1925 – 9.5mm 『江戸怪賊伝 影法師』 (東亜マキノ等持院、二川文太郎監督) 伴野商店プリント

Edo Kaizokuden Kagebôshi (1925, Tôa Makino Tôjiin, dir/Futagawa Buntarô)
Episode 1 – 3, Late 1920s Banno 9.5mm Print

1925年に公開された阪東妻三郎主演作の9.5ミリ版。同作は国立フィルムアーカイヴ、マツダ映画社、プラネット映画資料図書館が16ミリまたは35ミリ断片を所蔵、VHSとDVDで発売されたこともあり阪妻初期作としては名の知れた一作となっています。

以前に紹介した『坂本龍馬』(1928年)伴野版9.5ミリは1930年代のプリントで120m×2本、ノッチ無しで市販されたものでした。『影法師』は1920年代末のプリントで、長編から5つのエピソードを抜粋した5作(ノッチ有)を独立して市販する形をとっていました。伴野社のナンバリングに従うと171、173、175、177、257番の5本で、それぞれ20m×2本の構成です。

今回入手したのは当時のコレクターが全巻をつなぎ合せて120mリールに再マウントしたものです。第1~第3エピソードまでを一巻にまとめ前編とし、第4~第5エピソードを後編にまとめたようで、入手できたのはその前編。伴野カタログの171、173、175番に相当します。

9.5ミリ化に当たり伴野商店はそれぞれのエピソードに独自の副題をつけています。171番は「活躍篇」、173番は「任侠篇」、175番は「出沒篇」となっていました。エピソード毎に画質の差があって、最初の「活躍篇」が一番綺麗なプリントで、「出沒篇」がそれに続き、「任侠篇」は粒子感の強い粗めの画面になっています。

「影法師 第一篇活躍篇」(伴野商店、171番)20m×2本

 影法師…阪東妻三郎
 流星十太…高木新平
 お美江…生野初子

「活躍篇」は現行DVD版の12:38~17:53の流れをまとめたもので、旗本の娘お美江(生野初子)がスリに簪(かんざし)を盗られたのを影法師が取り上げて返したところ、巡回していた岡っ引きが影法師の姿を認め詰問~チャンバラに展開していきます。

幾つかのフレームをDVD版と比較してみました。

DVD版は情報密度は高いもののかすれた感じが強く全体的に低コントラスト。9.5ミリ版は逆にコントラストが高めで暗い部分が黒飛びしています。また9.5ミリ版の縦のアスペクト比が若干狂っていてDVD盤と比べ2.5%ほど縦に圧縮されています。同一フレームでも印象が変わりますね。

「影法師 第二篇任侠篇」(伴野商店、173番)20m×2本

 影法師…阪東妻三郎
 流星十太…高木新平
 盲権次…中根龍太郎
 似非影法師…美浪光

「任侠篇」はDVD版24:21~26:59に対応している部分で、民家に強盗に入った「似非(えせ)影法師」を本物が退治するエピソードです。ただしDVD版はエピソードの冒頭部が欠落しており、いきなり少女が影法師一党に助けを求める場面から始まっていました。

上のキャプチャ―画面のように似非影法師が夫婦を脅し、それに気づいた子供が逃げ去る一連の流れが冒頭にありました。この点に関しては2012年に神戸映画資料館で「江戸怪賊伝 影法師」が上映された際、「欠落部を京都のコレクター田渕宇一郎が入手した9.5ミリプリントから補完した」の記録が残されています。

9.5ミリ版「任侠篇」にはもう一つ重要情報が含まれています。似非影法師を演じた俳優名です。「美浪光(みなみひかる)」は以前に東亞キネマのサイン帳で紹介した尾上紋弥の初期芸名だそうです。右門捕物帳で「あばたの敬四郎」を演じた名脇役です。

JMDb(およびそれを下敷きにした「影法師」のウィキページ)には似非(えせ)影法師を演じた俳優名は記載されていません。国立映画アーカイブマツダ映画社の作品紹介ページに美浪光の名前が見つかりましたが「鴉の仙太」役として登録されています。「鴉の仙太」は第一エピソード「活躍篇」に登場したスリの名前です。

本当だ、どちらも尾上紋弥です。

「かんざし泥棒のエピソード」で懲らしめられた悪役・鴉の仙太が後に「似非影法師」として再登場、今度も本物に見つかって斬られて果てる…という流れになっていることが分かります。『江戸怪賊伝 影法師』の理解・解釈で見過ごされてきた要素です。

「影法師 第三篇出没篇」(伴野商店、175番)20m×2本

 影法師…阪東妻三郎
 盲権次…中根龍太郎
 赤鬼喜蔵…中村吉松

「出沒篇」はDVD版の23:21~24:21に対応するエピソードです。DVD版では短い断片しか残っておらず、影法師(阪東妻三郎)と権次(中根龍太郎)が囲碁をしている所に誰かがやってきた場面でフェードアウト。

この場面は岡っ引きの喜蔵を中心としたエピソードで、影法師の所在地を突き止めようと「編み笠」を頼りに捜査を進めていきます。聞き込みで浮かんできたのは「碁會所・金鷹」。配下の者とともに捕縛に向かうも影法師が動きを察知、如何にして喜蔵たちから逃れるか…が描かれていきます。

DVD版では脈略を欠いた場面に見えていたのは独立したエピソードが隠されていたことになります。

お茶目さを備えた権次(中根龍太郎)、くせ者の気配を漂わせた十太(高木新平)、端正な正義漢の喜蔵(中村吉松)、憎々しい仙太(尾上紋弥)…3つのエピソードには脇役のキャラを立てる発想が強く出ています。『影法師』第一作時点で既にシリーズ化が念頭に置かれていたと思われ、次作以降も使いまわしの効く世界観、人間関係を第一作で組み立てておこうとしたと考えられます。

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