西條香代子、昭和3年の暑中見舞い

Saijo Kayoko 1928 Summer Greeting Card
Saijo Kayoko 1928 Summer Greeting Card

私は此の人の、あく事なき魂に理智に輝いた眸の色に視入る時、恋の霊魂と化したあの静御前の姿が忍ばれてならない。

「佳人佳語」
(美町淑夫『うづまさ』1927年9月号)

最後の出演作となった『坂本龍馬』(昭和3年5月公開)の後に送られた暑中見舞い葉書。表裏で質の違う特殊な紙を使っていて、宛名面「郵便はがき」が手書きとなっています。

同年初頭の年賀状では「病」について触れています。髙島氏が病後を尋ねたのではないかと思われ、それに対して「早速お訊ねを頂きまして恐縮し存じ上げました。私恙なく過して居ります」と返事している内容です。

昭和元年〜2年にかけて人気が出てきたところで1926年8月『キネマ』誌の人気投票中間報告でも25位(女優では11位)になっていました。

Saijo Kayoko 1928 Summer Greeting Card 01Saijo Kayoko 1928 Summer Greeting Card 02

[サイズ]
8.9 × 14.0cm

[データ]
髙島栄一氏宛、昭和3年8月18日東淀川の消印有。

西條香代子 (1906 – ?)

Saijo Kayoko Autographed Postcard
Saijo Kayoko Autographed Postcard

明治三十九年一月一日極めてお芽出度い元旦の初日の出と共に神奈川縣の鶴見で孤々の聲を揚げた。中村香代子が本名で、當年二十三才。高等女學校卒業後大正十四年五月に日活に入社する。玉麗花のかんばせ、眞紅の唇、瀟洒たるスタイルは常に幾百萬のフアンをチャームしてゐる。主演『闇の中の顔』『日輪』『死の寶庫』『大陸の彼方』で好評を得。現に同社の花形女優。

『玉麗佳集』(1928年)

[JMDB]
p0218730
p0218760

[IMDB]
nm0756503

[出身]
日本(神奈川県横浜市)

[生年月日]
1月1日

[サイズ]
8.4 × 13.4cm

エルンスト・マトレイ Ernst Matráy (1891 – 1978) ハンガリー

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Ernst Matray 1920 Autographed Postcard

ハンガリー出身の舞踏家、俳優、監督兼振付師。

1910年代初頭にマックス・ラインハルトに才能を見いだされ舞台デビュー。ラインハルト劇団で話題を呼んだ『奇跡』(マリア・カルミ主演、1911年)に出演し、ダンスパートの振付も担当しました。

Ernst Matray in Hilde Warren und der Tod (1917)
1917年作品『ヒルデ・ワーレンと死神』(ヨーエ・マイ作品、脚本フリッツ・ラング)

映画では牧神、道化師、悪魔など異形の役どころが多く回ってきていたようです。フリッツ・ラングが脚本を書いた『ヒルデ・ワーレンと死神』では放蕩の生活を続け、最後母親に銃で撃ち殺されるろくでなしの息子を演じていました。

俳優時代のルビッチとも共演歴があり、短期間ながらも共同で映画会社を設立、両者の名前からMalu映画社と名付け経営を行っています。同時期に監督業にも進出し1916年に『オペラ座の怪人』を残しました。フィルム自体は現存していないものの、この小説の最初の映像化で初期ホラー愛好家が見たがっている作品の一つです。

トーキーの時代となり、1930年代にハリウッドに渡ってから新たなキャリアが開けてきます。当時の妻だった女優マリア・ソルヴェクと振付師のチームを組み、MGMなど大手作品のダンス場面を担当したのです。

Waterloo Bridge (1940)
『哀愁』(1940年)のバレエ場面

日本でもよく知られた『哀愁』(1940年)や『心の旅路』(1942年)の舞踏場面はマトレイ夫婦が振付したものでした。メロドラマ作品に一瞬現れるダンスやバレエを意識する機会はあまりないため、こんな形で無声映画の血流が続いていくのかと驚かされました。

絵葉書の写真は『吸血鬼ノスフェラトゥ』と重なります。サインの年号(1920年)を見ると同作公開より前になっています。

[IMDB]
nm0559305

[Movie Walker]
Ernst Matray

[誕生日]
5月27日

[出身]
ハンガリー(ブダペスト)

[サイズ]
9.0 × 14.0cm

[データ]
Photochemie, Berlin. K.2289. Phot. Nicola Perscheid, ,Berlin

クレール・ロットー Claire Lotto (1893 – 1952) 独

Claire Lotto Autographed Postcard
Claire Lotto Autographed Postcard

名優カール・デ・フォグト(Carl de Vogt)の奥さんでもあった女優で、1920年代前半~中盤のサインと思われます。

20年代前半のドイツで人気を得て幾つかの作品は日本でも公開されていました。芸歴は意外と長く1910年代中頃からすでに活躍。下積み時代にハンガリー映画に多く出演しており、マイケル・カーティス(ケルテース・ミハーイ)の初期短編の常連でもありました。

