スーパー8 『邦画名作抄 美人女優列伝 トーキー時代・スター誕生』

« Legend of The Shochiku Beauties, Chapter 2 : Talkie… Stars Are Born »
1970s Super8 Anthology


1) 戸田家の兄妹(1941年、小津安二郎) 桑野通子、高峰三枝子、三宅邦子、坪内美子ほか [JMDb]


2)信子 (1940年、清水宏) 高峰三枝子、三浦光子、飯田蝶子ほか[JMDb]


3)木石 (1940年、五所平之助) 木暮実千代、赤木蘭子ほか [JMDb]


4)隣りの八重ちゃん (1934年、島津保次郎) 逢初夢子、高杉早苗、岡田嘉子ほか [JMDb]


5)暖流 (1939年、吉村公三郎) 水戸光子、高峰三枝子 [JMDb]

松竹映画史を女優視点で振り返っていくスーパー8版アンソロジーの第二篇。

冒頭を飾るのは小津作品『戸田家の兄妹』。妖婦や悪女役など翳りの多い役柄が多かった桑野通子さん新境地が評価されたものです。続いて高峰三枝子さんが女学校の女性教師を演じた『信子』。しばしば女性版『坊ちゃん』と呼ばれますが、多感な女生徒たちと教師・信子の関係には数年前に日本で公開された『制服の処女』の影響を見て取ることもできます。

ベテラン看護婦(赤木蘭子)とその娘襟子(木暮実千代)の物語を描いた『木石』。母娘二人のコントラスを効かせながら、襟子の出生の謎が次第に解き明かされていきます。8ミリ版ナレーションでは時局を踏まえ、戦前期松竹の最後を飾るメロドラマの位置付けをされていました。

一旦1930年代前半に戻って『隣りの八重ちゃん』に移ります。撮影や脚本、配役に無声期の雰囲気が強く残っている感じ。八重の友人役で瑞々しい存在感を見せた高杉早苗さんが高く評価されていました。

トーキー篇のトリを務めるのは『日本映画史・前編』でも紹介されていた『暖流』。喫茶店での抜粋も含まれています。男一人、女二人の三角関係を軸に進んで行く物語で当時は映画フアンがぎん派(水戸光子)と啓子派(高峰三枝子)に分かれていたエピソードも紹介されていました。

[発売時期]
1970年代

[発売元/製作/提供]
テレキャスジャパン/大沢商会/松竹

[フォーマット]
スーパー8 白黒200フィート(24コマ/秒) 光学録音・テープ付き

スーパー8 『邦画名作抄 美人女優列伝 サイレント時代・草分けの美女たち』

« Legend of The Shochiku Beauties, Chapter 1 : Pioneers from The Silent Era »
1970s Super8 Anthology


1) 伊豆の踊子(1933年、五所平之助監督) 田中絹代、若水絹子ほか [JMDb]


2)松竹スタジオ紹介他


3)不壊の白珠(1929年、清水宏監督) 及川道子、八雲恵美子ほか [JMDb]


4)与太者と海水浴(1933年、野村浩将監督) 井上雪子、光川京子、高峰秀子ほか [JMDb]


5)夜ごとの夢(1933年、成瀬巳喜男監督) 栗島すみ子、飯田蝶子ほか [JMDb]


6)金色夜叉(1937年、清水宏監督) 川崎弘子 [JMDb]

2018年初頭に入手したスーパー8版アンソロジー。トーキー篇の紹介にあわせてこちらもスキャンしました(前回は映写した画面をそのまま撮影)。

田中絹代さん主演の『伊豆の踊子』で始まり、松竹スタジオの外観などを挟みながら井上雪子さん主演の『与太者と海水浴』へ。浅瀬に着衣のまま飛びこんでしまう大胆な展開に。

名作『不壊の白珠』を挟んで『夜ごとの夢』。栗島すみ子さんキャリア後期の作品で子供に頬をつけて泣いている時の表情が圧倒的。最後に『金色夜叉』での寛一お宮のやりとりが紹介されています。どの女優さんも雰囲気ありますね。

[発売時期]
1970年代

[発売元/製作/提供]
テレキャスジャパン/大沢商会/松竹

[フォーマット]
スーパー8 白黒200フィート 磁器録音(24コマ/秒)

