或る夜のこと、京都三條の橋の畔り淋しい所を通つて行くと彼方なる暗がりの物影より突然現はれ出た、四五人づれの壯漢があつた。
『ヤアツ…來たぞ』とばかりに、彼等がさゝやきの聲の未だ絶えぬ間に、最ふ彼等の白刄は半平太の前後左右にキラメキ渡つて居る…
是は確かに反對論者の廻し者、『何んのその汝等如き者が百人千人來たからとて何程の事かあらん。イザイザ此の月形一平太の刄先を受けて見よ』と大喝一聲、ギラリと引き抜いた三尺の秋水、半平太の腕は剣道の達人であるから湛つたものではない。






1925年『国定忠治』『月形半平太』(いずれも澤田正二郎主演)に始まった行友李風原作映画の小ブームは翌年の『修羅八荒』4社競作でピークを迎えました。その後も『月形半平太』の人気が根強く、数年で河部五郎(日活)、山口俊雄(山口俊雄プロ)、林長二郎(松竹)、草間實(東亞)、阪東妻三郎(阪妻プロ/新興)…と途切れることなく映像化されていきます。
1929年東亞版は半平太に草間實、半平太の命を狙う藤岡九十郎に羅門光三郎、芸者染八に原駒子を配しています。監督は枝正義郎。前年の『坂本龍馬』を最後に阪妻プロと袂を分かち東亞に合流していたもので、『龍馬』での照明やカメラワークを思いあわせると本作にも何がしかの創意は含まれていたと思います。
[JMDb]
月形半平太
[IMDb]
Tsukigata hanpeita
[出版年]
1929年
[編集兼発行者]
瀧本昇
[発行所]
瀧本時代堂
[ページ数]
16
[フォーマット]
10.5 × 14.8 cm