大正後期~昭和初期 35ミリ齣フィルム215枚(米連続活劇、『十誡』、ロイド喜劇、高尾光子ほか)

齣フィルムより

2021年春、厚紙のフレームでまとめた齣フィルム70枚を入手。比較的枚数の多かった1915年公開の米連続活劇『赤環』(ルース・ローランド主演)を時系列に並べ紹介いたしました。

2年経過した今年になって、出所の同じ齣フィルムがもう一度市場に出たためまとめて取り寄せました。写真のように5枚一組になっているものが43セット(215枚)あります。前回入手分と併せると計285枚となり資料として十分な量が揃ったのではないかと思われます。

雑誌の裏表紙など適度な厚みのある紙に四角い穴を開け、フィルム断片を挟みこんで糊付けしています。フィルムの選び方はランダムで、上下もばらばらに留められていました。

当初、個人が手持ちの幻灯機の観賞用にコレクションしていたと思っていたのですが、今回見方が変わりました。映写済みの35フィルムを入手した業者が市販向けにまとめたものがデッドストックとして残っていたのだろう、と。フィルムの上下がばらばらなのは幻灯機での映写ではなく、購入者が光に翳しながら見て楽しむ使い方を念頭に置いていたと考えれば納得がいきます。

経年劣化もあり、枠に使用されている紙が湿気を吸って変形しているためそのままではスキャンが出来ない状態。前回同様、一回全て崩してスキャンを行い、同一作品と思われるものをグループ化していく予定です。ひとまず目視での確認では大体次のようなまとまりに分かれています。


(1)連続活劇『赤環』(The Red Circle、1915年、米バルボア社/パテ・エクスチェンジ社)

米連続活劇女王の一人、ルース・ローランドが初めて主演した連続物。最も枚数の多いグループで第11章「疑惑の種」の後半をカバーしています。


(2)連続活劇『隠された謎』(The Veiled Mystery、1920年、ヴァイタグラフ社)

(以前に仏語小説版を紹介した)1919-20年作品『見えざる手』が好評だったのを受けて製作されたアントニオ・モレノ&ポーリン・カーレイ主演活劇の第二弾。海を舞台にした場面でおそらく第3章「海魔」(The Sea Demon)の断片だと思われます。


(3)『若き日の夢』(Forget Me Not、1922年、米メトロ社)

ベッシー・ラブが孤児を演じたメロドラマでW・S・ヴァン・ダイク監督作品。前半の孤児院でのやりとり、後半音楽会での流れどちらも含まれています。


(4)『十誡』(The Ten Commandments、1923年、パラマウント)

2枚だけですがデミル監督の『十誡』が含まれていました。左がダタン役のローソン・バット、右がミリアム役のエステル・テイラー。


(5)『ロイドの初恋』(Hot Water、1924年、米パテ・エクスチェンジ社)

ロイド主演作が二つ含まれているのですが、ひとつは現時点でまだ特定できていません。判明したのが『ロイドの初恋』で、中盤、義母との食事場面を中心とした齣が含まれていました。


現時点で確定はこの5作、内最初の三つは遺失したとされています。

(6)未特定分・邦画

邦画もそれなりの割合で含まれているのですが今の段階ではまとまった形での特定はできていません。

高尾光子さんが登場している齣がありました。1922~23年頃の松竹作品だと思われます。

1928年公開の東亜作品『高山彦九郎』の「完」マーク。他にも同作からの断片のように見えるフィルムが何枚かあります。

こちらは時代劇で、小悪党風の二人が僧侶に因縁をつけ、所持金を奪おうとしている一連の流れになっています。

興味深い断片が幾つもありますがいずれも俳優名・作品名ともに不詳。グーグルレンズやAI検索で一発特定できれば良いのですがまだ力足らずでした。一旦全てをデジタル化してサイトに上げる予定で、スキャンしていく中で見えてくる情報があると思いますのでまた追って投稿していきます。