1930年代後半 – 米アンプロ社 プレシジョン NC型 16mmサイレント映写機

Ampro Precision 16mm Silent Projector
late 1930s US Ampro Precision Model NC 16mm Silent Projector

1930年代にシカゴ拠点のアンプロ社が発売していた16ミリ用の映写機。

1935年頃の初期モデルではランプハウスが円筒形でした。幾度かモデルチェンジを重ねていきK型でランプハウスが四角くなります。この時点では側面のモーターベルトが剥き出しとなっていたのですが、金属製のカバーを付け、明り取りの小さなランプも標準装備したのがNC型でした。

到着時のコンディションは悪かったです。ゴムと革を張りあわせたモーターベルトが中で腐って貼りついていたので取り除き、予備用ベルトと交換。またレンズ部分が幅広の溝をスライドするような設計だったのが、歪みが発生していて動きませんでした。固定用の金具を外し、歪んだ部分をわずかにヤスリで削って油を差すとスムーズに動くようになりました。

先ほど試写をしてみました。『チャップリンのスケート』(The Rink、1916年)のローラースケート場面を抜粋した仏コダック版の16mmプリントです。

[発売年]
1930年代後半

[メーカー名]
米アンプロ社

[ランプ]
DDB-DDW(750W 120V P28)

[レンズ]
Simpson Lens 2″ E.F. F: 1.65

[シリアルナンバー]
NC-18151

9.5mm 成人向け動画『踊り子の楽屋』 (Loge d’une danseuse) トリブレ社

La Loge d’une danseuse (film clandestin des années 1920/30, Films Triboulet)

仏トリブレ社製作による成人向け動画。正規に発売されたものではなく戦前に違法流通していたフィルムです。

内容は二本の短いシークエンスを繋げた形になっています。前半は黒髪の踊り子が楽屋で着替えをしている様子。フアンと思しき男性が花束を手に楽屋を訪れる場面が挿入されています。

後半は舞台上での二人の女性の動きを捉えています。黒髪の女性はギリシャの女流詩人ビリティスになぞらえられ、もう一人の女性が崇拝者という設定。崇拝者が花を贈るとそれを手に嬉しそうな様子のビリティス、「お礼に」の字幕があり、二人が熱く抱擁する場面で幕を閉じます。

神話趣味やディテール(室内装飾、アクセサリー)へのこだわりが同社の他作品と共通しており一目でトリブレ社だと分かる仕上がりでした。

1926年4月18日 – 9.5mm『イラン・ゴレスタンの小さな家』

A Golestan. La petite Villa. 18-4-26. (A Rare 1920s Iranian Family Portrait)

9.5mm Home Movie  - A Golestan (Iran) 1926

1926年に中東イランで撮影されたホームムービー。

A Golestan (Iran 1926) 9.5mm home Movie 01

一軒家の2〜3階テラスと思われる場所に家族が集合した様子を記録しています。冒頭では男性二人が話していて中央の椅子に少年が座っています。続いて家の主と思しき男性が飼い犬を抱えていて一歩体をずらすと背後に立つ女性(娘さんでしょうか)の姿が現れました。

A Golestan (Iran 1926) 9.5mm home Movie 02

登場する人物は次第に増えていき、いつの間にやら大所帯に。

A Golestan (Iran 1926) 9.5mm home Movie 03

ここでカメラの位置が変わります。男性たちが家を出たようで、残った女性陣が飼い犬とじゃれている場面。奥では奥さんがハンカチを振って遠くの男性たちに挨拶を送っています。フィルムはここで終了。

google-map-golestan-20181103

ゴレスタンはイラン北東部、カスピ海に面した州名です。モロッコやアルジェリアで撮影された9.5mmホームムービーは時折市場で目にしますが、中近東での撮影記録は非常に珍しいものです。

カメラの移動が少なく周囲の様子が分からないのが少々残念。それでも建物や服装が西欧化され洗練されている様子が伝わってきます。言われないとイスラム圏だと気付かないくらい。カメラを意識して動きがぎこちなくなっている様子も微笑ましく、興味深い内容です。

1914 – 8mm パール・ホワイト主演 『ポーリンの危難:第2章 西の果ての女神』

Standard 8 Pearl White in Goddess of the Far West
(1914, US Blackhawk Print)

パール・ホワイトの出世作となった名作活劇『ポーリンの危難』の第2章。ポーリンが相続した遺産を狙う悪党たちがアメリカン・ネイティヴを買収、誘拐を試みていきます。後半部には「崖を駆け降りながら巨石に追いかけられるヒロイン」の場面を含んでいます。

パール自身の中〜後期活劇と比べると全体の流れが意識されておらず章ごとの独立が高いのが特徴でしょうか。物語の整合性があやふやであったり、ご都合主義に驚く場面もありますが、辻褄を深く考えず各章の見せ場、アクションを追及していたと言うこともできます。

ブラックホーク社からの8ミリ版はコントラストがきつめで古風な質感。DVD版と比べると解像度に限界はありますが、見直していると新しい発見が出てきます。

[タイトル]
Perils of Pauline, Chapter 2 : Goddess of the Far West

[製作年]
1914年

[IMDB]
tt0004465

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810431407

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート×3 (実質1000フィート)