1957 – Super8 『松竹8mmライブラリー 日本映画史 前編』(Japanese Cinema History Part I, super8)

c1970 Super8 日本映画史 前編

« Japanese Cinema History : Part I 1887-1949 » (1957, Shochiku Ofuna, dir/Iwaki Kimio)
c1970 Sungraph Super8 Print

1957年に公開された松竹制作による短編ドキュメンタリー。同社が制作した戦前作品を中心とし、活動寫眞の到来から戦後までの映画史の展開を貴重な映像でまとめ上げた一作。

8ミリ版は1960年代末~70年代初頭に発売されたと思われ、前後編の2巻構成。前編は19世紀末の映画前史から終戦後の1949年までを扱っています。2年前の購入時に一度紹介しているのですが画質が悪く、今回綺乃九五式で再度スキャンし直しました。


1887年 『疾走中の馬の連続写真』 エドワード・マイブリッジ

Sallie Gardner at a Gallop [imdb]

まずは明治時代まで遡り「動く写真」の発明としてエジソンの功績と並びマイブリッジ作品が紹介されていきます。


1899年 『紅葉狩』 柴田常吉監督

Momijigari [imdb] [jmdb]

現存する最古の日本映画として知られた『紅葉狩』。九代目市川団十郎、五代目尾上菊五郎出演。現在は国立映画アーカイヴの「映像で見る明治の日本」の動画紹介ページで閲覧が可能です。


1900年 『鳩の浮巣』土屋常二撮影

Nio No Ukisu imdbjmdb

『明治二十八年の両國大相撲』(別名『回向院夏場所大相撲』)でも知られる土屋常二(ジョージ)氏が残したもう一本の映像作品。初代中村鴈治郎出演。


1911-12年 『白瀬中尉の南極探検』 記録映画 田泉保直撮影

Japanese Expedition to Antarctica imdbjmdb

明治末期に行われた白瀬矗注意による南極探検の実録もの。JMDbでは『南極実景』として登録されている一篇で、こちらも「映像で見る明治の日本」で高画質なバージョンを閲覧できます。


1911年 『ジゴマ』ヴィクトラン・ジャッセ監督

Zigomar imdb

日本で大規模な社会現象を引き起こした仏エクレール社の悪漢活劇。ジゴマの百面相を描いた紹介場面と物語途中の抜粋が収録されています。


製作年不明 『自雷也』尾上松之介主演

Jiraiya (Unidentified Version)

松之助十八番。自雷也が妖術を使う場面ながら松之助版自雷也のどれに当たるのか未特定。明治42年ではなくもう少し後年の作品と思われます。


1913年 『アントニィとクレオパトラ』 エンリコ・ガッツォーニ監督

Marcantonio e Cleopatra imdb

絢爛たる古代ローマ世界を描き出し日本でも大きな話題を呼んだ一作。8ミリ版では弁士・玉井旭洋の語りが付されていました。


1913年 『天馬』ハリー・ピール監督

Die Millionenmine imdb

第一次大戦開戦直前に輸入され、国内でのドイツ冒険活劇流行のきっかけとなった一作。ブラウン探偵(ルートヴィヒ・トラウトマン)が囚われの美女(ヘッダ・ヴェルノン)を救い出す場面で弁士・泉天嶺の語りが付されています。


1915年 『後のカチューシャ』細山喜代松監督

Nochi no Katyusha imdbjmdb

向島に新設されたばかりの初期ガラススタジオで撮影された初期日活現代劇。出演は立花貞二郎と関根達発ほか。国立映画アーカイヴやマツダ映画社にも所蔵記録のない作品で、断片を見れたのは感動でした。


1921年 『路上の霊魂』村田実監督

Souls on the Road (Rojô no reikion) imdbjmdb

日本の映画制作が新しい段階に入った様子を告げるモダンな現代劇。国外からの評価が高いことでも知られる一作です。


1921年 『虞美人草』小谷ヘンリー監督

Gubijinsô imdbjmdb

歸山教正氏と並び国産映画の近代化に功あった小谷ヘンリー監督の代表作。グリフィスの影響が濃く、戦闘場面での流動的な表現など日本映画になかった新しい試みを持ちこんでいます。


