映画史館・ドイツ より
アルヴィン・ノイスは1910年代中盤~後半に人気を博したドイツの男優さんです。1900年代に舞台で経験を積み、1910年からノルディスク社作品を中心に活躍、ハムレットやジキル博士などを演じて知名度を上げていきました。


転機となったのが1914年。ドイツで探偵映画がブームとなっていた中で『バスカヴィル家の犬』に主演、同作のヒットにより花形俳優の地位を手に入れます。第一次大戦が始まってしばらくはホームズを演じ、その後デクラ社が立ち上げた探偵トム・シャーク物で主演を張りさらに監督業にも手を伸ばすなど活動の幅を広げていきました。
大戦が終わるのと軌を一にして探偵映画ブームは鎮火、ドイツ映画界の再編が進む中でその存在感は次第に希薄となっていきます。20年代になると脇役で名前を見かける程度となりフェイドアウトしていきました。熱心なシャーロキアンが映画史をさかのぼっていくとどこかで見かける名前ではあります。
1914年版『バスカヴィル家の犬』では原作の改変が目立ちます。魔犬の存在、バスカヴィル家の財産争いなど大枠は維持されているものの複雑な人間模様はカットされ、ワトソンの登場は数秒のみ、なによりホームズの設定が武闘派探偵に変わっています。その意味で原作に思い入れのある方にはお薦めしにくいところ。



あちこちに隠し扉や秘密の回廊、スイッチ一つで床は抜け落ち、ナポレオン胸像には覗き穴がついている…一方でこの作品は原作には見られない綺想を多く含んでいます。後に怪異作品の監督として名を挙げるリヒャルト・オズヴァルトのアイデアが多分に反映されたもので、1910年代の犯罪活劇映画として見るなら及第点以上の出来栄えです。




また本作では撮影をカール・フロイントが担当。以前にマンヤ・ツァッツエーワのサイン物で紹介した『マリッツァ』(1921年)断片でもその非凡なセンスは見て取れるものでしたが、コントラストや鏡像を巧みに使用した構図、犯罪者の内面に肉薄していくカメラワークは一見に値します。
[IMDb]
Alwin Neuß
[Movie Walker]
アルウイン・ノイス