情報館・俳優名鑑より
歐米では大變に立派なものがあるのに、日本では赤本みたいなものしか出てゐないので、是非とも完全なものを出してみたいと思つてゐました。
序文/橘弘一路
1929年に世界映画社から公刊された邦画の名鑑。巻頭で橘弘一路氏が述べていたように、旧来の名鑑に見られた不備を正し、できる限り網羅的で客観性の高いデータベースを構成しようと試みた努力の結晶。2005年にゆまに書房から公刊された『明治〜昭和初期俳優名鑑集成』の第8巻で復刻されています。










冒頭の16頁は単色グラビアで各社の花形男女優が並んでいます。
本文は四部構成でイロハ順。書籍タイトルが『俳優名鑑』となっているものの、監督・脚本家・カメラマン部門も独立して設けられています。





監督部門は111名を収録。イロハ順だと池田義信、池田富保、伊藤大輔、稲垣浩の贅沢な見開きで始まります。惡麗之助など当時物の伝記データが極端に少ない監督にも紙数が割かれているのが凄いですね。脚本家部門には60名が登場しており女性が3名(林義子、内田菊子、水島あやめ)含まれています。カメラマン部門は66名。松田定次氏はまだこの時点では撮影技師にカテゴライズされており、若き圓谷英一氏も登場。









俳優部門の収録数は481名。1925年『世界のキネマスター』での邦画俳優総数が120名、1931年『芝居と映画 名流花形大寫眞帖』が180名であるのを考えると驚異的な数字だと思います。関操や新妻四郎、山本禮三郎など既存の名鑑から冷遇されてきた俳優をカバーしており、短期間しか映画界に在籍しなかった珍しい名前も多数見られます。サイトの方にも順次反映させていきますね。