1913 – スタンダード8 『老いらくの戀(An Old Man’s Love Story)』(米ヴァイタグラフ社、ノーマ・タルマッジ主演)

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1913 - An Old Man's Love (Vitagraph) starring Norma Talmadge

マーシャム夫婦には見栄っ張りなところがあり、身の丈にあわない生活を続けているうちにいつしか家計は火の車となっていた。夫婦にとつての一縷の望みは美しく成長した一人娘エスター(ノーマ・タルマッジ)で、金持ちの男と結婚してさえくれれば…と食事中にも口にする始末であつた。

旧友である富裕な老人グレイソーン氏を招いたのはエスターとの結婚話を今度こそ決めてしまうためであつた。エスターには以前から心を決めた若者フランクがいたのであるが、両親を悲しませる訳にもいかず、心に悲しみを秘めながら老人の求婚を受け入れたのであつた。

フランクと会う事は普段から諫められていたため、若き二人の通信手段は木の幹をポスト代わりに使った手紙が全てであつた。エスターが婚約の件を手紙で伝えると、「君を失うのであれば僕はもう町を出る」の返信。絶望に打ちひしがれたエスターが木の幹にもたれかかって泣いているのを偶然見つけたのがグレイソーン氏であつた。若者たちの置かれた状況を理解したグレイソーンは一世一代の芝居を売ってみせるのであった…

タルマッジ姉妹の長女ノーマの初期主演作8ミリ版。家族の軋轢から生み出されてくるメロドラマになっています。途中でオチが読める単純な物語ながら役者が持ち役をカッチリ演じきっているため思った以上に心地よい作品となっていました。ノーマのお姫様ぶりも堂に入ったもので、ヴァイタグラフ社でアニタ・スチュワートと並ぶ花形だったのもうなずけます。

確認できた限り、以下の3つの形でデジタル版が市販されています。
『ノーマ・タルマッジ ヴァイタグラフ短編集』(グレープヴァイン社) Norma Talmadge Vitagraph Shorts
『俳優:ノーマ・タルマッジ希少作品集 第一巻』 The Actors: Rare Films Of Norma Talmadge Vol. 1
・米ハーポデオン社は自社サイトおよびアマゾン・プライム・ビデオでデジタル版を市販・公開中

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ハーポデオン社で公開されている市販動画のスキャン。

ハーポデオン社も8ミリベースでスキャンしているようです。

[公開年]
1913年

[IMDB]
An Old Man’s Love Story

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-34-819

[フォーマット]
Standard 8mm 200フィート (60m)

1912 – スタンダード8 『セージブラシュ峡谷の女神(The Goddess of Sagebrush Gulch )』(米バイオグラフ社、D・W・グリフィス監督、ブランシュ・スウィート主演)

「8ミリ 劇映画」より

炭鉱の町、セージブラシュの谷に住まううら若き娘ガートルード(ブランシュ・スウィート)は町一番の別嬪として知られていた。ある日、娘が毒蛇に襲われたところをピート青年(チャールズ・ウェスト)が間一髪で助け出した。戀に落ちた二人、だが幸福な時間は長く続かなかった。ガートルードの妹(ドロシー・バーナード)が都会から戻ってきた時、ピート青年は洗練された美しさに心奪われてしまったのである。二人の仲睦まじい様子を見たガートルードは身を引いて峡谷を離れる決心をした。荷物をまとめたガートルードが谷を抜ける道を歩いていると、街の荒くれ者たちがひそひそと相談している声が聞こえてきた。ガートルードの妹が隠し持つた大金を奪い去ろうと画策している最中であった。自分の幸せを奪った二人が不幸になる様を想像しガートルードはほくそ笑んだ。それでもふと我に返る、二人の命が危ない。荷物を放り出した娘は駆け戻り人々に助けを求めるのであった…

D・W・グリフィス監督初期作品の一つながら現在DVDで発売されているグリフィス短編集(キノ・インターナショナル社の『バイオグラフ短編集(Griffith Masterworks: Biograph Shorts)』、映画保存協会の『発見の日々(Griffith: Years of Discovery 1908-1914)』、グレープヴァイン社の『監督グリフィス(D.W. Griffith: Director)』シリーズ)いずれにも収められていない作品。

