1934年頃 独ツァイス・イコン社 モヴィコン8 戦前縦長型と初期ゾナー

撮影機館 より

c1934 Zeiss Ikon Movikon 8 Movie Camera
w/Sonnar f1:2 1cm

Progress In the Motion Picture Industry : Report of the Progress Committee in
“Journal of the Society of Motion Picture Engineers”, July 1937, Volume XXIX, Number 1

今年になって突出した進歩を見せたひとつがツァイス・イコン社によって導入されたモヴィコン8カメラで、先行のモヴィコン16の機構に多くの改良を施している。同機はダブル8だけではなくノーマル8用フィルムにも対応。焦点距離1センチ、f値1:2のゾナー・レンズを採用しているのが特徴である […]。

「映畫産業界の進歩。委員会からの報告」
米映画産業技術者協会、1937年7月

独ツァイス・イコン社による8ミリカメラ「モヴィコン(Movikon 8)」は戦後の横長タイプが良く知られています。スタイリッシュなデザインで国内外に人気を博し日本にも多くのユーザーを有していました。

モヴィタールのf=1.9 1cmを採用した戦後期の横長型。Catawiki.comより。

同機にハンドクランク式の戦前型があると初めて知りました。

パテ社のモトカメラにも似た王道のデザイン。1933年に市販開始されたもので今回入手した初期型が1937年まで流通、その後マイナーチェンジを加えた改良機「K8」に道を譲っています。撮影速度は毎秒8コマ/16コマ/64コマの三速。静止画の撮影機能も付いています。ダブル8のみならずノーマル8にも対応、8ミリの撮影形式が移行していく時期である様子が伺えます。

戦前型のモヴィコン8はゾナーを採用したものでした。ツァイス社の独自バヨネット・マウントで取り外しできるようになっていて、中望遠レンズ(2.5センチ、7.5センチ等)との互換性があります。今回入手したレンズはシリアルが173479となっていて1934年に生産された個体でした。

戦前ゾナーに関してはf=1.5焦点距離の5センチが良く知られていて実写例を紹介されている方が多くおられます。それに比べ1センチのタイプは珍しいのではないかなと。

フレーム部分を反時計回りに廻すとレンズを外すことができました。3群7枚でありながらコンパクトにまとまっています。それでもレンズの枚数が多いためにやや撮影面に長く伸びる形となっています。

後玉は豆粒のように小さく分解清掃がためらわれるほど。来週が桜の開花予想なので今年は古いレンズをお供に花見に行ってくる予定です。