1918 – 『七ツ真珠』 (ルイ・ガスニエ他監督、パテ・エクスチェンジ社/アストラ社) 春江堂 ・ 大活劇文庫

情報館・ノベリゼーション [日本]より

“The Seven Pearls” (1917, Pathé Exchange/Astra Film, dir/Louis J. Gasnier and Donald MacKenzie) 1918 Shunkô-dô Novelisation “Collection Great Serials (Dai-Katsugeki)” 4th Edition


 […] 恐怖に奪はれながら眺めてゐるイルマを、メーソンは、無理無體に、太縄で縛り附けて了つた。イルマを縛り附けた太縄の一端を風船に結び附けたのだ。
 「さあ。此處に、硫酸がある。此硫酸の瓶を、縄の結び目に、逆樣に縛つて置くと硫酸は、ポタリ、ポタリと栓の穴から漏れて落ちるのだ。貴樣が、風船に釣されて空中高く舞ひ登つて居る時分に、結び目は硫酸で、腐食されて、切れる。そうすれば、貴樣は、空中から木の葉のやうに地球の表面に向つて、落下するのだ。ハゝゝゝ。」


トルコ皇帝が巡幸の折、侍従長の元に託した真珠の首飾りが盗まれた。「6ヶ月以内に探し出さなければ皇帝の妾にしてしまうぞ」。盗難の責を負い、侍従長の養女イルマ(モリー・キング)は武官キスメットと共に首飾り探しに乗り出していく。実行犯のハリー青年(クレイトン・ヘイル)を追って海路ニューヨークに到着。青年に話を聞いたところ、盗賊団にたぶらかされて犯行に及んだもので7つの真珠はすでに7人の悪漢の手に渡っているとのこと。イルマは青年の助けを得てその回収を試みる。

一方で真珠の存在を知った謎の富豪メイソン(レオン・バリー)がイルマの命を狙い始め、追いつ追われつつの追跡劇が空から地下へと展開されていく。イルマは無事に真珠を揃えることができるのか、ハリー青年との恋物語の行方や如何に。

1917年に公開された15幕物の連続活劇『七ツ真珠』(The Seven Pearls)の日本語翻案。翻訳版は春江堂からで冒頭に5枚のスチルをあしらっています。

「鐵の爪」の姉妹篇!!「護る影」の兄弟篇!!「拳骨」と同じ著者…

配役紹介および目次に入る前に1頁、作品の広告ページが含まれています。アストラ社は1916年以降のパール・ホワイト中期活劇(『運命の指輪』『陸軍のパール』『鉄の爪』『家の呪い』)の製作会社でもあって、監督のルイ・ガスニエを含めこの周辺の人脈を再結集して作り上げたのが『七ツ真珠』でした。

ムービング・ピクチャー・ワールド誌1917年9月号より広告

主演のイルマを演じたのはモリー・キング。1917年春~夏に公開された連続劇『二重十字の秘密』に続く主演となります。 『二重十字』は物語や設定が紋切り型に寄りすぎ、アクション要素が希薄で連続活劇としては失敗の部類に入ります。『七ツ真珠』はその失敗点を修正し、物語をシンプルにしつつもエキゾチックな要素を加え派手な見せ場を幾つか作っています。初期活劇のエッセンスを純化させた作品は好意的に受け止められ、日本でもモリー・キングの名が広まるきっかけになった一作です。

『ドーソン・シティー:凍結された時間』で紹介されていた字幕部

『七ツ真珠』は現在断片のみの現存が確認されています。アラスカ州の旧金鉱町で発見された35ミリフィルム群を扱った秀作ドキュメンタリー映画『ドーソン・シティー:凍結された時間』ではダメージを負った字幕部が一瞬紹介されていました。

[IMDb]
The Seven Pearls

[Movie Walker]


[訳者(翻案)]
泉淸風

[発行者]
高橋友太郎

[発行所]
春江堂書店

[フォーマット]
18.5 × 12.5 cm、240頁、大活劇文庫

[出版年]
1919年(第4版)