1913 – 8mm パール・ホワイト主演 『夜に彷徨ふ女(ロスト・イン・ザ・ナイト)』 (米ブラックホーク社)

Standard 8 Pearl White in Lost in The Night
(1913, US Blackhawk Print)

サイレント時代に活躍した活劇俳優(ウィリアム・ダンカン、エディー・ポロ、ヘレン・ホームズ、ルース・ローランド…)たちは最初から連続活劇スターを目指していた訳ではなく、キャリア初期の試行錯誤の末に流れついた者がほとんどでした。パール・ホワイトも同様で、1910~13年の間に様々な役柄で1~2リール物の短編劇に出演しています。

このうち米ブラックホーク社が2作を8ミリで販売していました。1913年作品の『夜に彷徨ふ女』がその一つです。

パール・ホワイトは夢遊病を患った婦人役で登場。貴金属盗難をめぐるミステリと家族ドラマのどっちつかずになってしまい、当時の基準から見ても並以下の出来映えなのですが、パール・ホワイトのキャラクター作りの変遷を見ていく上で興味深い作品です。

もう一作の『紙人形(The Paper Doll)』が面白いという話も小耳に挟みました。どちらともデジタルソフト化されていませんので機会があったら8ミリで入手したいと思っています。

[タイトル]
Lost in The Night

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003083

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-417

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

1923 – 16mm パール・ホワイト主演 『プランダー』 断片(ジョン・ハンプトン・コレクションより)

16mm – Pearl White in Plunder (1923)
lower contrast 2nd negative preview
from the John Hampton Collection

1910年代に一世を風靡したパール・ホワイトでしたが、連続活劇の女王の立ち位置に複雑な思いがあったようです。パテ社との契約を終えた後パラマウント社のドラマ作品に出演を開始。しかし思うように運びませんでした。低迷する人気を前に活劇への復帰を決断、旧知のジョージ・B・サイツを監督に『プランダー』を完成させました。同作は1923年に公開され女王の帰還は好意的に受け入れられます。残念ながら撮影中にスタントマンが事故死する不幸もあり、本作を最後にパールは連続活劇を離れています。

全15章仕立て。完全版はUCLAに保存されているものの全編がソフト化されたことはなく、複数のメーカーが断片をデジタル化するのみにとどまっています。

今回入手した16ミリはリーダー部分に「John E. Hampton」の名前が記されています。

ジョン・ハンプトン氏は1942年に「オールドタイム・ムービー・シアター」を立ち上げた人物で、その無声映画コレクションは個人レベルとして当時最大級のものでした。1988年にUCLAが保存プロジェクトを発案、ハンプトン氏も売却に合意します。この時に基金を立ち上げ資金提供したのがヒューレット・パッカード社のデビッド・パッカード氏だそうです。現在UCLAに保存されている完全版『プランダー』はジョン・ハンプトン氏からデビッド・パッカード氏経由で所有権を移したプリントです。

リーダーには「低コントラスト版の第2ネガより Made from negative #II (lower contrast – second made negative)」の手書き文字。オリジナルのプリントから16ミリの複製を作成する際、条件を変えてコントラストの異なる版が作られ、その際に発生したプレビュー用の断章と推定されます。

[参照]
英ガーディアン紙によるオールド・タイム・ムービー・シアターの紹介
https://www.theguardian.com/film/2000/sep/08/culture.features2
UCLA委託によるジョン・ハンプトン・コレクション目録作成についてブログ記事
http://docsrused.blogspot.com/2013/07/john-hampton-and-silent-movie-theater.html
デビッド・パッカード基金の保存フィルム一覧
https://www.packhum.org/preserved.html

[『プランダー』断章を含むDVD]
2006: Pearl White, Queen of the Serials (Grapevine Video) 数分のプレビュー動画
2008: The Lost Serial Collection (Serial Squadron)

[タイトル]
Plunder

[製作年]
1923年

[IMDB]
tt0014365

[メーカー]
非売品(保存作業時に発生したプレビュー用の第2プリント)

[フォーマット]
16mm (ダブルパーフォレーション) 無声 400フィート

1920年代後半 – 9.5mm 『ペナンヒル・ケーブルカー登頂』 戦前・アジア旅行記 1/7(マレーシア編)

1397


Penang And Up The Peak (Malaysia late 1920s)
US Tourists in South and South East Asia 01

5年ほど以前に入手した7本組のフィルムからで、1920年代後半に東南~南アジアを訪れた米国人旅行者が記録した動画です。現在マレーシアの一部となっているペナン島周辺を撮影しています。

冒頭に宗教建築物の遺構が映し出され、手前に立っている旅行者の姿が見えます。次いで川下りとなり、ボートを操舵している男の後ろ姿。跳ねる水に迫力があります。

その後、ペナンヒルを登っていくケーブルカーが登場。上りと下り列車がすれ違う個所だけ複線になっています。現在は高速ケーブルカーとして人気を呼んでいますがその開通は1923年。初期の車両を捉えたものと思われます。

ケーブルカーから山麓を見下ろし、ペナンヒル周辺で働いている地元民を捉えた後に動画は船上視点に切り替わり、海岸に密集する集落、船を追走してくるボートを映し出していきます。