1921 – 『活動倶樂部』 大正10年7月号 性と映畫號

情報館・雑誌(和書) より

Katsudou Club Vo.4 No.7 1921 July Issue
(Katsudou Club Publishing co., Tokyo)

性と映畫號の副題で発売された1921年7月号。表紙はセダ・バラ

巻頭の彩色グラビアが一枚欠けていて、二色グラビアにプリシラ・ディーン。コロタイプ印刷でベティ・コンプソン。二度刷りにドロシー・フィリップス、グロリア・スワンソンなどの米国女優とイタリアからアムレット・ノヴェリとアルベルト・カボッチ両氏を配しています。

新作紹介欄にはフィルムの現存している独作品『アルゴール』と米作品『看護婦マージョリー』を見ることができます。ミルドレッド・ハリス主演の『其家の女』(The Woman in His House)と伊作品『生活』は編集部の好みが色濃く反映されたもの。邦画ではヘンリー小谷氏による『鞄』などが扱われています。

國活俳優の紹介ページ。後に日活で名を馳せる葛木香一氏の姿があり、小松みどりさんや小池春枝さんなどのポートレイトが掲載されていました。

特集記事として森富風太氏が「性と映畫劇」、若樹華影氏が「性的方面より見たる歐洲の名花達」を寄稿。カタノ・アケジ氏によるゴシップコレクション「日本映畫俳優の噂(一)」も関連記事と見てよさそうで紅澤葉子や吾妻光、栗島澄子等が扱われています。

活動倶楽部誌のこの号は『カリガリ博士』が日本で初めて公開され(「五月十三日キネマ倶樂部」)、そのインパクトが目に見えてきた時期に発売されています。


是れまで隨分『辯士』と稱する説明者諸君から未知の國の新しき智惠の實を頂戴したものだ。常にそれを感謝して居るが、時には説明者無用を感じることがある。『カリガリ博士』を説明した辯士(吉野美洲、芳本濤華)は決して拙劣ではなかつた。むしろ輕快で上手であつた。けれども輕快で雄辯であつただけに、私達の靜かな心持ちをいたく破った。

「表現派藝術としてのカリガリ博士」 小生夢坊

独逸表現派の映畫劇『カリガリ博士の筥(はこ)』は大正活映によつて提供された『マンクスマン』と共に一九二一年度に於いて特記さるべき映畫であると言へる。[中略] 威大なる作品が漸く上映されるに臻つたのは蓋し悦ぶべき現象である。

『マンクスマン』はその内容微に於て、『カリガリ博士の筥』はその映畫的樣式に革命的新窓を拓ける點に於て。

「童馬漫筆 新映畫徒然草」 泉春樹


この前年、1920年の活動倶楽部誌は良くも悪くも馴れあいの言論空間で、趣味や価値観を共有する者が軽口を叩きあいながら好きな作品、俳優を愛でていました。1921年となり、そういった予定調和がもはや成り立たなくなりつつある様子を見て取ることができます。『カリガリ博士』やその周辺作品が持ちこんできた異質な映画的リアリティは黒船の役割を果たしたとも言え「輕快で雄辯であつただけに、私達の靜かな心持ちをいたく破った」にうかがえる微妙な齟齬、不協和音を生み出していきます。


[出版者]
活動倶樂部社

[発行]
大正10年(1921年)7月1日

[定価]
七拾銭

[フォーマット]
B5版、 25.7×18.2cm、104頁