1923年 『船頭小唄』池田義信監督

Sendô kouta imdbjmdb

帝キネの『籠の鳥』と並ぶ小唄映画ブームの先駆け作品。栗島すみ子の健気で可憐なイメージ戦略をさらに一歩推し進めたものでもあります。


1923年 『関東大震災』記録映画

The Great Kantō earthquake

被災直後、瓦礫の山と化した街並みや、炊き出しに並ぶ被災者たちの姿などを生々しく記録した巨大災害の記録。首都圏を襲った未曽有の災害は初期日本映画の展開にも少なからぬ影響を与えました。


1931年 『マダムと女房』五所平之助監督

Madame and Wife imdbjmdb

斉藤達雄と田中絹代のかけあいが楽しい初期トーキー。


1938年 『愛染かつら』野村浩将監督

The Tree of Love imdbjmdb

看護婦として働くシングルマザーと医学者との悲恋を描いた戦前を代表する和製メロドラマ秀作。


1939年 『暖流』吉村公三郎監督

Warm Current imdbjmdb

高峰三枝子、水戸光子、佐分利信の入り組んだ人間模様を背景に描かれる、硬質な叙情性を帯びた恋愛ドラマ。


1943年 『花咲く港』 木下恵介監督

Port of Flowers imdbjmdb

九州の離島を訪れたペテン師二人組の行く末を軽妙に描いた木下恵介監督デビュー作。


1945年 『そよかぜ』 佐々木康監督

Soyokaze imdbjmdb

「リンゴの唄」の朗らかな響きと共に終戦直後の人々に希望を与える一作となりました。


1949年 『悲しき口笛』家城巳代治監督

Sad Whistling imdbjmdb

笠木シズ子をアップデートする形で日本歌謡を刷新した不世出の歌姫の映画デビュー作。10代前半でこの貫禄はさすが。


1949年 『晩春』 小津安二郎

Late Spring imdbjmdb

20世紀前半の(松竹版)日本映画史は小津の形式美と情緒によって完成された…とまとめたくなる編集です。


白黒110メートル(約18分)
光学録音
サングラフ/松竹

1915 – Super8 『呪の列車』(米ヴァイタグラフ社、ラルフ・インス監督) 英ペリーズ版

The Juggernaut (Vitagraph, 1915, dir/Ralph W. Ince)
1960-1970s UK Perry’s Films Ltd. Super8 Print


「おや」、工具を手にした点検技師は、木橋までやつて來たところで足をとめた。前回の点検では気づかなかつたが、ひどく朽ちた線路の枕木が今にも崩れ落ちさうである。「これは大変だ」、技師は踵を返して足早に報告へと向かう。

同時刻、一台の車が道端に停まつた。「お嬢様、申し訳ございません、タイヤがパンクしたようです」「いやねえ、こんな急ぎの時に…」「あちらの方向に駅がありますので」鉄道会社の令嬢ルイーズは父に頼まれた書類を届けようとしていた。運転手の言葉に從い木造の駅舎に向かう。「車が故障したので13時半の列車に乗りました」父宛に電報を一通したため、停車場に出るとちやうど機関車が着いたところであつた。

ルイーズの父親で、鉄道会社を経営しているフイリツプの手元に二通の電報が届いた。一通は娘からの連絡で二通目は線路異常の報告。「…おや?」、社長室の壁に貼つてあつた路線図に目を向ける。13時半の列車が向かう先には…枕木の崩れかけた橋が!「大変だ」、フイリツプは列車を停めるよう指示を出し、車へと飛び乗るのであつた。

危地に陥つた娘の身を案じフイリツプは車を急がせる、しかし列車は轟音とともに眼前を通り過ぎていつた。「かくなるうえは…」、湖を高速ボートで横断して先回りしようとする。白煙を上げ死へ突進していく呪ひの列車、はてさて、ルイーズ嬢と乗客たちの命運や如何に。

1915年のヴァイタグラフ社作品『呪の列車』は8ミリ文化が成熟した戦後に一度再発見されています。米ブラックホーク社版のスーパー8版と同時期に英国で市販されていたのがこちら。最終リールを編集した内容で物語のクライマックスとなる列車の転覆場面が含まれています。

タイトルや字幕はオリジナル版をそのまま使用。8ミリなのでさすがに細かな陰影は潰れてしまっています。16ミリベースのハーポディオン社新デジタル版と見比べると歴然ですね。それでも米ブラックホーク社の8ミリ版と比較するとクリアな画質でした。

