9.5ミリ (個人撮影動画・日本) より
1934年、北海道在住の9.5ミリ撮影家・長谷川久敏氏によって製作された50m物のドキュメンタリー作品。小さな漁村での鰊(にしん)漁の様子を記録した一本です。
映像には看板など文字情報が含まれておらず、撮影場所の特定にてこずりました。ヒントになったのが一瞬姿を見せた奇岩。漁に向った船が回りこむように進んでいく中で撮影された場面。
ニシン漁が盛んな町で、漁場の近くに奇岩がある。この組みあわせであれば選択肢を絞れそうです。
調査の結果、余市郡余市町のローソク岩と判明しました。現在はもっと細い形になっているのですが、1940年代に地震の影響で割れたそうで、それ以前の姿が新聞記事に掲載されていました。
1932年公刊の『パテー・シネ』(大伴喜祐著、古今書院)には当時の9.5ミリ作品競技会の受賞作をまとめた「代表作品」の章があります。このリストに「北海道の鰊漁」が含まれていました(265頁)。東京ベビーシネマ倶樂部主催による昭和2年の競技会で第3等を受賞。製作者名は札幌在住の「長谷川久敏」氏。本編「鰊の話」には1934年のクレジットが含まれているため同一作品ではなく続編あるいはアップデート版でしょうか。9.5ミリ界隈で知られた実力者だったのは間違いなさそうです。