・1913年版『さらば青春』 イタラ映画社、ニーノ・オクシリア監督、リディア・クアランタ主演
・1918年版『さらば青春』 イタラ映画社、アウグスト・ジェニーナ監督、マリア・ヤコビニ主演
・1927年版『さらば青春』 ジェニーナ映画社、アウグスト・ジェニーナ監督、カルメン・ボニ主演
『さらば青春』 は無声映画時代に3度映画化されています。アウグスト・ジェニーナ監督による1918年版と1927年版は以前に紹介したDVDセットで修復版を見ることができるようになりました。
第1回目の映像化となる1913年版は原作舞台劇の共作者でもあるニーノ・オクシリア自身が監督を手掛けています。ヒロインのドリナにリディア・クアランタ、その恋敵となるエレナにはリディアの実妹のレティツィア・クアランタが扮しています。
今から六七年以前にも日活の手で輸入され、葵館や、電氣館で映寫され、その頃の私達を泣かしめた『さらば靑春』あの伊太利イタラ會社の傑作映畫です。[…]
以前の『さらば靑春』は、イタラ會社で一九一二年に作られた三巻の映畫でした。さうして出演俳優としては、その頃イタラ會社の主腦俳優として知られて居つた人々ばかりでした。卽ちドリナにリヂア・クオランタ孃、エレナにドラ・バルダネロ孃、マリオにアメリゴ・マンツイニ氏、レオンにアレキサンドル・ベルナール氏が扮しておりました。
◆感想◆あゝさらば さらば靑春よ!
(若樹華影、活動倶楽部、1921年12月通巻19号)
同作は日本でも公開されており、1921年「活動倶楽部」誌では若樹華影氏が1918年版の公開に触れてオリジナル版の思い出に触れていました。また『映畫大觀』収録の「映畫十年」で石上敏雄氏が大正2年の優秀作の一つに三友館で上映された同作の名を挙げています。


東都幻影会による絵葉書と、DVDセットに収録された1918年版の場面を対応させてみました。ドリナとマリオが部屋にいる場面を比べるとオリジナル版は室内装飾や家具、衣装に1900年代(日本では明治末期)の雅びな感覚が強く残っているのが分かります。
ラストシーン、鉄橋に立つドリナを捉えた場面は服装に違いがあるものの、ヒロインの立ち位置を含め1918年版が1913年版に出来るかぎり寄せています。角度や高さをつけた撮影が可能だったにも関わらず同一構図を選んだ、ぶつけてきた辺りにオリジナル版への敬意、そして自信が伝わってきます。
第一次大戦前の典雅な、やや古めかしい表現が戦後のモダンで地に足の着いた質感にアップデートされていく。これ、旧版に思い入れのある人が新版を見ていてこの橋の場面まできたらブワッと思いが込みあげてくるのでしょうね。リアルタイムで経験してみたかったです。
[原題]
Addio giovinezza!
[公開]
1913年6月
[IMDb]
Addio giovinezza!
[Movie Walker]
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