『呪の列車』はヒロインが死地に追いこまれていくカタストロフ物でそこにメロドラマ要素を絡みあわせています。最終リールにそのエッセエンスが凝縮されているためこの場面だけでもある程度作品を理解することができます。

一方本作には親子二代に渡る因縁の物語が含まれていました。元々は1890年代と1910年代の出来事を前半後半でクロスさせた物語。両親の意向により相思相愛の男女が一旦は引き裂かれ、ヒロイン(アニタ・スチュワート)は望まずに鉄道会社社長の妻となり、娘を産んだ直後に若くして病死。20年経って母親と瓜二つに育った娘ルイーズ(アニタ・スチュワート二役)がかつての母親の恋人(アール・ウィリアムズ)と出会うことで運命の輪が再度開かれていく…という展開を取ります。

鉄道会社社長は自分の立身と幸福の為なら親友を裏切ることも厭わない人物として描かれていて、その強欲とエゴイズムが「呪ひ」を生み出し、最愛の妻の忘れ形見ルイーズの破滅をもたらしていく。1910年代の映画脚本としては最もギリシャ悲劇に近い構成になっていて、それを演者やスタッフが高い完成度で仕上げたからこその名作になっています。

本物の列車を湖に沈めて話題になった作品ではありますが、物語的な背景や必然性まで意識してみるとまた違った見方・評価ができるのではないかと思われます。

1915 – Super8 『呪の列車』(ヴァイタグラフ社、ラルフ・インス監督) 米ブラックホーク版

The Juggernaut (Vitagraph, 1915, dir/Ralph W. Ince)
Late 1960s US Blackhawk Super8 Print

こちらでは主にフィルムの話をしていきます。

初公開から5年経った1920年、ヴァイタグラフ社の旧作古典を振り返る企画がありその際に『呪の列車』が再上映されています(その際に本来5リール物だったのが4リールに編集し直されています)。確認できている限り一般向けに上映されたのはこれが最後となりました。1920年代には小型フィルムが普及し始めるもこの時期の米コダック社16ミリフィルムカタログに『呪の列車』の名はありませんでした。

状況が変わったのが第二次戦後、8ミリフィルムの文化が成熟してからでした。1960年代末、米ブラックホーク社を運営していたデヴィッド・シェパード(David Shepard)氏が本作の最終リールを8ミリ化し市場に投入、半世紀ぶりに本作を見ることができるようになりました。

このブラックホーク版は画質が悪いとされています。今回購入する際にその話は知っていて、確認のために綺乃九五式でスキャンをかけてみました(スキャン条件は同一)。その結果がこちら。左が米ブラックホーク版、右が英ペリーズ版です。

ブラックホーク版はコントラストが低く画面が暗くなっています。映写機で映すとさらに解像度が落ちるので目を細めても見えないレベル。批判は当たっているように見えます。

しかしよく見てみると英ペリーズ版はコントラストを無理に上げているため細部が潰れてしまっています。元ネガにあったグラデーションを残しているのはブラックホーク版でした。デジカメやスマホでの写真撮影もそうですが白飛びさせてしまうとその部分のデータが消えてしまうのに対し、暗い画像には陰影のデータが残っているので光量調整で何とかなる、の話と同じです。明るい光源(1500w位)と良いレンズで上映するならブラックホーク版の方が綺麗に映る可能性もあります。

箱にはフィルムだけではなく購入時(1975年11月28日)に発生した注文書コピー、発送記録の控え、72セント相当のブラックホーク社クーポン券が残されていました。

1917 – スーパー 8 『チャップリンの勇敢』(大沢商会/東宝/東和版、1970年代中頃)

« Easy Street » (1970s Super8 Ôsawa Shokai version, based on Towa B Negative)

チャップリン短編の8ミリ版は幾種類かあり、中でも大沢商会から発売されていたこのシリーズは比較的よく知られています。

元々は東和株式会社(現・東宝東和)の創業45周年を記念した「ビバ!チャップリン」という企画の一環で発売されたものです。東和商事合資会社としての創業は1928年にさかのぼりますのでフィルムの発売は1973年頃となるようです。「ビバ!チャップリン」は第一弾に『冒険』『拳闘』『移民』『勇敢』『消防夫』の5作を発売、その後ジャケットを変えて第二弾の『誘拐船』『大番頭』『活動屋』の3作が発表されています。

