8ミリ 劇映画より
こちらでは主にフィルムの話をしていきます。
初公開から5年経った1920年、ヴァイタグラフ社の旧作古典を振り返る企画がありその際に『呪の列車』が再上映されています(その際に本来5リール物だったのが4リールに編集し直されています)。確認できている限り一般向けに上映されたのはこれが最後となりました。1920年代には小型フィルムが普及し始めるもこの時期の米コダック社16ミリフィルムカタログに『呪の列車』の名はありませんでした。
状況が変わったのが第二次戦後、8ミリフィルムの文化が成熟してからでした。1960年代末、米ブラックホーク社を運営していたデヴィッド・シェパード(David Shepard)氏が本作の最終リールを8ミリ化し市場に投入、半世紀ぶりに本作を見ることができるようになりました。
このブラックホーク版は画質が悪いとされています。今回購入する際にその話は知っていて、確認のために綺乃九五式でスキャンをかけてみました(スキャン条件は同一)。その結果がこちら。左が米ブラックホーク版、右が英ペリーズ版です。
ブラックホーク版はコントラストが低く画面が暗くなっています。映写機で映すとさらに解像度が落ちるので目を細めても見えないレベル。批判は当たっているように見えます。
しかしよく見てみると英ペリーズ版はコントラストを無理に上げているため細部が潰れてしまっています。元ネガにあったグラデーションを残しているのはブラックホーク版でした。デジカメやスマホでの写真撮影もそうですが白飛びさせてしまうとその部分のデータが消えてしまうのに対し、暗い画像には陰影のデータが残っているので光量調整で何とかなる、の話と同じです。明るい光源(1500w位)と良いレンズで上映するならブラックホーク版の方が綺麗に映る可能性もあります。
箱にはフィルムだけではなく購入時(1975年11月28日)に発生した注文書コピー、発送記録の控え、72セント相当のブラックホーク社クーポン券が残されていました。