1920 – 連続活劇『虎の足跡』 (ルース・ローランド主演、1919年)ロマン・シネマ叢書・仏語版

亡き父の旧友でもある鉱山王ゴルドンを訪ね、ボストンに向かっていたベル・ボイド嬢は汽車で親切な青年ランデルと知り合いになつた。話を聞くとその鉱山王の下で働いている技師とのことであつた。

道中二人が仲良く話しているその時、件の鉱山王は秘かな策略を張りめぐらせていた。ゴルドンとベルの父親、そしてもう一人の友人の3人がかつてインドで交わし、3つに割いてそれぞれに持ち帰った「契約書」を集め直そうとしていたのである。自宅に招待したベル嬢を息子と結婚させて懐柔しようとしたが、嬢は何としても首を縦には降らなかつた。

このやりとりを物陰で聴いていたのは女中ヒルダであつた。女はゴルドン家を離れると鉱山労働者たちの集う一角へ向かつた。外国人労働者が大半を占める中、一人白人の男がいた。彼こそがかつてゴルドン、ベルの父親と共に契約を交わした「虎の面」であった。男はヒルダとその仲間に命じてベル嬢の拉致を試みる。危難に陥った嬢を救おうとするのは青年ランデルただ一人であつた…

1910年代後半~20年代初頭のルース・ローランドは米パテ社連続活劇の稼ぎ頭としてパール・ホワイトに肉薄する勢いを見せていました。『覆面の呪』『幽霊騎手』『虎の足跡』『ルスの冒険』『森林女王』など多くの作品が日本でも公開されています。しかしその出演作はほとんどが断片でしか現存しておらず、映画祭などで上映される機会も少ないため評価されにくくなっているのが現状です。

『虎の足跡』のフランス語小説版はスチル写真を多く採録。蒸気機関車を絡めた追跡場面、谷間に張ったロープでスルスルと移動していく場面など活劇の「お約束」がきちんと守られているのが分かります。作品中盤では悪漢が丸太で扉を破っているシャイニング風の展開もありますね。

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大手パテ社が配給を手掛け大々的に宣伝していただけあってセットや衣装もしっかりしています。猪俣勝人氏『世界映画名作全史 戦前編』では「名金」、「鉄の爪」と「虎の足跡」の3作が活劇枠で紹介されていましたが、日本の愛好家にも良い印象を残した作品だったようです。

Serial Squadronが公開している現存フィルム断片

[タイトル]
Le Tigre sacré

[出版年]
1920年

[出版者]
ルネサンス・ドュ・リーヴル

[叢書]
ロマン・シネマ

[ページ数]
240頁

[サイズ]
16.5 x 24.5 cm

[原題]
The Tiger’s Trail (1919)

[製作]
アストラ映画社

[配給]
パテ社

大正9年 (1920年) アントニオ・モレノ&ポーリン・カーリー主演『見えざる手』 仏語小説版

1919-20 The Invisible Hand (Vitagraph) French Novelisation Cover

1919年末から20年に公開された15章仕立ての連続活劇。日本でも1921年に『見えざる手』として公開されており、法令館キネマ文庫からは日本語小説版が発売されていました。

美形男優として人気のあったアントニオ・モレノ、フェアバンクスや早川雪洲との共演で注目を浴びつつあったポーリーン・カーリーをダブル主演に迎え入れるなどヴァイタグラフが力を入れて製作していた様子が伝わってきます。20年秋に二人を再度主演に据えた『隠された謎(The Veiled Mystery)』が公開されたのを見ると観衆の反応も悪くなかったようです。

内容は連続活劇王道をいくもので「鉄の爪」と呼ばれる悪党団を相手にした丁々発止のやりとりが描かれていきます。敏腕刑事(アントニオ・モレノ)が一味の捕縛を試みる中、その捜査を助けるため女性探偵アン(ポーリン・カーリー)が凶賊の内部に忍びこんでいきます。ダブル主演の利を生かして二人の連携や危機を描き分ける形で単調になりがちな活劇パターンに新味を与えようとしています。

1919-20 The Invisible Hand (Vitagraph) French Novelisation

ハリウッド連続活劇では「予想もつかない場所からニュッと手が伸びてきて主人公を襲う」パターンが好んで使われます。ルース・ローランド主演の『タイガーズ・トレイル』(The Tiger’s Trail、1919年)が有名(YouTube)なのですが『見えざる手』はこの方向性を押し進めた要素を含んでいます。