今回はその中から『勇敢(Easy Street)』の紹介です。ミューチャル社から公開された1917年作品で、チャップリンとヒロイン役のエドナ・パービアンス、悪漢役のエリック・キャンベルの絶妙なバランス感覚を楽しめる一作。

プリントは輸出用ネガ(Bネガ)ベース。戦後の比較的新しいプリントのため傷なども少なく、劣化も見られない良いコンディションでした。サンプル画像はHQカメラに差し替えた綺乃九五式でスキャンしたものです。

現在フリッカーアレイから発売されているブルーレイ盤ストリーミング版の最新修復バージョンは基本Aネガを元にしています。AネガとBネガのアングルの違いを幾つか確認しておきます。

「オルガンを弾くエドナ」の場面で見てみるとAネガは右側のカメラから撮られており、座ってうたた寝している男性がエドナに隠れるアングルになっています。一方のBネガは左側のカメラから撮られていて、男性の姿がエドナの背後に見える角度になっています。

また同じBネガ由来でも東和版とパテ版を比べると、前者は左端をやや大きくトリミングしてエドナを中央に配している(結果として左端の女性が半分で見切れている)のに対して、パテ版は左端の女性が切れないよう右端を広めにトリミングしていて、その代りエドナが中央を外れて右に寄った構図になっています。

「チャップリンのバストショット」「エリック・キャンベルとの乱闘場面」も同様でAネガは右側のカメラで、Bネガは左側に置かれたカメラで撮影されています。キャンベルの背中にチャップリンが飛び乗る後者の場面は良く知られていますが、被写体と背景の位置関係がAネガとBネガで微かに違っており別カメラだと分かるのです。

唯一の例外は「エリック・キャンベルのクローズアップ」。トリミング幅は異なっているも両者は同じネガを元にしています。東和が持ちこんだネガにAネガ由来のプリントが紛れこんでいたのか、ブルーレイ用に修復した際にあえてBネガを選択したか(現存フィルムのコンディションに応じてブルーレイ版も一部Bネガを使用しているそうです)は不明。

先日紹介した仏コダック16ミリ版ともつながってくる話で、物語あるいは世界観で言うとAネガもBネガも同じ『勇敢』なのです。でもフィルム視点で見ると別作品なんですよね。近年のデジタル修復作業が画質重視でAネガとBネガを混ぜてしまっている状況は少し怖いな、とは思います。

[原題]
Easy Street

[公開年]
1917年

[IMDb]
Easy Street

[メーカー]
大沢商会/東宝/東和

[フォーマット]
Super8、600フィート、30分(24fps)、白黒、光学録音(サウンドテープ付)、定価12,800円

1953 – Super 8 入江たか子主演『怪談佐賀屋敷』(荒井良平監督)


「8ミリ 劇映画」より

Super8 « Ghost of Saga Mansion » (dir. Ryohei Arai)

大映による化け猫映画第一弾として知られ、その後の化け猫ホラーブームの牽引役となった一作。後続の『怪猫岡崎騒動』『怪猫有馬御殿』などと共に何度かデジタルソフト化されており比較的知られた作品ではないかなと思います。

スーパー8は約30分(240メートル)のダイジェスト版。フィルムの劣化(ビネガーシンドローム)が始まっている状態でしたが傷や汚れは少なくスキャンには耐える状態でした

華族の娘として生まれ戦前に美人女優として鳴らし、一時期は自身のプロダクションまで有していた入江たか子さんが戦後、相当の覚悟をもって本作に挑んだ話は良く知られています。古くからのフアンの中には複雑な思いで見た方も多かったのではないかと思います。

一時期(1960年代〜70年代初め)の海外でも古典映画期の女優をホラー映画に出演させるのがブームになったことがありました。ベット・デイヴィスの『何がジェーンに起こったか』(1962年)に始まりバーバラ・スタンウィック(最後の映画出演となった1964年『夜歩く者 The Night Walker』)やヴェロニカ・レイク(1970年の遺作『肉体の宴 Flesh Feast』)、エリザベス・テイラーの『夜をみつめて』 1974年)と錚々たるメンツが並んでいます。

