父が住む南仏マルセイユへ向かつたのである。父の旧友の助けもあり、二人は無事国境を越えフランスに辿りつくことができた。手持ちの路銀は乏しく、兄弟は徒歩で南下を始めた。

道中では多くの人々に助けてもらう。エピナルの町では宿屋の亭主夫婦に可愛がられ、ジユリアンは錠前屋の修業をし、アンドレは学校で勉強させてもらう。しかし長居は出来なかった。一ヶ月の休息の後に二人は再度旅に出た。ブドウ作りの盛期を迎えたブルゴーニユ、工業の町クレルモン・フェラン、宗教建築の立ち並ぶアヴイニヨンを経由してプロヴァンスに入つていく。

マルセイユまで六十里となつた所で南仏の強風に煽られアンドレが足に怪我を負った。ジユリアンはルートを汽車に切替え、弟を背負つて客車に乗りこんだ。マルセイユに辿りつくも、折あしく叔父はボルドーに長期滞在中とのこと。肩を落とした兄弟を見てマルセイユっ子たちが一肌脱ぐ。港町で船主に話をつけ、運河を使いボルドーまで送つてもらう話になった。

ボルドーで叔父と再会。事情を知つた叔父は二人を養子にしようと決める。手続きの爲に孤児院へ戻らなくてはならない。ダンケルクまで船で移動して汽車でファルスブールへ。父の墓参りを済ませ役所へ向かう。交付されたのはフランス国籍を証明する書類であつた。晴れてフランス市民となつた兄弟は叔父の親友ギヨーム氏一家の元に身を寄せ、幸せに暮らしたのであつた。


『二少年によるフランス周遊記』は19世紀後半に出版された児童向けの物語です。第二次大戦前のフランスでは国語の読本として使われており当時の人に馴染み深い内容でした。1924年公開の映画版は3時間を越える大部なもので、パテベビー9.5ミリ版は前後半の二部構成とし40分程度まで切り詰めています。

主人公を演じているのはいずれも映画出演経験のない素人の子供さん。お兄さんのジュリアン役に素朴と端整さを兼ね備えたリュシアン・ルゲイ君。弟アンドレ役は天然パーマに笑顔が可愛らしいグレゴワール・ウィリ君でした。

父の遺言を果たすため貧しい兄弟が叔父のもとへ徒歩で向かう設定を口実に、様々な町の産業や文化が紹介されていきます。地理の勉強に役立つだけではなく北極星を見つけて方角を割り出したり、当時最新技術だった写真の話が出てくるなど教養ネタも多く含まれています。

同時期に公開された『狼の奇跡』(レイモン・ベルナール監督)の大衆受けを狙ったスペクタクル性はなく、エプスタイン(『蒙古の獅子』)らのインテリ受けする表現とも違っていて、話題となることのないまま埋もれてしまった一作ではありました。それでも各地の風景や産物を現地ロケで記録した功績は大きく、ナチュラルな演技も相まって好感度の高い作品に仕上がっています。


[IMDb]
Le tour de France par deux enfants

[公開年]
1924年

[メーカー]
仏パテ社

[メーカー記号]
2010(前編6巻)& 2012(後編6巻)

[9.5ミリ版発売年]
1925年

[フォーマット]
9.5mm 無声 10m×12巻 ノッチ有


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