明治30年(1897年)頃 古写真 イヴェット・ギルベール

Yvette Guilbert c1897 CDV by Reutlinger

自分が不細工で良かったと思っています。えぇさうです、私は醜うございますし、それを誇りに思っております。だって(巴里で皆さんが女性に言いたがるように)美人だから成功できたなんて誰も言えませんからね。私が成功したのは完全に私自身の力ですし、とても恵まれてきたのだと思います。どれほど恵まれていたか言葉にできない位です。

「イヴェット・ギルベール」 アーサー・シモンズ
ヴァニティー・フェアー誌 1915年12月号

I am glad I am ugly—oh, yes, I am ugly, and I am proud of it, for now no one can say (as they like to say in Paris about women) that I owe my success to my beauty. No, I owe it entirely to myself, and I have been very lucky. I can’t tell you how lucky I have been!

YVETTE GUILBERT / Arthur Symons
Vanity Fair, 1915 December Issue


さすがの一言。今、インタビューでこれだけ言い切れる人がどれだけいるでしょうね。

明治の中頃(1897年頃)に撮影されたキャビネット写真で歌手として最も人気のあった時期の一枚。台紙と写真上部にダメージがあり、汚れが目立つものの時間の経過を考えるとまずまずの部類。オルセー美術館に状態の良い一枚が収蔵されています。19世紀末~20世紀初頭の仏絵画に少なからぬ影響を与えた女性の位置づけで保管されているのかな、と。

本サイトでは今までに2度(ムルナウ『ファウスト』、トゥールヌール『嵐の孤児』)彼女の出演作9.5ミリ版を紹介してきました。脇役での出演ですがどちらの作品でも主人公以上の存在感を放っています。ムルナウ、トゥールヌール、(1924年『人でなしの女』で彼女を使った)レルビエはいずれも構図やコントラスト重視の絵作りが得意で、美に対する特殊な嗅覚を持っていた点も共通しています。そういった面々から重用されたのは決して「恵まれていた」からだけではなかったはず。おそらくジャン・ルノワール作品とも相性が良く(実際は出演せず)『十字路の夜』『獣人』『どん底』辺りの作品にチラリと登場する姿を見たかったです。

[Movie Walker]
イヴェット・ギルベール

[IMDb]
Yvette Guilbert