1916 – 『滑稽喜劇 ニコニコ大會』 (河野紫光、春江堂)

情報館・ノベリゼーション [日本]より

Nikoniko Taikai (“Slapstick Comedy Shorts”, 1916, Shunko-do Shoten)

活動寫眞興業者は觀客吸引策に就いてニ六時中その頭腦をなやめてゐる。東京電氣館がニコニコ大會を前後數囘開催して非常なる成功を遂げてから、此事あつて日本全國の常設館に於いてニコニコ大會或は喜劇大會が盛んに開催されるようになつた。横濱のオデヲン座や東京の電氣館が此の催しの嚆矢とも云へよう。

「喜劇大會と活動寫眞展覧會 – 將して最新の興行方針」
『キネマ・レコード』 大正6年(1917年)3月10日付通巻第45号

キネマ・レコード誌1916年10月号
淺草電氣館 第2回ニコニコ大會広告

キネマ・レコード誌1917年3月10日発行第45号では「最新の興行方針」のひとつに電氣館から広まった「ニコニコ大會」が挙げられていました。同館は1916年(大正5年)8月20日の改築一周年に初のニコニコ大会を実施、好評を受け同年10月1日から第2回目を開催していました。

この2回の上映会の合間となる1916年9月、春江堂書店から『ニコニコ大會』初版が出版されています。この時期に人気のあったハリウッド喜劇短編(チェスター・コンクリン、メーベル・ノーマンド、チャップリン、ロイド・ハミルトン、ロスコー・アーバックル、フォード・スターリング)を中心とした構成。

「呀々(おやおや)、此の家の中かな。さてはいよいよ、惡漢共に誘拐されたのだな。待てよ錠がかけてあつてなかなか入れそさうもないぞ。」
一生懸命戸を破らうとするが中々破れぬ、此間ボスは塀と土との間を掘り穿つて内部に潜り込みメリーの縛られていゐる繩を咬へて頻りに解きにかゝる。
「ボスめ此の穴から入つたな。宜しい俺も一つ穴潜りと出掛けやうドツコイシヨ。」

「デブ君の猛犬」


コンクリーンは此の間に自分の隣席に坐つてゐる一人の女を見つけて助倍根性を起し、ソツと其の袖を引つ張ると女も氣の多い女と見えて、コンクリーンに笑顔を見せる。

「三人男」

この2回の上映会の合間となる1916年9月、春江堂書店から『ニコニコ大會』初版が出版されています。この時期に人気のあったハリウッド喜劇短編(チェスター・コンクリン、メーベル・ノーマンド、チャップリン、ロイド・ハミルトン、ロスコー・アーバックル、フォード・スターリング)を中心とした構成。

巻末には1916年時点の既刊書目録が置かれていて、『名金』『マスターキー』など初期ハリウッド連続活劇名作の名を見ることができます。春江堂が翌年に大活劇文庫を立ち上げ、『ニコニコ大會』を含めた解説本をその枠にまとめた話は別稿で触れたとおりです。

[発行年]
大正5年9月初版/大正7年10月第11刷

[発行所]
春江堂書店

[フォーマット]
240頁 18.6cm×12.7cm

[定価]
四十銭(郵税六銭)