前半は西部を舞台にした恋愛ロマンスが進んでいき、途中から話が劇的に動いて銃撃戦や火事場の救出劇へと流れていきます。転換点となるのがヒロインの表情の変化で、「ざまあみろ」風に笑っていたブランシュ・スウィートの顔がふと怯えを見せ現実に引き戻された場面をきっかけに作品が一気に変質していきます。

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初期グリフィスの緊張感の保ち方、心理劇とアクション劇の連動のさせ方は同時期でも頭一つ抜けており、本作の様なマイナーな作品でもその実力は発揮されています。遥か昔、学生時代に映画館で短編をまとめて見た時から「グリフィスの最良・最強の時期は1912-14年である」と確信していて『セージブラシュ峡谷』でもその思いを強くしました。

[公開年]
1912年

[IMDB]
The Goddess of Sagebrush Gulch

[Movie Walker]

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-34-819

[フォーマット]
Standard 8mm 200フィート (60m)

1912 – スタンダード8 『若き女電信技手の勇猛(The Grit of the Girl Telegrapher)』(米カレム社、アンナ・Q・ニルソン主演)

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『カレム・カレンダー(Kalem Kalender)』1912年8月号、14-15ページ

電信技手ベチーの許婚は汽車専属の警官で、街の外からの呼び出しを受け、ベチーに手錠を託してその場を去った。程なくしてベチーが受け取った伝言には、列車内のスリとして悪名高い「煙巻きのスミス」を探し出せ、と事細かな描写が添えられていた。駅に現れたスミスは見破られないだらうと高をくくり、近くの宿に部屋を取つた。

ベチーはこの男こそ電報のスミスに違いないと確信し、手錠をポケットに忍びこませ宿屋へと向かった。呑気な泥棒は他の若い宿泊客と鬼ごつこに興じている最中であつた。ベチーがこれ幸いとスミスに手錠をかけると男は忽ちにしてその本性を現して一帯を混乱に陥れた。しかしベチーはこれを制して男を駅に閉じこめるに成功した。

何とか逃げ出したスミスは蒸気機関車に乗りこみ、速度を上げさせて駅を出立せしめた。しかしながらベチーは泥棒が高跳びしたのに気がつくともう一台の機関車に飛び乗り、機関士に先の車両を追うよう説得したのであつた。派手な追跡劇の後に泥棒は捕縛された。男を連行した機関車が駅に戻ると、婚約者が降りてきてスミスを引き受け、若き電信技手の勇猛を称えたのであつた。

『カレム・カレンダー(Kalem Kalender)』1912年8月号、14-15ページ

BETTY’S fiance, a railroad detective, is called out of town on private business and leaves his handcuffs in the care of the girl telegrapher. Shortly after the detective’s departure Betty receives a message to be on the lookout for Smoke-Up Smith, a notorious thief — a full description being given. Smith appears at the station, feeling assured that he will not be recognized and engages quarters at a nearby boarding house.

Betty, fully convinced that Smith is the person described in the message, slips the handcuffs into her pocket and goes over to the boarding house, where the happy-go-lucky thief is playing “blind man’s buff » with the young boarders. This gives Betty an opportunity to slip the irons on Smith and he immediately shows his true identity by the disturbance he causes, ere he is imprisoned in the station.

Smith manages to escape and, entering a locomotive, speeds down the track and out of the yards. Betty, however, discovers the flight of the thief and hastens to another engine, prevailing upon the engineer to steam up and follow in pursuit. A thrilling chase takes place and the criminal is captured. As the locomotive returns with the prisoner, the detective steps off a train and taking charge of “Smoke-Up,’’ congratulates the young operator on her bravery.

