1920 – 『活動倶樂部』 大正9年12月号 追悼俳優號

情報館・雑誌(和書) より

Katsudou Club Vo.3 No.12 1920 December Issue
(Katsudou Club Publishing co., Tokyo)

追悼俳優號と名付けられた活動倶楽部誌1920年12月号、表紙はプリシラ・ディーン

巻頭彩色グラビアはミルドレッド・ハリス。モノクロのグラビアにはクララ・キンボール・ヤング、ナジモヴァ等が登場。小山内薫と村田實による松竹作品で、短期間同社に所属していたキティ・スラヴィアナを主役に配した『女優の生涯』が紹介されていました。

特集関連の記事を除いためぼしい動きとして、当時大正活映に絡んでいた作家・谷崎潤一郎氏による寄稿「其の歡びを感謝せざるを得ない」を掲載。


私の考へでは、在來我が國で製作された映畫劇には、現代の日本の實情や風習とは餘に懸け離れたものが多いやうに思うはれるので、今度の喜劇はその點を顧慮して出來るだけ自然に、われわれの日常生活を基礎にして、多勢の青年男女の生き生きとした陽氣な雰囲氣を出すことに努めたつもりである。標題は最初「避暑地の騒ぎ」としたが、少し都合があつて今度發表する時は「アマチユア倶樂部」と改題することになるかも知れない。

「其の歡びを感謝せざるを得ない」 谷崎潤一郎


シナリオ執筆作業の進捗報告、撮影ロケを見学した折の雑感を交えつつ、自身の映画観、喜劇論、映画におけるシナリオの在り方についても述べています。大活誕生時の現場の雰囲気も伝わってくる優れた論考となっていました。

特集記事としては早世したハリウッド俳優の略歴をまとめた「亡き追憶の人々の靈に」(若樹華影)、1918年のスペイン熱の被害をまとめた「流感の犠牲となつた人々」(鈴木笛人)、9月に亡くなった女優オリーヴ・トーマスと男優ロバート・ハーロンを扱った「痛ましい哉!トーマスとハロン」(志和橋正尭)などを収録。

新作紹介ではイリーナ・レオニドフがヒロインを務めた伊作品『背教者ジュリアノ』の扱いが大きく、またミーア・マイ主演で夫君ヨーエ・マイ監督の『ヴェリタス』やオリーブ・トーマス主演のメロドラマ『巴里の花賣』(フランク・ボーセージ監督)等の映画小説が掲載されていました。


[出版者]
活動倶樂部社

[発行]
大正9年(1920年)12月1日

[定価]
七拾銭

[フォーマット]
B5版、 25.7×18.2cm、104頁