制作視点からすればホラー映画の固定フアン層以外の注目を集め、比較的低ギャラで経験値の高い女優を使えたことにもなります。『怪談佐賀屋敷』と完全に重なる訳ではないものの、発想はリンクしている気がします


[原題]
怪談佐賀屋敷

[公開年]
1953年

[JMDb]
怪談佐賀屋敷

[IMDb]
Kaidan Saga Yashiki

[メーカー]
ライリー/大映

[メーカー記号]
日本名作劇場 T-343

[フォーマット]
Super8、240メートル、31分(24fps)、白黒、光学録音

1976 – スーパー8 『阪妻 – 阪東妻三郎の名場面集』(大沢商会/テレキャスジャパン編)

「阪東妻三郎関連」より

1976 - super8 Bantsuma1976 super8 Bantsuma Back

1970年代半ばに発売されたスーパー8版のアンソロジー。中心となっているのは以下の6作で、それぞれ比較的長めの動画が引用されています。

『雄呂血』(1925年、阪妻プロ)


『影法師』(1950年、松竹)


『魔像』(1952年、松竹)


『破れ太鼓』(1949年、松竹)


『大江戸五人男』(1949年、松竹)


『あばれ獅子』(1953年、松竹)


この合間には1)初期作の短い断片、2)プライベートショット集、3)没後の葬儀の模様とお墓の映像が挿入されています。

フィルムの両端にやや劣化が見られますがビネガー臭や傷などの少ない綺麗なプリントです。フィルムの端を留めていたテープに「Yokohama Cinema」の文字が残されていました。

[タイトル]
阪妻 – 阪東妻三郎の名場面集

[メーカー]
企画・制作:テレキャスジャパン 提供:松竹 発売:大沢商会

[フォーマット]
スーパー8 白黒300フィート 磁器録音

1970年代前後 スーパー8 『乱斗集』(マツダ映画社/村上プロダクション)

「阪東妻三郎関連」 & 「8ミリ 劇映画」より

1970s-ranto-shu00

別投稿で紹介した8ミリ版『旗本退屈男』と同じ出所のフィルムで、傅次郎・阪妻・長二郎・嵐寛・千恵蔵の剣戟を中心にした編集版。80年代にVHSで市販されていた『活弁トーキー版 乱闘場面集』の原型のような内容となっています。今回は全体の2/3程に当たる大河内と阪妻の登場場面を紹介。

『素浪人忠弥』(伊藤大輔、1928年)より。右から二枚目に山田五十鈴

『薩摩飛脚 東海篇』(伊藤大輔、1932年)より

『丹下左膳 日光の巻』(渡辺邦男、1936年)より。右上に高津愛子

『血煙高田馬場』(伊藤大輔、1928年)より。右から二枚目に市川春衛

鬼気迫る『素浪人忠弥』からスタイリッシュな『薩摩飛脚』(山中貞雄監督の剣光愛欲篇とされていますが実際は前年の伊藤監督・東海篇のようです)を挟み、代表作の丹下左膳へ。

『血煙高田馬場』は殺陣の組み立て方だけではなくやじ馬連中たちの表情の切り返しが見事です。日活の老け役として活躍された市川春衛さんが飲み屋の「お勘婆」役で良い味を出しています。

『かまいたち』(東隆史、1932年)より。右から二枚目に環光子

阪妻名場面集ではコントラストの効いた『かまいたち』が目を引きます。阪妻プロで短期間ヒロインを務めた環光子さんの妖艶さよ。

『阪本竜馬』は寺田屋襲撃場面。乱闘は9.5ミリ版より若干尺が長く近藤勇との対決の前の場面が含まれています。殺陣を最小限に抑えた9.5ミリ版編集が独特だったのかな、など比べていくと色々考えさせられます。

『坂本竜馬』(枝正義郎、1928年)より。一番左森静子

情報の正確さやコンテンツの豊さでVHS版に軍配が上がるものの、コマ単位で見えてくる発見があるのが良いですね。

大河内傅次郎場面集
血煙荒神山
素浪人忠弥
薩摩飛脚
丹下左膳 日光の巻
水戸黄門 来国次の巻
血煙高田馬場

阪東妻三郎場面集
燃える冨士
かまいたち
開化異相
坂本竜馬

林長二郎傑作集
辨天小僧
侠客春雨傘
雪之丞変化
旅の陽炎
喧嘩鳶
鳥辺山心中

嵐寛寿郎傑作集
鞍馬天狗
右門一番手柄 南蛮幽霊
鞍馬天狗 江戸日記

片岡千恵蔵
放浪三昧

[フォーマット]
スーパー8 白黒 無声 1200ft
提供:マツダ映画社
編集:村上プロダクション

1930 – スーパー8 市川右太衛門主演 『旗本退屈男』 (古海卓二監督)