蒸気機関車を大きく扱い、駅構内に勤める女性を主人公としたアクションドラマ、という非常にピンポイントな短編映画がハリウッドでは1911年頃から盛んに作られるようになりました。その嚆矢となったのがグリフィスの『女の叫び』(The Lonedale Operator、バイオグラフ社、1911年)で、この流れはすぐにハリウッド史上最長の連続活劇『ヘレンの冒険』(The Hazards of Helen、カレム社、1914年)へと繋がっていきます。

この両作品を結び付けていくのが1912年のカレム社作品『若き女電信技手の勇猛』でした。主演は北欧系の若手女優として頭角を現していたアンナ・Q・ニルセン。ルース・ローランドやヘレン・ホームズ他のカレム社活劇女王と比べて背が高くスラリとした存在感があり、ワンピース姿で拳銃を手に悪漢を追いつめていく展開はかなりの迫力がありました。

ストーリーは訳出した通りですが、編集のテンポが良く文字で読む以上にスピーディー。ヒロインが電信を受け取る場面を長回しで寄って撮っていたり、二台の蒸気機関車の追跡では連結器の結合を丁寧に描くなど作りが丁寧です。

カレム社はこの時期に同系統の作品(『1862年鉄道急襲事件秘話(The Railroad Raiders of ’62)』『時との闘い(A Race with Time)』)を幾つか作っており、ここで蓄積されたノウハウが『ヘレンの冒険』を生み出していきました。米連続活劇が好きなら見ておいて損のない作品だと思います。

フィルムは英レスター在住のB・V・ベイツ氏の旧蔵品。オイミッヒの400フィートリールにグリフィス初期短編(「The Narrow Road」)と一緒にマウントされていたものです。クレジットは取り除かれていましたが米ブラックホーク社プリントだと思います。

[タイトル]
The Grit of the Girl Telegrapher

[公開年]
1912年

[IMDB]
tt0229427

[メーカー]
米ブラックホーク社?

[メーカー記号]
810-653?

[フォーマット]
Standard 8mm 200フィート (60m)

1912 – ノーマル8 『コレッティを探せ』(1912年、マックス・マック監督)

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1912年に公開されたドタバタ喜劇。「探偵コレッティを48時間以内に捕まえることができたら100万マルク進呈!」の広告に人々が踊らされていく様子をコミカルに描いていきます。定番の追跡から女装まで様々な要素をコンパクトに詰めこみ、ベルリン市街地での撮影で都市風景をうまく取りこんでいます。

ヒロイン役で登場しているのは英女優のマッジ・レッシング。1900~10年代の綺麗目ポストカードも多く残っている女優さんながら、本作ではかなりはっちゃけた感じでドタバタを楽しんでいます。また途中に初期の個性派俳優として知られるハインリヒ・ピール(Heinrich Peer)も登場しています。

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女装中のマックス・マック(左)とマッジ・レッシング(右)
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ハインリヒ・ピール(右)

[原題]
Wo ist Coletti?

[製作年]
1912年

[IMDB]
tt0003565

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
222

[フォーマット]
ノーマル/スタンダード8 60m(無声)

米リヴェア社「エイト88型」 ダブル8 動画カメラ + Elgeet-Revere 1/2 f:2.5 & Kent Telephoto 1 1/2 f:3.5

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「ダブル8」と呼ばれる16ミリフィルムを使用した形式の8ミリ動画カメラ。16ミリ用スプールを使うためやや幅広ながら手のひらにしっくり収まるサイズ感。使われている部品の質も良く当時のシカゴ産業界の好調振りが伝わってきます。


この機種をめぐる経緯については「メイド・イン・シカゴ博物館」で詳しく説明されています

この記事では、戦中に頭角を現していた新興メーカー・リヴェア社が1940年、業界トップのベル&ハウエル社の定番カメラ「フィルモ・コンパニオン」に勝負をしかけた一台とされています。スペックや精度の点でコンパニオンに劣っていたのですが、リヴェア社は値段を32.5ドルに設定(コンパニオンは50ドルほど)することで価格競争に打って出たのです。

スペックやブランド名重視の層が一定数いるのを承知の上で、そこまでこだわらないコスパ重視の層を切り崩していく戦略となります。一定の成果を上げたようで同機はリヴェア社のロングセラー商品の一つとなりました。

レンズについてはウォーレンサック社の12.5mm f=3.5(高級機はf=2.5や1.9)が標準仕様だったようです。戦後となりニューヨーク拠点エルジート社のレンズも採用し、今回入手した一台も同社のレンズを備えています。
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革鞄のポケットにもう一本レンズが入っていました。「Japan」の刻印が入った「Kent Telephoto 1 1/2」でした。このレンズはほとんど情報がなく、オンラインでも二人の方が言及されている(一人はデジカメによる作例あり)のみでした。古い日本製のターレット型8ミリカメラでたまに見かける「Sun Telephoto 1 1/2 f:1.9」と同様、廉価な国産Dマウントシネレンズの一つではないかと推察されます。