Claire Lotto in Az utolsó hajnal
Claire Lotto in Az utolsó hajnal (1917, Kertész Mihály)

1917年作品『最後の暁』マイケル・カーティス作品

カーティス初期作は現存しているものが多く、何かの機会に観ることがあればクレールさんがひょいと登場している可能性もありえます。

[異表記]
Cläre Lotto, Kläry Lotto

[IMDB]
nm0521556

[Movie Walker]
クレール・ロットー (Claire Lotto)

[誕生日]
9月23日

[出身]
ドイツ(ポメラニア)

[サイズ]
9.1 × 14.0cm

[データ]
Verlag Herm. Leiser, Berlin Wilm. 3833 Westi

リリアン・ハーヴェイ Lilian Harvey (1906 – 1968) 独

Lilian Harvey Autographed Postcard
Lilian Harvey Late 1920s Autographed Postcard

日本でも人気の高い『会議は踊る (1931年)』『ガソリン・ボーイ三人組(1930年)』などの初期ドイツ製オペレッタで主演を務めた女優さん。キャリアのピークが30年代初頭ですのでサイレント映画女優というより初期トーキーのスターの呼び方がしっくりきます。

今回入手したのは1920年代後半のサイン絵葉書。髪型、まつ毛の作りかた、眉の描き方が30年代と違っています。サインの書き方も後年に比べ字がやや大きく筆跡もダイナミック。

30年代中盤以降、ナチス政権下で不遇をかこちキャリア後期に失速を見せました。それでもヴィリー・フリッチらとの共演で見せた眩さは褪せる気がしません。

1931-Der Kongreß tanzt
『会議は踊る』でのリリアン・ハーヴェイ

[IMDB]
nm0367613

[Movie Walker]
リリアン・ハーヴェイ(Lilian Harvey)

[誕生日]
1月19日

[出身]
イギリス(ロンドン)

[サイズ]
9.0 × 14.0cm

[データ]
Verlag Herm. Leiser, Berlin Wilm. 6007 Phot.Rembrandt

山田 五十鈴 (1917 – 2012)

Yamada Isuzu Autographed Postcard
Yamada Isuzu Autographed Postcard

 

そうです遠い昔、ウズマサ撮影所の所長室に、まことに顔だちのよい下町風な姿で可愛いい女の子が大人に連れられて当時の池永浩久所長に挨拶しています。所長は大変ご機嫌で、明るい笑声が窓の外まで流れています。これが山田五十鈴さんの若き日の入社第一日です。

『髪と女優』(伊奈もと著、1961年、151頁)

サイレント映画云々で語るより昭和を代表する大女優の一人と呼ぶのがしっくりきます。

デビュー時はまだ無声で、娘役を演じた30年代作品(『マリアのお雪』)も数点現存しています。地力を蓄えて本領を発揮したのは戦後でした。一般の評価は高くないかもしれませんが独立プロ作品『女ひとり大地を行く』(1953年)のアンナ・マニヤーニ直系の演技も素敵でした。

[IMDB]
nm0945222

[JMDB]
p0147410

[出身]
日本(大阪)

[誕生日]
2月5日

[サイズ]
8.6 × 13.6 cm

[コンディション]

カローラ・テーレ (Carola Toelle 1892 – 1958) 独

Carola Toelle Autographed Postcard

フリッツ・ラング監督初期作のひとつ『彼女をめぐる四人』(Vier um die Frau、1921年)で主演を務めたのがこちらのカローラ・テーレです。

第一次大戦終戦前後にドイツで数多デビューしてきた女優の一人で、当時はヘラ・モヤと並んで知名度が高かったようです。デビュー間もない時期の主演作『Das Lied der Colombine』でのリュートを手に歌う場面が印象的で、今回入手したサイン絵葉書はその場面をモチーフにしています。

本作のヒロインを演じているカローラ・テーレは品があって愛らしく、演技にも共感できる。

Carola Toelle, die hier die Hauptrolle inne hat, ist eine anmutige, liebreizende Erscheinung, deren Spiel sympathisch berührt.(Neue Kino-Rundschau vom 17. Oktober 1918. S. 59)

Carola Toelle in Das Lied der Colombine (1918)
『Das Lied der Colombine』(1918年)より
Carola Toelle in Vier um die Frau (1921, Fritz Lang)
『彼女をめぐる四人』より

[IMDB]
nm0865438

[Movie Walker]
カローラ・テーレ(Carola Toelle)

[誕生日]
4月2日

[出身]
ドイツ(ベルリン)

[サイズ]
8.6 × 13.4cm

[データ]
Verlag Herm. Leiser, Berlin Wilm. 5661 Phot. Deutsche Bioscop Ges.