1940年代末~50年代前半 独パテックス社 Gem 9.5ミリサイレント映写機(シュナイダー社製キプター 1:1.6 35ミリレンズ搭載)

映写機館 より

c1950 German Pathex Gem 9.5mm Silent Projector
w/Optische Werke Göttingen Schneider-Kiptar Serie S 1:1.6 35mm Lens

独創的なフォルムを備えAce映写機に次ぐ戦後の英パテスコープ社の主力映写機として活躍したのがジェム/Gemでした。ソン映写機(サウンドフィルム対応)や後継機のマークIXなどの派生機を含め多くの機体が流通しているのですが、今回入手したのは独パテックス社が市販していたドイツ製の一台になります。

英パテスコープ社製(奥)と並べてみました。後述するようにレンズが異なっているため表情がやや変わります。

パーツの殆どは英国から輸入、文字表記の含まれたプレート部分(ドイツ名義の”PATHEX”、オンオフを示す”AN/AUS”)など一部パーツを自国で調達し最終組み立てをドイツで行ったと思われます。

機体のシリアル番号は11011。対応電圧は200~250V。ランプは12V100Wを使用。このランプが癖者で、流通数の多いA1/186あるいは7238 N/05 (=ANSIコードでBXT)と似ているのですが、ソケット方式がパテ系列特有の「T」字型になったA1/156又は7238 X/05が適合します。

最大の特徴はレンズです。英国製で標準装備とされていた32mmの無銘レンズは評判が芳しくありませんでした。ドイツ機はキプター(Kiptar)Sシリーズの35ミリを採用。後年のキプター、ウルトラ・キプターがIsco-Göttingenの名を冠して製造されていたのに対し、SシリーズはIscoの親会社であるSchneider社の名が刻印されています。

シュナイダー・キプターのSシリーズは市場にほとんど出てこない珍しいレンズです。独リタックス社の16ミリ映写機が焦点距離50ミリを採用、バウアー社のペンタリュクス8ミリ映写機が焦点距離20ミリを搭載していた記録が残っています。焦点距離35ミリは独パテックス社のジェム以外に採用例が見当たりませんでした。

独リタックス社16ミリ映写機に装備されていたF1:16の50ミリ(オークションサイト・Catawikiでの売買記録より)。バウアー社のペンタリュクス8ミリ映写機の一部に20ミリが搭載されていたようです。

現時点でランプOK、モーターの回転も確認できましたが内部のメインベルトが駄目になっていてフィルム送りが上手くいきません。交換すれば行けそうな予感があり、ひと手間かけて試運転に取りかかろうと思います。

[製造]
ドイツ

[シリアル]
11011

[対応電圧]
200~250V

[ランプ]
12V 100W (Philips 7238 X/05)

[コンセント]
欧州仕様
[レンズ]
レンズ:Optische Werke Göttingen Schneider-Kiptar Serie S 1:1.6 35mm