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1913 – スタンダード8 パール・ホワイト初期短編集(クリスタル社/ブラックホーク版)

「パール・ホワイト関連 [Pearl White Related Items]」
& 「8ミリ 劇映画」より

8mm Pearl White Crystal Shorts
Standard8 Pearl White 3 Crystal Shorts

以前にパール・ホワイトが「連続活劇の女王」として人気を博す以前の初期短編を二作紹介いたしました。ホワイト初期作品の8ミリ化については英語情報もほとんどなく二作のみと思っていたため、先日別作品がイーベイに出てきて驚きました。折角の機会ですのでデータをまとめてみます。

1912年10月 -『仕立屋請求書始末記』Her Dressmaker’s Bills
1913年3月 -『或る夜の街』A Night in Town
1913年5月 -『女探偵パール』Pearl As A Detective
1913年7月 –『紙人形(ペーパー・ドール)』 The Paper Doll
1913年7月 -『ホールルーム・ガール』The Hallroom Girls
1913年9月 -『夜に彷徨ふ女(ロスト・イン・ザ・ナイト)』 Lost in The Night
1914年1月 -『リング』 The Ring

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確認できた限りで以上7作(全作未DVD/ブルーレイ化)。制作はクリスタル社。監督はいずれもフィリップス・スモーリーで共演男優はチェスター・バーネット。今回入手したのは『或る夜の街』『女探偵パール』『ホールルーム・ガール』の三本を400フィートリールにまとめた一本。

『或る夜の街』A Night in Town

パール・ホワイトは裕福な家に使える小間使い役を演じています。夫婦が旅行で家を空けると、パールと執事はこの時とばかり勝手にクローゼットを開け高価な服をまとい、パーティーを始めます。そこに家主が不在と知らない親戚の男性がやってきてしまい、執事は慌ててパールを「旦那様の奥さん」と紹介してその場を乗り切ろうとします。ところが男性がパールに一目ぼれしてしまい…

『女探偵パール』Pearl As A Detective

パール・ホワイトは興信所の女探偵として登場。夫が机に置き忘れていた手紙から浮気を疑った妻(グレース・ダーリング)が興信所に調査を依頼。担当に指名されたのはパールでした。夫に接近し、会話を重ねる中で二人は意気投合してしまい、抱擁している場面を妻に見咎められてしまいます…

『ホールルーム・ガール』The Hallroom Girls

ルームメイトである仲良し女子二人組と、その二人と交際中のこれまたルームメイトの男子二人組。ところが彼氏の親友、彼女の親友に手を出し始めたことで関係が怪しくなり女性陣は取っ組みあいの大喧嘩に。警官まで巻きこんで男性二人が逮捕されてしまうのです…

概要から伺えるように3作とも軽めの恋愛喜劇です。

演出、脚本に新味はなく、本作を見た人の「がっかりした」評価も順当ではあります。ただし1913年の作品としては及第点、むしろ当時は質に無頓着なこの手の量産コメディが「普通」で、女優パール・ホワイトがそういった賑やかな現場で活躍し鍛え上げられていった(そして後に黒歴史としてなかったことにされる)雰囲気は伝わってきます。個人的には『女探偵パール』でのスーツ姿、『ホールルーム・ガール』の室内装飾や衣装、屋外撮影の空気感が気に入りました。

ホワイトのクリスタル期作品についてはオンラインで唯一「Those Awful Reviews」が分析しています。アニタ・スチュワート主演の傑作『呪の列車』35ミリ版を自力で発掘、デジタル化・リストアしている人物の手によるもので作品の良し悪しを的確に見極めています。

1913 – スタンダード8 パール・ホワイト主演 『紙人形(ペーパー・ドール)』

「パール・ホワイト連続活劇 [Pearl White Serials]」
& 「8ミリ 劇映画」より

1913 Pearl White in Paper Doll
Pearl White in The Paper Doll (1913) Standard 8 Blackhawk Print

『ポーリンの危難』公開の前年、1913年のパール・ホワイトはクリスタル映画社と契約を結んでいて、この年だけでも百作を超える短編に出演する人気を見せていました。

観衆から暖かく受け入れられているのは劇場に顔を出す度に響き渡る万雷の歓声からも伺える。ホワイト嬢を「我らがパール」と呼ぶのが多くの者の習わしとなっていた。

ヴィックスバーグ・イヴニング・ポスト紙
1913年5月10日付

The warm place she holds in the estimation of the public is forcibly illustrated in the applauses accorded to her personnal appearance in any theater. « Our Pearl » has become the popular characterization of Miss White.

