9.5ミリフィルム&パテベビー関連資料より
現在サイトのトップページには米パテックス(Pathex, Inc.)の社名が印刷された紙資料の画像が使われています。2012年12月、モトリクス動画カメラとフィルム6本を入手した際に同梱されていたもので、ニュージャージー州在住の個人撮影家がパテックス社現像部とやりとりをした際に受け取った以下の三種類で構成されています。
1)フィルムをやり取りする際に使用された元箱(切手つき)3箱




現像所とのやりとりは購入時の外箱をそのまま使用。箱には現像所の住所が印刷されており、撮影済みフィルムを戻して紐で留め、切手を貼って出せばそのまま現像に回されます。現像料はフィルム代金に含まれているため追加の支払いは発生しません。
現像が完了したフィルムは円形のケースに移され、箱に戻されます。撮影者の住所氏名をタイプ打ちした所定の用紙を貼り付け、切手を貼ったものが送り返されてくる。1930年代以降にも16ミリや8ミリフィルムの現像で使用されていたシステムです。
2)手書きのスプールナンバーが付された縦長の報告書


ラベルに鉛筆の手書き番号が振られているのは仏・独・日・英など他の国には見られない米パテックス社の独自文化でした。同じ番号が報告書にも振られていて露光不足、露出過多、手振れ、フィルムの穴のダメージなどを撮影者に伝える形になっています。
写真例の429番でいうと、「映像の周辺部に黒色の汚れ(Black Marks on Edge of Picture)」「フィルムの片端に黒線(Black Edge)」のチェックボックスにレ点が入っています。前者はカメラ内部のアパーチャー(開口窓)に埃などが引っかかって映像に写りこんでしまっている状態、後者はフィルムが左右のどちらかに寄った状態で撮影されている状態。撮影者はこういった情報を撮影環境にフィードバックしていくわけです。
裏面には動画カメラ(モトリクス)と米国タイプのモーターを備えたベビー映写機のイラストが印刷されていました。
3)映写機・撮影機関連アクセサリーの広告



付属品のチラシです。折り畳むとちょうどフィルムの外箱のサイズと一致。現像を行ったユーザーに宣伝を兼ねて折込チラシを同梱していたようです。フランスではベビーカラーとして市販されていたものがカラーディスク(定価1ドル)の名で扱われており、また露出計シノフォト(定価12ドル)の単独広告も見つかりました。
フィルムが残っていても外箱や報告書は早い段階で処分されてしまうんですよね。これだけ綺麗な状態でまとまっているのは珍しく、当時の運用の実態が伝わってくる面白い資料だと思われます。