1915 – 『赤環(レッド・サークル)』(バルボア/パテ・エクスチェンジ社、シャーウッド・マクドナルド監督、ルース・ローランド主演) 35ミリ齣フィルム10枚

« The Red Circle » (1915-16, Balboa/Pathe Exchange, dir/Sherwood MacDonald)
Chapter 11 « Seeds of Suspition » 35mm Nitrate Fragments

1915年末から16年前半にかけて公開された連続活劇『赤環』の上映用ポジ断片10枚。製作はバルボア社で配給がパテ・エクスチェンジ社。カレム社の短編映画でヒロインを務めていたルース・ローランドが初めて連続劇に進出した記念すべき一作。短い予告編を除いて上映用フィルムは遺失したとされています。

1915年11月27日付「ムービング・ピクチャー・ワールド」誌より 別作品の代打として1ヶ月公開が早められた旨も記されています

興奮すると両手の甲が充血し「赤い環」が現れて犯罪を犯してしまう…そんな遺伝的疾患の事件を追っていた医学者ラマー(フランク・マヨ)と、同症状の持ち主である若きヒロイン、ジューン・トラヴィス(ルース・ローランド)の出会い、駆け引き、そしてロマンスが14章仕立てで語られていく内容。

今回入手したのは第11章「疑惑の種」の断片で、内2コマは字幕、1コマは次回予告でした。本作に関しては英語と仏語のノヴェライズ版(仏語版を担当したのはモーリス・ルブラン)がありますのでこの2種の小説版と突き合わせながら齣フィルムの文脈を再構成してみます。

先行エピソードで窮地に陥っていたヒロインを助けたのは自身お尋ね者となっていた弁護士ゴードンでした。事情を尋ねたところ元々はファーウェル・コーポレーションの顧問弁護士をしていたとのこと。現場の労働者への賃金未払いが起こり調整をしていたところ、当のファーウェル社社長に騙され賃金を横領した罪を被せられてしまった…医学者ラマーがファーウェルの事務所を訪れたのを知ったジューンは「賊が侵入した!」と狂言を演じ、混乱に乗じて横領の証拠となる署名入り領収書を奪い取ります。


部屋の隅から一脚の椅子を引っ張ってきて扉脇に寄せ、椅子の上に立って軽く背を伸ばし、愛らしくも好奇に満ちた一対の瞳を欄干越しに向けた。

Getting a chair from the corner of the room, she carried it to the door, jumped lightly up and applied a pair of very pretty but very curious eyes to the transom.



自分でもなぜか分からぬまま、事務所へと戻ってくると白い便箋を二枚とり、重ねたまま折りこむと二つの同じ大きさの輪に切り取った。

Ensuite, sans s’expliquer elle-même pourquoi elle agissait ainsi, elle revint au bureau, prit deux feuilles blanches, les plia et les découpa en deux cercles égaux.



無駄骨となつた追跡の途中にラマーとファーウェルは引き返してきた秘書と合流、口角泡を飛ばしながらロビーまで降りてきた。

During their wild-goose chase Lamar and Farwell met the returning secretary and they all came down the hall together, talking excitedly.



「泥棒にやられた!札束を持つていかれてしまったよ。これを読んでくれ」、ファーウェルは金庫のダイヤルにかかっていた白い紙の輪を取り外すとラマーの手に押しこんだ。男が目を落とすと「お金は”赤き環の淑女”が正しい使い方をさせていただきます」の文字。

« I’m robbed! They’ve taken a bundle of bank notes! Read this thing! » As he spoke he pulled the printed circle off the safe knob and thrust it into Lamar’s hands. What Lamar read was this: « The money will be put to a good use by the Circle Lady. »



「金庫から頂戴したお金は”赤き環の淑女”より正当な所有者の元に届けさせていただきます」

L’argent pris dans ce coffre sera remis à ses légitimes propriétaires par la dame au Cercle rouge.



ラマーはゆつくり受話器を手にした。立ち上がった時と同じ位緩慢な動きであつた。

Lamar slowly hung up the receiver. Just as slowly be got up.



「いいえ」、秘書のゲイジが大声で答えた。「見えたのは甲に赤い輪の浮き出た女性の手だけでした」

« No, » yelled Gage. « I couldn’t see a thing except a woman’s hand with a Red Circle on the back of it.



一方でジューン嬢は自分の引き起こした騒動のことは頭から消し去り、ゴードンが待ち望んでいた領収書と札束とを胸にしつかと押しつけながら待ち合わせ場所の公園へと向かったのであつた。

Meanwhile, June, oblivious to all the trouble she had caused, made her way to the park, the coveted receipt and the banknotes hugged tight to her breast.



誰にも気づかれていなかったようなので足早にその場を去り、公園を離れると下町方面へと向かった。

人気のない一画を通り過ぎようとした時、まさに今一番必要としているものが目に留まった。焚火だ!

領収書を千切って炎に投げこんでいく。どの一片も本が何か見分けのつかない灰になってしまうまで見つめていた。

No one seemed to notice him, so he got out quickly, and leaving the park, made for the downtown district. […]

Just then he passed by a vacant lot and he saw what he needed most – a bonfire!

Tearing the receipt into tiny pieces, he threw them on the fire and watched them burn until every scrap had vanished into unrecognizable ashes.



『赤輪』次回予告
第12章「罠にかかった鼠の如く」
来週公開予定


ラマーとファーウェルがオフィスで話している様子をヒロインが盗聴する場面(齣番号01)に始まり、二人の男が部屋を開けた隙にジューンが領収書と紙幣を盗み出し、白い便箋で作った「環」に書置きを残す場面(齣番号02)、秘書と共にラマー、ファーウェルが戻ってくる場面 (齣番号03)、領収書が消えたのに気づき、ラマーが書置きに目を通す場面(齣番号04)、書置きの文面(齣番号05)、警察に電話しようと受話器を取り上げる場面 (齣番号06)、秘書が手錠で身動きを封じられた状況を説明する場面 (齣番号07)、ヒロインが待ちあわせ場所の公園に急ぐ場面 (齣番号08)、ゴードンが領収書を焚火で燃やす場面 (齣番号09)、そして次回予告 (齣番号10)。

英語版と仏語版小説で何とか流れを再構築できた感じながらも、以上で10フレームすべてが作品の中盤~後半の流れにぴったり収まりました。

[参考文献]

『赤環』英語版小説 アルバート・ペイスン・ターヒューン著、1915末〜1916年、各地の地方紙にて連載
”The Red Circle”, 14-chapter English novelization by Albert Payson Terhune, published in The Review (High Point, North Carolina) from December 23, 1915 to March 30, 1916.

『赤環』仏語版小説 モーリス・ルブラン著 初出ジュルナル紙、1916〜1917年連載
« Le Cercle rouge », 31-chapter French novelization by Maurice Leblanc, published in Le Journal from November 4, 1916 to January 20, 1917.

「パテ會社新作活劇 « 赤環 »」 モトグラフィー誌 1915年12月4日付
« The Red Circle » Pathe’s Next Serial Will Feature Ruth Roland Motography, 1915, December 4 Issue, p1179.

ムービング・ピクチャー・ワールド紙 1915年11月27日付より広告

[IMDb]
The Red Circle

[Movie Walker]


[公開]
1915年12月16日

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