Vicksburg Evening Post
May 10, 1913

クリスタル社作品で現存が確認されており、8ミリで市販されていた一本が『紙人形』でした。不幸な偶然の重なりで恋人に殺人の嫌疑をかけられてしまった女性主人公アリス(パール・ホワイト)が間一髪でその疑いを晴らす内容です。

冒頭はグラスハウスでの撮影で、登場人物が一通り紹介されると屋外撮影に切り替わりピクニックとなります。思惑のすれ違いから彼氏のクレメンツ(チェスター・バーネット)とアリスに想いを寄せるレイナー(ジョゼフ・ベルモント)との諍いが生じ、カップルは喧嘩別れしてしまいます。

その後レイナーは拳銃の暴発事故で亡くなってしまうのですが、直前にクレメンツがレイナー宅を訪れていた様子が目撃されていました。動機もあり、状況証拠も揃っていることからクレメンツが殺人犯として逮捕されてしまうのです。事件を知ったヒロインが悲しみに暮れていると幼い妹がやってきます。さて二人が如何にして無罪を証明していくか…が見どころとなっています。

物語のメリハリや伏線が上手く機能しており、1911~13年頃の脚本術や演出術の高い水準を伺わせる好編となっています。

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1910年代前半の映画流儀にならい、『紙人形』の大半は膝上ショット(ミディアム・フル・ショット)で撮影されています。手紙等を見せる場面では手元の接写が使われたりするのですが、本作では拳銃に寄った場面が含まれていました。単調な流れに視覚的アクセントが生まれてくる訳で、こういった経験が蓄積されていく中で数年後に表情や事物のクローズアップ法とそのヴァリエーションが確立されていくことになります。

[タイトル]
The Paper Doll

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003252

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-424

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

1914 – 8mm パール・ホワイト主演 『ポーリンの危難:第2章 西の果ての女神』

「パール・ホワイト連続活劇 [Pearl White Serials]」
& 「8ミリ 劇映画」より

Standard 8 Pearl White in Goddess of the Far West
(1914, US Blackhawk Print)

パール・ホワイトの出世作となった名作活劇『ポーリンの危難』の第2章。ポーリンが相続した遺産を狙う悪党たちがアメリカン・ネイティヴを買収、誘拐を試みていきます。後半部には「崖を駆け降りながら巨石に追いかけられるヒロイン」の場面を含んでいます。

パール自身の中〜後期活劇と比べると全体の流れが意識されておらず章ごとの独立が高いのが特徴でしょうか。物語の整合性があやふやであったり、ご都合主義に驚く場面もありますが、辻褄を深く考えず各章の見せ場、アクションを追及していたと言うこともできます。

ブラックホーク社からの8ミリ版はコントラストがきつめで古風な質感。DVD版と比べると解像度に限界はありますが、見直していると新しい発見が出てきます。

[タイトル]
Perils of Pauline, Chapter 2 : Goddess of the Far West

[製作年]
1914年

[IMDB]
tt0004465

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810431407

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート×3 (実質1000フィート)

1913 – 8mm パール・ホワイト主演 『夜に彷徨ふ女(ロスト・イン・ザ・ナイト)』 (米ブラックホーク社)

「パール・ホワイト連続活劇 [Pearl White Serials]」
& 「8ミリ 劇映画」より

Standard 8 Pearl White in Lost in The Night
(1913, US Blackhawk Print)

サイレント時代に活躍した活劇俳優(ウィリアム・ダンカン、エディー・ポロ、ヘレン・ホームズ、ルース・ローランド…)たちは最初から連続活劇スターを目指していた訳ではなく、キャリア初期の試行錯誤の末に流れついた者がほとんどでした。パール・ホワイトも同様で、1910~13年の間に様々な役柄で1~2リール物の短編劇に出演しています。

