1913 – 『海の彼方へ』(原題『故郷と異郷』、独コンチネンタル社、ヨーエ・マイ監督)

Heimat und Fremde (1913, Continental, dir/Joe May)
1958 Japanese Postcard

親子の情を極度に切實に表はした作でジョー、マイ氏の藝術的活動寫眞作品とも云ふべきもので且又出演者は獨逸有數の名優殊にイプセン劇に名あるエマヌエル、ライヒヤー氏及びその實子エルンスト、ライヒヤー氏及び獨逸座の名優ヨハンナ、テルワイン孃の三人が主要な役をやつている。

『故郷と異郷』
(森田生、キネマ・レコード誌、1915年1月通巻19号)

1913年8月27日付キネマトグラフ誌第348号広告

大正四年は全く鷗州映畫全盛時代といつてよい。活動探偵劇流行の前年とは少しく傾向を異にして四年には主として所謂文藝作品が多く公開せられた。

「映畫十年」
(伊藤敏雄、『映畫大觀』、1924年、春草堂)

別投稿で触れたように、大正3年(1914年)の日本ではドイツ探偵劇が大きな流行となりました。ドイツ本国では第一次大戦期を通じてこの傾向が続き多くの新シリーズが公開されていったのに対し、日本では大戦勃発で輸入の中断があって極初期のウェッブス探偵物(エルンスト・ライヒャー主演)とブラウン探偵(ルートヴィヒ・トラウトマン主演)の二つが愛好家の記憶に残る形となりました。

一方で伊藤敏雄氏が言及しているような趣向の変化があり、愛好家の興味が探偵劇から文芸物へと移っていく中でエルンスト・ライヒャーの出演している親子人情物『故郷と異郷』に注目が集まります。

放蕩息子ジャック(エルンスト・ライヒャー)が賭博で残した借金を穴埋めするため全財産を使い果たし、息子と絶縁した銀行家(エマヌエル・ライヒャー)が米国へと渡ります。全てを失ったジャックは父を追って渡米、今は農場で義理の娘(ヨハンナ・テルウィン)と暮らしている父親に許しを請う…という物語を描いたものです。

素晴らしい性格俳優エマヌエル・ライヒャーは深く心を痛める父親役を途方もない力量で演じている。舞台同様に銀幕上でも力強さは健在、性格を描き出す鋭い力でその真価を発揮している。傍らには息子のエルンスト・ライヒャーの姿。フランクフルトのノイエン劇場に所属し、既に映画俳優として実績を積んだ彼が心を改めていく息子の役を演じている。

1913年8月23日付 リヒトビルト・ビューネ誌第34号

Emanuel Richter, der hervorragende Charakterdarsteller, spielt die Rolle des schwergeprüften Vaters mit enormer Kraft. Er wirkt auf der Leinwand ebenso stark, wie auf der Bühne, die ganze Schärfe seiner Charakterisierungskunst kommt voll zur Geltung. Neben ihm ist sein Sohn Ernst Richter vom Neuen Theater in Frankfurt a. M., den wir als Filmschauspieler bereits kennen, Träger des reumütigen Sohnes.

Lichtbild-Bühne, Nr. 34, 23.8.1913

同作はエルンスト・ライヒャー初期作の一つで本国ではむしろ舞台劇俳優として名のある父親のエマヌエル・ライヒャーの力量が発揮された作品として評価を受けていました。日本ではこの後イタリア作品『クオ・ヴァディス』のような絢爛な大作がヒット、また同年に『名金』『マスターピース』の米作品が公開されたことで本格的な連続活劇ブームを迎えます。

[原題]
Heimat und Fremde

[公開]
1913年8月

[IMDb]
Heimat und Fremde

[Movie Walker]


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