1900年代初頭 – アベル・ガンス旧蔵品 青年期のプライベート写真

秘宝館・アベル・ガンス より

Abel Gance 2 Private Photos from the 1900s

1900年代初頭~中頃に撮影された2枚の白黒写真。建物の前に青年と年下の少女が並んで立っている一枚と、乗馬中の男の子の姿を捉えたもう一枚。いずれも被写体は若きアベル・ガンス監督です。

セラーさんによると「ドゥルオで売りに出されていたガンス氏ゆかりの品々(La présente photo provient d’une vente Drouot de souvenirs d’Abel Gance)」とのこと。他にもフェンシング練習中の写真もあってスキャン画像を見せていただきました。

「ドゥルオ」はパリのオークション・ハウス「オテル・ドゥルオ」を意味しています。1993年3月3日、同オークションハウスでガンス監督の旧蔵品を対象とした競売が開催されました。インタビュー集などを残しているネリー・カプラン(Nelly Caplan)さんが所蔵コレクションの一部を売りに出したものです。

1993年の競売時のカタログ

現在フランス国立図書館(BnF)に収蔵されている大規模なガンス・アーカイヴの出発点となったのもこのオークションでした。その経緯については「1895」誌のガンス特集号(2000年、第31号)で詳述されています。

1993年3月、1950~60年代にガンス監督のパートナーであったネリー・カプランが同監督にゆかりのあるアーカイブの一部を売りに出した。映画誕生百年の節目が近づいている中、力強く独創的なガンス作品ゆかりの品々が世界のあちこちに四散してしまうかもしれない。そんな恐れに大きな反響が沸き起こった。仏文部省下の様々なセクションが動き始めオークションに参加、主要アイテムが四散しないよう力をあわせた。1993年3月3日オテル・ドゥルオでのオークションにかけられた298アイテムのうち書籍・読書局、国立美術館総局、フランス古文書局、国立図書館が計126点を競い落した。

「仏国立図書館収蔵のアベル・ガンス資料群」
ノエル・ジレ
(『1895誌 第31号 アベル・ガンス 新たなる視点』、仏映画史研究協会編、2000年)

En mars 1993, Nelly Kaplan, qui fut dans les années cinquante et soixante la collaboratrice d’Abel Gance, met en vente une part importante des archives du cinéaste. À l’approche de la célébration du centenaire du cinéma, la possibilité que puissent être dispersés aux quatre coins du monde les témoignages de cette œuvre originale, puissante et constamment inventive, suscite une très vive émotion. Différentes instances du ministère de la Culture se mobilisent et se concertent pour être présentes à la vente et éviter la dispersion de pièces majeures. Le 3 mars 1993 à l’Hôtel-Drouot, la Direction du Livre et de la Lecture, la Direction des Musées de France, les Archives de France et la Bibliothèque nationale préemptent 126 numéros sur les 298 proposés par le catalogue de la vente.

Le Fonds Abel Gance à la Bibliothèque nationale de France
Noëlle Giret
Revue 1895, No.31, “Abel Gance, nouveaux regards” (AFRHC, 2000)

1993年頃、国外のこういった競売の情報は伝わりにくい状況でした。フランス日刊紙や雑誌の定期購読システムはあったので紙媒体を丁寧に追っていれば話は届いていた可能性はあります。そこからオークションに参加しようとすると入札は郵送で行い、落札できたらそこから銀行経由で海外送金手続き…とハードルの高い作業が続きます。個人での入手は無理だったのではないかな、と。

そこから30年が経過。初期映画史にまつわる資料が断片化、流動化している状況は肌で感じています。おそらくこれは一過性の状態であって、こういった資料を国外から入手できる可能性は遅かれ早かれ閉じていくのでしょう。あるべき状態に戻った時に何が残っていて、映画史の見え方がどう変わっているのか興味があります。