このうち米ブラックホーク社が2作を8ミリで販売していました。1913年作品の『夜に彷徨ふ女』がその一つです。

パール・ホワイトは夢遊病を患った婦人役で登場。貴金属盗難をめぐるミステリと家族ドラマのどっちつかずになってしまい、当時の基準から見ても並以下の出来映えなのですが、パール・ホワイトのキャラクター作りの変遷を見ていく上で興味深い作品です。

もう一作の『紙人形(The Paper Doll)』が面白いという話も小耳に挟みました。どちらともデジタルソフト化されていませんので機会があったら8ミリで入手したいと思っています。

[タイトル]
Lost in The Night

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003083

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-417

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

エルモ社 躍進號 16mm-8mm両用 サイレント映写機(1930年代後半)

「映写機」より

1930年代半ばに発売されたエルモ社による一台で、さくらスコープ(小西六)と並び戦前の日本を代表する映写機。2007年に公開された邦画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の映写場面でも登場しています。

躍進號の特徴はアーム/レンズ部からなる独立パーツを取り替えることで複数のフィルム形式(16mm/9.5mm/8mm)に対応できる点です。ドイツのニッツオ社や仏エルクサム社が採用していた方式ですが、交換用のパーツが実際にセットになっている躍進號は今回初めて見ました。

エルモ社はこの映写機のため実用新案を10以上取得しており、他の映写機にはない仕掛けやデザインが多く見られます。

本体シリアルナンバー: Y.51481
対応フィルム: 16mm/Single 8
対応電圧:90~110v
製造国:日本
製造時期: 1930年半ば
レンズ:エルモ プロジェクション・レンズ
ランプ:100W

1913 – standard 8『プラーグの大学生』(1913年)

「8ミリ 劇映画」より

自身の分身(ドッペルゲンガー)に遭遇し破滅していく大学生を描いたもので、初期ドイツ映画の秀作として有名な一作。

主役の大学生を演じるのは後に『ゴーレム』で地位を確立する名優パウル・ウェゲナー。同氏の奥さんで助演にも名を連ねているリディア・サルモノワは以前にサイン物を紹介させていただいております。

日本ではVHSで見ることができましたがその後デジタル版が発売されていないのが残念なところです。

[タイトル]
Der Student aus Prag

[原題]
Der Student von Prag

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003419

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
223

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第4巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

「テロ事件」と題された第4巻では、第2巻に登場してきた御曹司ハルが再登場してきます。マブゼは情婦の踊り子カーラをハルに接近させますが、そこから逆に足が付きカーラが逮捕されます。

敵の包囲網を感じ取ったマブゼ一味はハルとカーラの殺害を図り、さらには検事たちが集まっている警察への爆破を仕掛けていきます。

本来はこの次に完結編の第5巻があるのですがこちらは入手できなかったため今回の上映はこれまで。物語のポイントを上手く押さえ、作品の骨格にある連続活劇のリズム感を強調した素晴らしい編集でした。

[タイトル]
Dr. Mabuse: Das Attentat

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
231

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第3巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

この第3巻からマブゼ博士の宿敵フォン・ヴェンク検事が新キャラクターとして登場。

ヴェンクは富裕な老人になりすまし悪党団がたむろする賭博場へ足を運びます。催眠術を使ったマブゼを現行犯逮捕しようとしますが、悪党一味は辛くも脱出、ヴェンクは返り討ちにあい危うく命を落としかけます。

タクシーに仕掛けられた催眠ガス装置やナンバープレート交換など、人目を欺くギミックが司法と悪漢とのし烈なやりとりを彩っていきます。

[タイトル]
Dr. Mabuse: Gejagt vom Staatsanwalt

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
230

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第2巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

『ドクトル・マブゼ』第2巻はマブゼ博士の特殊能力である「催眠術」に焦点を当てた内容です。

前半では観劇中に目を付けた富豪の青年に催眠術をかけ、ポーカーで有り金をむしりとっていきます。後半はターゲットを変え、伯爵夫妻をカジノで破産させ、妻を我が物にしようと画策していきます。