「8ミリ 劇映画」より


右太衛門終生の当たり役『旗本退屈男』の第一回作品。

完全版は現存していないとされ、マツダ映画社が前半15分程のプリントを所有。8ミリサイレント版はこのマツダ映画社ライブラリー版を元にしています。タイトル、クレジット、エンドロールは後年にカラーフィルムで撮影されたものです。

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物語は佐々木味津三『続旗本退屈男』を元にしたもので、右太衛門演じる主水之介が江戸で頻発している婦女子拉致事件を解決していきます。妹の菊路を小夜文子さん、その恋人である美男小姓の京弥を初代・大江美智子さんが演じていました。

冒頭の説明に「共演の大江美智子は宝塚からの映画界入り第一号で、彼女の霧島京弥役は後に同役をやった多くの女優達の誰よりも適役で殺陣のうまさは正に抜群であった」とあります。前半に籠に乗った主水之介が襲撃された際に下手人を手裏剣で仕留める場面、後半、女装姿で拉致グループをおびき寄せ乱闘になだれこんでいく場面と二度の殺陣を披露。下のスキャンはわずか5コマ(24fpsのため約0.2秒相当)での動きです。

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大江美智子の短刀使い
(Michiko Oe in her battle scene)

原作ではこの場面で主水之介らが登場、悪人の素性を暴いて一件落着となります。映画版はまだ物語が終わらず主人公が黒幕の屋敷に侵入、豪快な立ち回りを披露した後に地下秘密牢に辿りつきます。拘束されていた女性たちを解放しようとしたところ悪人がからくり仕掛けで部屋の天井を落とそうとして…この場面で映像が切れます。

右太衛門の殺陣は破天荒さや奇抜さはありませんが、スタイリッシュで流れの綺麗なものでした。敵を斃してから、スッと自然体に戻る動きも素敵です。

右太衛門の乱闘場面

冒頭で右太衛門と衝突しつつ後半の捕物で活躍する同心の杉浦にも疾走感があります。配役を確認すると武井龍三氏でした。

武井龍三
武井龍三
(Ryuzo Takei as Sugiura)

監督とカメラマンの連携が上手くいっており、対角線を上手く生かした動的な構図と水平線を活用した静的な構図をバランス良く組みあわせ飽きさせない流れを作っています。右太衛門自身が気に入った原作の第一回作品でもあり、製作陣全体が緊張感をもって仕上げていった完成度の高い一作です。

[Movie Walker]
旗本退屈男

[IMDb]
Hatamoto taikutsu otoko

[フォーマット]
スーパー8 無声 90m 24fps (約15分)

[参考リンク]
青空文庫版『旗本退屈男 第二話 続旗本退屈男』(佐々木味津三 作)

1925 – スーパー 8 『月形半平太』(澤田正二郎主演、衣笠貞之助監督)

「8ミリ 劇映画」より

1925 Super8 月形半平太(衣笠貞之助監督/沢田正二郎主演)
Super8 « Tsukigata Hanpeita »
(1925, dir. Teinosuke Kinugasa, starring Shojiro Sawada)

『国定忠治』と並ぶ澤正映画の代表作で監督は衣笠貞之助。

フィルムの長さにして30m、映写時間7分弱の再編集版で、内容は大きく1)遠景で捉えられた橋の上での立ち回り、2)祇園での芸妓との会食、3)襲撃してきた新撰組とのチャンバラの3つに分けることができます。

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冒頭の橋での斬り合いはロングショットで撮影されカメラの切り返しなどはありません。抜いてから終わるまでが一瞬で凄まじい速さ。

この後、夜に浮かぶ花などが映し出され、祇園の華やかな雰囲気が醸し出されていきます。久松喜代子、春野歌子、二葉早苗など新国劇の女優陣が舞妓、芸妓として登場、荒ぶる幕末の風景にロマンチックな色合いを添えていきます。

