1920年代後半 – 16ミリ ソフトコア・ポルノ 『森の妖精』 米シネ・アート社 

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The Wood Nymph (Unknown director)
Late 1920s Cine-Art Productions 16mm Print

夏の日の森にうら若き処女しばし微睡む

うたたねに夢見し
我こそ森の精の女王なりと

彼方に響く朗らかなる呼び声
求めに応へ一対の侍女参上す

二人は甘き木の実に果実
瑞々しき新芽、柔らかな根を持ち来る

女王の足元に腰下ろし
侍女はその食事に見惚れる様なり

幸福の笑ひと呼びかけが響く中
乙女は無邪気な駆けあいにいそしむ

薄暗き森と陽に照らされた谷に物語あり
侍女は女王の話に耳を傾けたり

通り過ぎたるは森の悪しき霊なり
得も言われぬ怖れに足早に逃れ去る

おののき息を弾ませながら
苔むす土手に足を止めその身を休める

侍女は優しき手つきで寝床を作り
木の葉の布に女王の裸身を包む

終りなき夢なしはこれ現世必定なり
乙女の夢も亦かくて消え去り行くのみ


戦前期のソフトコア・ポルノに『浜辺の魔女』『沙漠の妖精』という良く知られた小品があります。大自然に戯れる裸身を捉えた他愛ない内容ながら撮影・編集技術はしっかりしており、女性を綺麗に撮ろうとする独自のスタイルと相まって現在でも十分見れるレベルでした。

これらの短編を製作したのはサンフランシスコに拠点を置くシネ・アート映画社(Cine Art Productions)。今回同社の『森の妖精』を見つけました。タイトルから伺えるように『浜辺の魔女』『沙漠の妖精』と同系統の作品。形ばかりとは言え筋立てがあってオチもついています。


しかしながら、より大きな市場を狙おうとする配給社も時折見かけられた。映画のレンタルサービスは1920年代初頭から始まっていた。先駆けとなったのがコダスコープ・ライブラリ、16ミリフィルムの導入に併せ1923年に業務を開始している。市販に特化したコダック・シネグラフが1929年に始まると、家庭用映画のニーズが急増したのを狙って多くの配給会社が市場に参入し始めた。そのほとんどは無難な家族向け作品(漫画、喜劇、長編ドラマ、連続劇、ニュース動画)を扱うものであった。しかしながら一部では目の肥えた視聴者向けによりアダルトな内容の作品を取り扱い始めていた。サンフランシスコ拠点のシネ・アート映画社が制作していたような裸の少女が戯れている一連の短編群や、絵画・彫刻のモデル女性を撮影したもの、ヌーディスト長編など内容は多岐に渡った。

『白と黒と青:ヴィクトリア朝期からビデオテープ時代までのアダルト映画』
デイブ・トンプソン(ECW出版社、2007年)

Sometimes, however, a distributor would aim for a larger market. Movie rental services had been around since the early 1920s — the first, Kodascope Libraries, was established in 1923, following the introduction of 16mm film stock. The retail-based Kodak Cinegraph followed in 1929, after which a wealth of private distribution companies set up to capitalize on the booming home market. For the most part, these enterprises concentrated on harmless family fare — cartoons, comedies, dramas, series and newsreels. A handful, however, maintained a more adult stock for the use of certain discerning viewers — the series of naked dancing girl “featurettes” produced by the San Francisco–based Cine-Art Productions, for example: artistic modeling movies, nudism features and so on.

BLACK and WHITE and BLUE : Adult Cinema from the Victorian Age to the VCR
(Dave Thompson, ECW Press, 2007)


2007年公刊の研究書からの一節で、シネ・アート映画社の活動が1920年代中盤~後半にかけての16ミリ小型映画普及に連動している旨が記されています。今回入手したプリントもこの時期のコダック社製でした。

シネ・アート社作品は他にも幾つか知られており、2010年には8作品がイギリスでDVD化されています。

『ベティさんの湯浴み』と題されたDVDは英ウエスト・ハムステッドの旧塹壕跡からひとまとめで発見されたフィルムをデジタル化したものです。空爆の最中に自分の命と並んで何とか残したい、と持ち出して隠したのがポルノフィルムだったという話で、「フィルム発掘(ファウンド・フーテージ)」の視点から見て興味深いのではないかと思われます。

通り過ぎたるは森の悪しき霊なり
得も言われぬ怖れに足早に逃れ去る

The Demon of the Woods passed by,
In wildest fear their feet did fly.

『森の妖精』の字幕は8音節で脚韻を踏む形式をとっています。肉欲を生々しく描くことはせず、裸身をめぐるファンタジーをそのまま映像化していくなど、米シネ・アート社の作品は仏トレブレ社と重なる要素を多く含んでいます。大西洋を挟んで似たような活動が同時進行していた、と。

ちなみにこの作品については英ハントリー・アーカイヴが別プリントを所有。木陰で目を覚ました少女が背伸びをした後に水辺で顔を洗うなど、当サイトで入手した16ミリ版にない場面が幾つか含まれていました。ハントリー版は冒頭のタイトルとクレジットが欠けておりタイトル及び製作者未詳(フィルム番号1017711)で紹介されていました。


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