どちらのエピソードも短いながらも起承転結がはっきりしており、初期のラングが意識していた連続活劇的な早い物語展開を生み出していきます。

[タイトル]
Dr. Mabuse: I. Macht der Hypnose, II. Die Entführung

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
229

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第1巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

『ドクトル・マブゼ』は大正11年(1922年)に公開されたフリッツ・ラング初期の長編映画です。悪漢マブゼ博士の一大絵巻は評判を呼び続編も幾度か作られました。

こちらは1950年代後半~60年代に市販されていた8ミリ版。元々は4時間以上ある大部な作品のエッセンスを5巻(計1時間強)に分けた短縮版となります。

第1巻は「株式取引所」と題されています。

冒頭では客車内での機密書類強奪事件が描き出され、後半は同事件に連動した株価格の上下動を利用してマブゼ博士が一儲けを企てていきます。

[タイトル]
Dr. Mabuse: Unternehmen Börse

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
228

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1917 – Standard8『二重十字の秘密 第8章』

巨額の遺産の謎を追い、ブリジェイ一味の悪行を暴こうとしているピーター。新聞記者のディックの協力を得て悪党一味の拠点へと侵入するが見つかって小部屋へと閉じこめられてしまう。覆面男の手を借りて魔手を逃れ、金庫の書類を狙ったブリジェイを阻止しようと向かうのだが逆に返り討ちにあい、警察に捕まって留置されてしまう…

15話物の半ばまで差し掛かり、登場人物も一通りそろう形で物語は佳境へと進んでいきます。

[原題] The Mystery of the Double Cross Ch. 8 : Stranger Disposes

[製作年]
1917

[IMDB]
tt0008355

[メーカー]
Blackhawk

[フォーマット]
standard8

1917- standard8『二重十字の秘密 第5章』

「8ミリ 劇映画」より

第5章は「生の流れ」と名付けられています。

相続の謎を握る「二重十字の娘」がフィリッパ(モリー・キング)だと信じたピーターとブリジェイは女性にアプローチを始めます。どちらに好意を寄せているのか分からず、場面によって正反対の態度・発言を見せる謎めいたフィリッパ。もう一人そっくりさんの女性が出てきそうな展開です。

後半は悪党一味によって捕らえられたピーターが覆面の男によって助けられます。病院へと運ばれたピーターと手術を妨害しようとする悪党たち。奸計をいかに阻止するか。

エピソードの冒頭ではブリジェイ一味に協力する黒髪の女性が新たに登場。クレジットがありませんが、1920年に若くして亡くなった女優クラリン・シーモアさんではなかろうかと思われます。

[原題] The Mystery of the Double Cross Ch. 5 : Life Current

[製作年]
1917

[IMDB]
tt0008355

[メーカー]
Blackhawk

[フォーマット]
standard8

1917- standard8『二重十字の秘密 第3章』

「8ミリ 劇映画」より

1917年に公開されたモリー・キング主演の連続活劇。

遺産相続のため故郷に戻ろうとしていた青年ピーター・ヘイル(レオン・バリー)が客船で謎の女性(モリー・キング)と出会い、その魅力に惹かれながら遺産を巡る悪党一味の暗躍に撒きこまれていく物語です。

本作は全エピソードが現存している数少ないハリウッド連続活劇のひとつ。今回は全15章のうち3章分を手に入れることができました。

第3章は『余命は一時間(An Hour to Live)』と題されています。悪漢に拐かされたピーターが体を固定され、時限装置付きの拳銃で頭部を狙われます。覆面男の活躍で一命を取りとめるまでが大きな流れで、サイドストーリーで遺言状や「二重十字の娘」の謎が解き明かされていきます。

[原題] The Mystery of the Double Cross Ch. 3 : An Hour to Live

[製作年]
1917年

[IMDB]
tt0008355

[メーカー]
Blackhawk

[フォーマット]
standard8

米ベル&ハウエル社 フィルモ リージェント 122L型 8mm映写機

本体シリアルナンバー : 643600
対応電圧:100~120v
対応フィルム:シングル/レギュラー8
製造: アメリカ合衆国
ランプ:DAR 120V 500W
コンセント:日本/合衆国タイプ

1930年代後半に発表されたシングル/ノーマル/レギュラー8用の映写機(122L型)。2014年12月5日に購入。