以前に紹介した『妖婦五人女』絵葉書と同一人物が旧蔵していた全身写真。サイズは縦15.2×横10.3センチ。裏面には撮影日時と思われる「1927・8・26」の手書き文字が残されていました。
戦前の映画俳優のブロマイド(キネマカード)を時代順に追っていくと、1920年代中盤から着物と洋傘の組みあわせが増えていくのが分かります。1923年ごろ、松竹初期のブロマイド集では一枚だけ栗島すみ子さんが傘を持っているのですが、この時は和傘でした。
1~2年後に流通したと思われるブロマイド集では川田芳子さんと柳さく子さんの二人が洋傘を手にしています。スナップ写真はこの流れを受けつつ、よりハイカラな感触が強くなっています。
大正後期から昭和初期のファッション史の変遷である一方、こういった流行に多かれ少なかれ仕掛け人がいるのは今も昔も変わらない話です。例えば雑誌『三越』の1928年3月号には「春の装ひ(新流行のパラソルとショール)」と題されたカラーページがあり、柳さく子さんがモデルを務めていました。
同じ丸帯にも飛模樣もありますし、又模樣にしても大小がありますから同じ結び方に致しますにも、締める方の身體の格好と帯の模樣によつて結び方を變えて行かなければいけません。
どんな時でも、人物とか、鳥、舟、家等の模様などは逆さ向きにならない樣に気を付けて模樣が正確に現れる樣にいたします。
『春夏秋冬に配した着物の着附と帯の結び方』
柳さく子著(芳蘭閣書店、1929年)
髪型や化粧、着物の柄や帯びの結び方などもその時代にリンクした意味を持っているはずで、そういった要素を一つ一つ解きほぐしていくことができれば面白いだろうなと思います。