1929 – 『カフェーの歌と映画小唄』(歌劇同好会・編、昭文舘書店/ライオン樂器店)

Cafe & Cinema Songs (1929, Shobun-kan/Lion Music)

当時物の映画小唄関連書籍をもう一冊。昭和4年(1929年)に公刊された『カフェーの歌と映画小唄』です。目次+本文124頁、冒頭に夏川静江さんと林長二郎氏の写真があしらわれています。

前半はカフエ(あるいは酒場)を舞台としたセンチメンタルな恋物語を扱った楽曲(「酒場の乙女」「道頓堀行進曲」「失戀の女給」)を中心に収め、中盤以降に「スツトントン節」「流浪の旅」「鈴蘭の歌」など小唄映画の名曲が並び、後半は『カルメン』や『生ける屍』など外国曲が収録される形になっていました。

小唄映画の原点の一つである船頭小唄(枯れすすき)は「此の世では花の咲かない」悲しみを歌ったもので、「親が許さぬ戀」「どうせ添はれぬ仲」を扱った戀慕小唄なども同じ系統に属しています。

(女)妾(わた)しやカフエに咲いて居る 眞白き花のスゞランヨ
(女)戀しき貴郎(あなた)は大學の 胸に五ツの金ボタン
(男)互に誓し仲なれど 未だ學生の悲しさに
(男)添ふにそはれぬ此くろを 辛抱してくれ今しばし
(女)切ない思ひで待つ妾 […]

チエリーソング(植中文春作)

酒場でもつれた戀なれば
逢ねば其れで濟みますの
なんぼ酒場の女給でも
心で結んだ戀じやもの

君戀しさに堪かねて
焦るゝ妾の胸の内
いくら薄情な貴郎でも
少しは察して下さいな

失戀の女給(二忠春男、西田輝男合作)

本書収録曲では新しい部類に入る「チエリーソング」「失戀の女給」の歌詞は、今迄の悲恋パターンに女給+男性(男子学生、魅力的だが身勝手な男など)を追加しているように見えます。実際のカフエや酒場ではもっと生々しいドラマも展開されていたのでしょうが、少なくとも流行歌として表面化してくる部分では旧来型のしっとりとした情緒が尊重されていたのだと思います。

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