1950年代中盤 仏ウルティエ社 9.5ミリ モノフィルム映写機 53型

Mid 1950s Heurtier Monofilm 9.5mm Silent Projector Série 53

ウルティエ社はフランス中部の町サン=テティエンヌを拠点に戦中(1930年代末)に活動を開始した映写機メーカーです。同社の映写機には幾つかのタイプがあるのですが、主流となっていたのが戦前のデザインを引き継いだ金属製躯体の機種でした。この機種には8ミリ/9.5ミリ/16ミリを切り替えることのできる「トリフィルム」と単一フォーマットに特化した「モノフィルム」の二系統があって、1950年、1953年、1958年、1960年の4度にわたりスペックやデザインのアップデートが施されています。

今回入手したのは1953年型の9.5ミリ専用「モノフィルム」です。

ウルティエ社の映写機は当時、プロの映写師が上映会に持ち歩いていたほど信頼性の高い一台でした。金属製の堅牢な躯体を有し、ボタン・スイッチ類が少ないため故障しにくく、モーターは安定していて高スペックのレンズを備えている…自分が1950年代フランスの映画少年だったら確かにこの機種を選ぶだろうなと思います。

入手した一台は13789のシリアル入り。手持ちのついた木箱に収まっていてリワインダーとスプライサーもセットになっています。レンズはアンジェニユーのf=35mm、1:1.5。日焼けやペイントロスが見られますが丁寧にメンテされていたようで錆びつきも許容範囲内。実施用に耐えるレベルでした。

作りは非常にシンプルで、フィルムをかけてコンセントを差しこむとその時点で補助灯が付きます。右側のスイッチでモーターをオンにし、速度を上げてから左のスイッチでメインランプに切り替えるとそのまま映写が始まります。他にはフレーミング用のダイヤルが付いている位。映写に必要な最低限の機能に絞った感じです。

「9.5」が同心円上に配されているのがフィルム送りとテンションを調整する制御用のギア(写真左)。トリフィルム映写機だとこの部分が「16」「9.5」「8」となって使用フィルムごとにかけ方を変えていきます。フィルム送りのガイド(写真中央)は丸ごと取り外せる仕組み。リールを固定する「トック」と呼ばれている部分(写真右)も9.5ミリユーザーにはおなじみの形をしています。

購入時に「テストはしていません」と動作の保証はありませんでした。ゴム製のモータ―ベルトを金属製に交換。埃を取り除き、注油した上でコンセントをつなげてスイッチを入れると動き始めました。

実際にフィルムをかけて試写を行いました。300メートル用リールにマウントされた9.5ミリ版『クリームヒルトの復讐』です。中段の二枚は映写機を写すために室内灯を付けた状態で撮影しています。

実際に使用してみて、1930年代中盤の中軽量の9.5ミリ映写機(例えば200B辺り)をそのまま二回りほど大きくした印象を受けました。画質も悪くありませんし500ワット位のランプでF=60~70のレンズを使えば小さな講堂や教室でも十分に映写できそうです。

映写機単体の完成度を見た時、フィルム制御の精密さやモーターの消音性を考慮すると戦前のボレックス製(G915型)に軍配があがります。ただし同機は重量があって小回りが利きません。フィルムをかけた映写機をひょいと移動させたり、あるいは外部での映写会に持ち運ぶのは大変なんですよね。

モノフィルムは重さが7.5キロなので片手で気軽に移動できます。ふと思い立った時に手間暇かけずにフィルムを上映したい…そういったニーズに上手く応えたのが当時支持された理由の一つだと納得しました。

[製造]
フランス

[シリアル]
13789

[対応電圧]
110~125V

[ランプ]
125V 300W (CXK)

[コンセント]
欧州仕様
[レンズ]
レンズ:P. Angenieux Paris F=35 1:1.5