ルイ・フイヤードより
ゴーモン社の『ジュデックス』と『後のジュデックス』が公開された際に市販された絵葉書セット。元々12枚1組で今回は8枚を一括で入手。連続活劇史上、重要な作品の一つですので主要キャストをおさらいしておきたいと思います。

(1)ルネ・クレステ(ジュデックス) René Cresté
主人公ジュデックスを演じたのがルネ・クレステでした。マント姿の写真はメインポスターに使われ『ジュデックス』と言えばこのイメージが思い浮かぶ程の強い印象を残しました。クレステの実人生、特にその早世と残された妻子の辿った運命については別稿をご参照ください。

エドゥアール・マテ(ロジェ・ド・トレムーズ) Edouard Mathé
米俳優リチャード・バーセルメスにも似た柔和で端正な雰囲気を漂わせフイヤード活劇にはしばしばジャーナリストや外交官役として登場、悪と戦う役柄を演じていました。以前、仏興行師イゾラ兄弟に宛てた直筆書簡を手に入れています。

(3)クレステ&マテ(ジュデックス&ロジェ・トレムーズ) Créste & Mathé
『ジュデックス』から『後のジュデックス』、そして『ぶどう月』『ティーミン』へ。クレステとマテが並ぶ構図はフイヤード活劇ではお約束の場面です。大柄で凛々しさを漂わせたクレステ。知的な繊細さを醸し出すマテ。作品世界の「善人」の側に剛と柔のコントラスト、二つのアプローチを持ちこもうとしているのが伝わってきます。

(4)マルセル・レヴェスク(コカンタン)Marcel Lévesque
『レ・ヴァンピール』と『ジュデックス』の2作でコミカルな演技を披露、作品のリズムチェンジャーとして存在感を放ったのがマルセル・レヴェスクでした。ゴーモン社で単独の喜劇シリーズ(セルパンタン喜劇)を持つ芸達者である一方、自身の劇団を所有し仏映画界、演劇界に太いパイプを張りめぐらせていた1920年仏芸能界のキーパーソンです。クレステが亡くなった後、困窮した未亡人がルヴェスクに助けを求めたのもその意味では自然な流れでした。

(5)イヴェット・アンドレヨール(ジャクリーヌ・オーブリー) Yvette Andréyor
「アンドレヨール」の芸名で舞台で活動する一方、映画界の創始期から最前線で活躍していた女優さん。フイヤード監督とは同監督がまだ短編劇を撮っていた1910年代初頭からの長い付きあいになります。1920年代のサイン入り絵葉書を以前に紹介しています。

(6)ジョルジェット・ド・ネリー & ルネ・クレステ(プリムローズ&ジュデックス) Georgette de Nery & Rene Cresté
『後のジュデックス』にロジェ(エドゥアール・マテ)の婚約者として登場したのがプリムローズ(ジョルジェット・ド・ネリー)でした。映画出演はこの一作のみ、他に舞台での活動記録なども残っていない謎多き女優さんです。絵葉書は「de Nery」表記ですが同時期の雑誌には「de Nérys」と書かれているものがあります。

(7)ジュアナ・ボルゲーズ(ダプレモン男爵夫人) Juana Borguese
『後のジュデックス』でエレガントなダプレモン男爵夫人を演じた女優さん。次作『ティーミン』のサンタフェ侯爵夫人(ジォルジェット・ファラボーニ)と繋がる美悪女の流れに位置しています。舞台での活動を中心にしていて『トスカ』等に主演していたデータが残っています。

(8)ルイ・ルーバ(銀行家ファヴロー) Louis Leubas
エドゥアール・マテやガストン・ミシェル等と並ぶフイヤード活劇の常連俳優。『レ・ヴァンピール』以降、一貫して悪役専門俳優として活躍、その憎々しい演技はフイヤード作品の説得力を支える重要な役割を果たしていました。『ぶどう月』撮影中の生写真を一枚所有しています。
以上8点の他に、ルネ・クレステとジョルジェット・ド・ネリーをあしらった別デザインの絵葉書それぞれ1枚ずつと、子役オリンダ・マノ、医師ホーエイを演じたアンドレ・ブリュネルの計4枚が同時期に発売されていました。コツコツとコンプリートを目指す予定です。