1938 – 『アレクサンドル・ネフスキー』(セルゲイ・エイゼンシュテイン監督) Sovexportfilm版8ミリプリント

帝政ロシア/ソヴィエト初期映画史再訪 [10]

1920年代に成立したSovkino社はその後2度の改称を経て1945年にSovexportfilmとなりました。ソ連製の映像作品を諸外国に輸出、各地の拠点を元に映画祭の開催や映画誌発行を行っていきます。今回入手した『アレクサンドル・ネフスキー』は同社が英語圏向けに編集した1960年代後半~70年代初頭の4リール無声版です。

ハイライトとなっているのは中盤から後半にかけて展開される長尺の戦闘場面。1242年、凍りついたチュド湖上で展開されたノヴゴロド公国vsチュートン騎士団の戦いを描いたもので8ミリ版では第3リール全体がこの場面に割かれています。今回はこの第3リールを一部スキャン、その後実写してみました。元々エイゼンシュテインの初サウンド作品として制作されプロコフィエフの音楽とセットで観賞されるのが常ですが、無声版で映像だけ見るのも良い経験でした。

ノヴゴロド公国対チュートン騎士団の構図が当時のソ連、ナチスドイツの対立と重ねあわされている点はしばしば指摘されています。優秀な指導者の下で勇敢な農民たちが一致団結し外敵を追い払う発想が(決して優秀とは言えない)当時の指導部に受けたのだろうなと思います。

一方のエイゼンシュテインはプロパガンダ映画のお約束さえ守ってしまえば後は自由にやって構わないよね、といった風でもあります。武具や甲冑、中世に興味のある方も楽しめそうですし、『風の谷のナウシカ』への影響を分析しても面白そうです。同監督の最良と呼べるかどうかは別として、エッジの効いた構図や濃密さと開放感の間を行き来する複雑な映像のリズムには凄まじいものがあってその才を再確認できました。

[原題]
Александр Невский

[IMDb]
Aleksandr Nevskiy

[Movie Walker]
アレクサンドル・ネフスキー

[公開年]
1938年

[メーカー]
Sovexportfilm

[フォーマット]
スタンダード8 白黒無声 120m×4巻 英語字幕


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