1934 – 昭和9年2月 『パテーベビー月報 第48号』

情報館・9.5ミリフィルム&パテベビー関連資料 より

Pathé Baby Monthly No.48 (1934 February Issue)

パテベビー映写機の百寿の記念日が近づいてきています。フランスでは12月にパテ/ジェローム・セイドゥ基金主催のシンポジウムが開催予定、日本では京都おもちゃ映画ミュージアムさんが「パテ・ベビー発掘プロジェクト」でデジタル化を進めておられる最中です。

1934年2月のパテーベビー月報は表紙に国産のエクラA型をあしらった一冊。本文中にも広告が掲載されていました。

新作紹介はアーノルド・ファンク監督&レニ・リーフェンシュタール主演作『モンブランの嵐』(S464/466)を中心とした内容。他に独ウーファによる学術映画『南極の神秘』(S468)、ポール・パロット喜劇『脱線カメラマン』(S460)、国産アニメ『とんまのとん平』(D29/G403)が紹介されていました。

またこの号には9.5ミリフィルム運用に関した記事が2本掲載されています。

一つ目は「フィルム接合法の秘訣」。1)フィルムを張りあわせる際の上下を間違わないようにしましょう。2)感光面の乳剤をヤスリで剥がしていく際は完全に削り落としフィルムがくっつきやすくなるようにしましょう。3)重ねあわせる部分を長く取り過ぎるとフィルムの厚みが増すので避けるようにしましょう、の3点が語られています。

実写やスキャンを行っていると9.5ミリのスプライシングは頻繁に発生してきます。誰に教わったというでもなく、物の本を見た覚えもなく感覚で進めていた部分が多かったため基礎から確認できたのは収穫でした。

二つ目の記事は「パテーベビー・天然色映畫製作法」。カラーフィルム紹介かと思いきやそうではありませんでした。

不要なフィルムの乳剤を除去、一旦透明にしてから赤/緑の順に塗分け、さらにループさせて特殊なフィルターを作り、フィルムカセットに装着するという手法です。この形で倍速撮影を行うと1)赤フィルターを通じて撮影されたコマでは(赤味を帯びた部分が撮影されず)補色である緑色の対象が撮影されます。2)緑フィルターをかけたコマでは逆に赤色の対象が撮影されることになります。

映写機にもやはりループさせたフィルターをセットします。1のフィルムに緑のフィルターがかかるようにすると、元々緑色だった対象が緑色で再現され、2のフィルムに赤フィルターをかけると赤い対象が赤く再現されます。緑~赤~緑~赤と交互に再現された映像を倍速で再生すると、赤と緑が同時に映っている錯覚が起こりカラー映画のように見えるのです。

記事では触れられていませんがこの手法は1920年代中盤~30年代初頭に実用されていた「2ストリップ・テクニカラー」を小型映画に転用したものです。「テクニカラー」の一世代前に当たる技術で青や黄を再現できないものの、確かに見た感じカラー映像になります。

DIYの難易度はやや高め、カラー作品を上手く撮るには相当の試行錯誤が必要だと思います。それでも映画や撮影機、映写機の仕組みをよく理解した上での優れた発案ですし、愛好家間で知識を共有していく雰囲気が醸成されていた様子が伝わってきます。

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