大正5年 (1916年) パール・ホワイト主演『陸軍のパール』&エラ・ホール主演『マスター・キイ』仏語小説版

「パール・ホワイト関連 [Pearl White Related Items]」より

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1916年末に公開された連続活劇『陸軍のパール』の仏語小説版。1914年公開『マスター・キイ』と2in1の形で出版されたものです。10冊発売された冊子を合本にしたハードカバー特装版。

パール・ホワイトの連続活劇の流れは1914年『ポーリンの危難』に始まり、同年末から15年の『拳骨』、16年『鉄の爪』、17年『運命の指輪』、18年『家の呪い』へと続いていきます。本作品『陸軍のパール』は『鉄の爪』と『運命の指輪』の間に位置、公開時はかなり話題を呼んだようで、フランスだけではなく日本でも法令館キネマ文庫から小説版(1921年)が出ていました。

肝心のフィルムの大半は遺失したとされており全体像を知ることはできなくなっています。ヒロインが潜水服をまとっているスチル写真が有名であるにも関わらずどのような文脈で登場してくるのか分からない謎多き作品。


連休中に『拳骨』を読んでいる最中でこちらまで目を通している時間はなさそうなのですが、写真やキャプションを追っていったところ:

・前半は『拳骨』と同様に謎の悪党一味(静かなる脅威団 ”Silent Menace”)が登場してヒロインを危地に陥れる
・中盤以降は軍隊との連携が強調されていく
・各章での派手な立ち回りで盛り上げるのではなく大団円に向けた息の長いストーリー感がある
・潜水服姿のパールは最後の決戦の場面で登場
・全体的に愛国主義色が強い

…という特徴は伝わってきました。最後の愛国主義色はアイリーン・カッスル主演の『パトリア』(1917年)と繋がってくる感じでもあります。
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以前から何度か紹介している『ゾーズ・オウフル・レビュー』は第10章のネガを見つけたようで英語で長いレビューを書いています。またアーカイブ・フィルムの名手ビル・モリスン監督によるドキュメンタリー映画『ドーソン・シティー:凍結された時間』で描かれていた「アラスカ国境近くで土の中から発見された大量の35ミリフィルム」に『陸軍のパール』の35ミリ版が含まれているそうです。
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[出版年]
1916年

[出版者]
ロマン・シネマ社(パリ)

[翻案]
マルセル・アラン

[ページ数]
240頁(陸軍のパール) + 288頁(マスター・キイ)

[サイズ]
16.5 x 23.5 cm

大正6年 (1917年) 仏連続活劇『ジュデックス』小説版

「ルイ・フイヤード関連コレクション」より

1917 Judex (Arthur Bernède & Louis Feuillade)
1917 Judex (Arthur Bernède & Louis Feuillade)

第一次大戦中の1917年に公開されて人気を博した連続活劇『ジュデックス』の小説版。

映画の各エピソード公開と同時進行で小冊子として売られていたもので、映画の完結後にハードカバー版が作られていました。こちらはそのハードカバー版で全12章、288頁あります。

同作は先行する『レ・ヴァンピール(Les Vampires)』の成功を受け、ほぼ同一キャストで作られた活劇でした。『レ・ヴァンピール』が活劇の伝統を受け継ぎ、一話一話の完結性が高く、目まぐるしいアクションを繰り出していく手法を採用していたのに対し、『ジュデックス』はより静かな復讐譚の形式を取っています。

物語はかつて冷酷な銀行家(ルイ・ルーバ)に騙されて父親を失ってしまった兄弟(ルネ・クレステとエドゥアール・マテ)による復讐物語として始まります。クレステ演じる義士「ジュデックス」は銀行家を単純に成敗はせず、とことんまで苦しめようと城の一角に軟禁。しかし銀行家の娘ジャクリーヌ(イヴェット・アンドレヨール)への恋愛感情が芽生えてくる中で自分の行為に疑問を抱くようになり始めました。一方銀行家の資産を狙い暗躍する一派(ミュジドラ)がジュデックスとジャクリーヌ双方を狙い始め、物語は南仏での死闘へなだれこんでいきます。

仏ゴーモン社にとっても大きな企画だったようで、小説版は当時人気の高かった大衆作家アルチュール・ベルネード(『ルーヴルの怪人』原作者)に依頼、けだし名文家ではないものの、こなれた筆致で映画世界を小説に落としこんでいきます。

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[出版年]
1917年

[出版者]
ルネサンス・ドュ・リーヴル

[ページ数]
288頁

[サイズ]
16.5 x 24.5 cm