パテベビー解体新書 実践編 より
別投稿(「ノッチ機構の仕組みを理解する」)で触れたように、1920年代の9.5ミリフィルムには字幕部の一時停止を行う「ノッチ」(英:notch 仏:encoche)が切られています。動画カメラを使って個人撮影を行い字幕を含めた編集を行う時には自力でノッチを設定する必要が出てきます。パテ社からは専用ツール(”pince à encocher”、ノッチ用のパンチ)が発売されていました。手元に日本製の無銘のパンチがありますので、今回実際にフィルム端にノッチを切っていきます。
難しい工程は含まれていません。フィルム表面(感光面)が上になるようにガイドに設置、右の側面に切り込みが入るよう「パチン!」と押すだけで完了します。
きれいにノッチを入れることができました。


パテベビー映写機の仕組みではノッチが入ったコマの二つ下で一時停止が起こります。間字幕部でフィルムを止めたいのであればその二つ前のコマに切り込みを入れていきます。また間字幕が短い内容であればノッチ一つで十分ですが、ある程度の長文を読ませたいのであればノッチを二つ入れていきます。以前にスキャンした市販品のノッチを参考に並べておきます。
このパンチにはフィルム終了時のエンドマークを切る機能もついています。
市販フィルムでは映像が終了すると最後にパテ社のロゴが出てきます。金属製ケースに収められたフィルムの場合、そのまま映写機を回し続けると残りのフィルムが無い状態で力をかける形となって外れたり最悪切れたりします。それを防ぐためロゴが映し出された後にパ―フォレーションをつなぐ長い穴をあけて空転させる仕組みになっているのです。
こちらも作業は単純、巻取りを終了させたい部分の二コマ前辺りをガイドに設置してパンチを押すだけです。
パーフォレーションをまたぐ長い穴をあけることが出来ました。フィルム送りの爪がいくら動いても引っかからなくなって動画再生を完全停止できます。
手回し式ベビー映写機ではロゴが出た時点で手を止めれば済む話ではあります。初期モーター式もそこまで強い力で引っ張る訳ではないので切込みなしでも普通に停止します。無くても差支えありませんが、パテベビー映写機の仕組みを理解する意味で知っておいて損はないと思われます。