1922 – 『ドクトル・マブゼ 第5巻 – マブゼ博士の最期』 東独DEFA社 スーパー8

フリッツ・ラングより

Dr. Mabuse: Das Ende des Dr. Mabuse
(1970s East Germany DEFA super 8 Print)

マブゼ博士はまだ眠りについていた。目を覚ましていたのは使用人フィーネと伯爵夫人だけであつた。一党のゲオルクはアジトが警官たちに包囲されていると気づき息が止まりそうになった。マブゼに報告してその指示を仰ぐ。博士の判断は「徹底抗戦」であつた。出入口が封鎖され皆の手に銃が渡っていく。一味のアジトは要塞化し、検察官と部下たちも当初は手出しできない状態であつた。一通りの銃撃戦を終えた後、検察官ヴェンクはマブゼ博士に電話を入れて無駄な抵抗は止めた方が良いと忠告した。しかしここでもまたマブゼの手に切り札が残されていた。検察官に対しトルド伯爵夫人を人質に取っていると脅しをかけるのであつた…

Noch schläft Dr. Mabuse; nur Fine und die Gräfin werden geweckt. Da macht Georg die erschreckende Entdeckung, daß die Polizei das Haus umstellt hat. Nun heißt es, Dr. Mabuse zu informieren und seine Anweisungen abzuwarten. Er entschließt sich für Kampf. Die Türen werden verbarrikadiert, Gewehre verteilt. Das Haus wird zur Festung, gegen die der Staatanwalt mit seinen Polizisten vorerst nicht ankommen kann. Nach dem ersten Feuergefecht sieht sich Staatanwalt Wenk veranlaßt, Dr. Mabuse anzurufen und ihm zu raten, den sinnlosen Widerstand aufzugeben. Doch noch einmal dieser einen Trumpf in der Hand : er eröffnet dem Staatanwalt, daß sich die Gräfin Told im Haus befindet.


2017年末、 DEFA社から出されていた8ミリ版『ドクトル・マブゼ』全5巻の内1~4巻を一括で入手しました。最終巻もすぐ見つかると思っていたのですが見通しが甘かったです。フィルムは時折売りに出されているものの軒並み国外発送不可。「日本に送れませんか」と交渉した折も「送料を考えるとお薦めできません」とやんわり断られてしまいました。

2018年に紹介し損ねた幻のマブゼ第5巻

それでも2018年にようやく海外発送OKのセラーさんを見つけて無事入手、コンプリート達成を喜んだのも束の間、マブゼだったのは缶だけで中身は個人が戦後に撮影したホームムービーでした。我ながらなかなかの呪われっぷりです。

そこから5年が経過。今年の1月DEFA社の『カリガリ博士』全2巻と『ドクトル・マブゼ』1、2、5巻をまとめたセットが売りに出されているのを見つけました(『カリガリ』は後日紹介予定)。今回は中身まで本物。ホッと胸を撫でおろしてスキャンに入ります。

…何かがおかしい。スキャンした画像が「暗い」のです。

2017年に1~4巻を入手した時は映写機で実写していて、その時は割と明るめのプリント(白飛びしている個所が目立つくらい)だった覚えがあります。スキャナーの設定を間違えたかとチェックしても特に異常はありません。もしや…と思い同時に入手した1、2巻もスキャンしてみました。

左が2017年に入手した青ラベル(ノーマル8)、右が2023年に入手した緑ラベル(スーパー8版)のスキャン。スキャン時の設定・条件は同一。スーパー8版の方が暗く、なおかつ上のトリミング幅が大きいため構図が上に寄った形に。DEFAという同一会社が売りに出していた同じ8ミリフィルムにも拘らずプリントは同じではありませんでした。どうしてこんなことに?

考えらえる理由は二つ。

1)『ドクトル・マブゼ』は冒頭に有名な機密文書強奪の一幕があります。屋外ロケを主に撮影されたもので光量が高めの明るい場面が続きます。フィルムプリントを作製する際に冒頭を基準に明るさを決めてしまったため後の闇カジノや夜の場面等では明るさが足りなくなった…これはこれでありえない仮説ではないと思われます。

2)もう一つの仮説は以前に『呪の列車』で触れた話と関わってきます。同作の8ミリは2種類(英ペリー版米ブラックホーク版)あって、後者は映写時に何が写っているか分からないほど暗いプリントでした。ところが実際に両者を入手し比較してみたところ必ずしも悪いプリントではなかったのです。元々8ミリで綺麗に見えるプリントは高コントラストで、白飛びした一部はデータが飛んでしまっています。パッと見「暗い」とされるプリントではその部分の細やかな陰影が保存されているので、光源を十分に確保できる環境があれば上手く写せそうだ…という話でした。

今回の『ドクトル・マブゼ』スーパー8に関しては1970年代に発売された物で、先行して発売されていたノーマル8版に比べてより明るい光源を想定していた可能性もゼロではないと考えられます。


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