1931 – 9.5mm 『國歌 君か代』(千代紙映画社、大藤信郎) 伴野商店プリント

National Anthem Kimigayo
(1931, Chiyogami Eiga-sha, dir/Ôfuji Noburô)

無声映画からトーキーへの移行が進みつつあった1930年代初頭、伴野商店が始動させた「パテートーキー」シリーズ(T番)の初期作として製作・市販された大藤信郎作品。9.5ミリ版がオリジナルでその後16ミリで発売されており後者は日本アニメーション映画クラシックスでデジタル版が紹介および公開されています。

愛らしい2次元キャラクターたちの活躍する他の千代紙アニメ作品(『馬具田城の盗賊』『西遊記 孫悟空物語』)とは趣を変え、影絵を中心とした技法で日本神話を表現していきます。

岩戸の前で神楽を舞うアメノウズメ(左)
右はライニガーの『パパゲーノ』(1935年)

日本アニメーション映画クラシックスでも言及されていたようにイザナギやスサノオら日本の古神が登場する部分にはロッテ・ライニガーの影響が顕著に見られます。単純な模倣ではなくデザインの細部で日本神話を想起させる工夫が凝らされていています。

左は『君か代』の同心円表現
右はオスカー・フィッシンジャーの『螺旋』(Spiralen、1926年頃)

後半に登場する同心円を使った表現(おそらく太陽をイメージしたもの)はオスカー・フィッシンジャーの『螺旋』辺りに刺激を受けたのではないかな、と。最先端の表現技法を取り入れつつ、それらを日本史・日本文化の文脈にあわせて血肉化していこうとする大藤氏の才知が随所に見られる力作でした。

「パテートーキー」は別売りレコードと映像を同期させたレコード式トーキーの形を取っています。パテーベビー連盟特約販売店の在庫映画目録を見てみると1932年(昭和7年)版にはT7に『君が代』が登録されているのに対し、2年後の1934年(昭和9年)版では欠番扱いとなっていました。人気作品で早くから品薄になっていた状況が伝わってきます。

[JMDb]
君が代

[IMDb]
Kokka kimigayo

[メーカー]
伴野商店

[カタログ番号]
T-7

[フォーマット]
9.5ミリ 40m 白黒無声 別売りレコード(コロンビアレコード:A-18 32999)と同期 ノッチ無


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