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その後夜道を歩いていた主人公を覆面姿の男たちが襲撃、「長藩、月形半平太と知つてか。卑怯者、名を名乗れ」「新撰組!」のやりとりがあって立ち回りになだれこんでいきます。

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カメラアングル、構図に対する意識、コントラストの強い絵作りなど、マキノ省三監督の『国定忠治』と比べても衣笠監督の美的センスをより鮮明に感じ取ることができる内容。殺陣にしても舞台の動きを単純に撮影したものではなく、エディティングで効果を強めていく意思が伝わってきます。

澤正の殺陣を見ていくと、敵との対峙場面でカメラを正眼に直視した際、刀身をまっすぐに立てているため、顔を縦断する細い線に見えています。

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刀のデザイン性を考えるとやや斜めに立てた方が見栄えが良いのでしょうが、一瞬でも早く相手を斬った方が勝ち、そんな命がけの闘いにポージングは要らないのかな、という気もします。舞台では見れないこの角度と距離感、映画でこそ表現可能となった「澤正の本気度」なのでしょう。

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[タイトル]
月形半平太

[公開年]
1925年

[JMDb]
ba001650

[IMDB]
tt0016460

[フォーマット]
スーパー8
白黒30メートル 18コマ/秒 約7分
株式会社サングラフ

1925 – スーパー8 『国定忠治』(澤田正二郎主演、マキノ省三監督)

「8ミリ 劇映画」より

1925 - 国定忠治(スーパ8)
Super8 « Kunisada Chuji »
(1925, dir.Shozo Makino, starring Shojiro Sawada)

映畫劇ではない。澤正一派が舞臺では十八番の「國定忠治」をその儘撮影したに過ぎない映畫である。然し澤田正二郎氏の忠治は立派に成功して居る。舞臺で聞く彼獨特の沈痛な臺詞こそ聞かれないが、彼一流の力強い演技は映畫に於ても充分味へられた。舞臺から映畫に移つた俳優の誰よりも巧い事は確かである。決して映畫俳優の演技ではない彼の演技が見る者に何の不自然さも感じさせず思はず拍手を惜しませぬ、彼の力強い演技には全く敬服した。その型の好き敏捷な動作は舞臺同様觀客を唸らせずに置かない。牧野省三氏の監督は映畫劇としては成功して居ないけれど澤正を活かした事は成功して居るそして舞臺俳優を使つて短日時の内にこれ丈のものを作り上げる事は恐らく氏以外にはあるまいと思はせた。老練と云ふ言葉が滿ちている監督振りである。俳優は澤正以外全くゼロで澤正ピカ一である事は止むを得ない。場面では山形屋の痛快さで唸らせ最後の落入りで十分泣かせて居る。

「主要映画批評:國定忠治」 山本綠葉
(キネマ旬報183号 大正14年1月21日付)

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赤城山と山形屋の二場面を収めた縮約版。牧野翁はひたすら職人肌の裏方に徹しています。

澤田正二郎は忠治をめぐる諸々の神話に忠実であろうとし、そこにストイックで硬質な、生々しい息吹を注ぎこもうとしています。後年の伊藤大輔が大河内というデフォルメの天才を通じて再解釈した病気がちで情けない忠治とのコントラストも興味深く思えます。
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[タイトル]
国定忠治

[公開年]
1925年

[JMDb]
ba000200

[IMDB]
tt5253540

[フォーマット]
スーパー8
白黒50メートル 18コマ/秒 約10分
株式会社サングラフ

1929 – スーパー 8 『嵐寛寿郎の右門捕物帖』(橋本松男)

「8ミリ 劇映画」より

昭和4年(1929年)に東亜キネマで始まった嵐寛寿郎の当たり役・むっつり右門の第一弾『一番手柄 南蛮幽霊』8ミリ版。アラカンは無口な昼行燈タイプの同心を演じていて、余興芝居の最中に殺された岡っ引きの弔い合戦に挑んでいきます。

以前に東亜キネマのサイン帳をご紹介いたしましたが、そこにも名を連ねていた同社の重要俳優が多く出演しています。お茶目なおしゃべり伝六を演じたのは頭山桂之介、右門に嫌がらせをしかけるあばたの敬四郎に尾上紋弥、誤って拷問を受ける町人役に嵐橘右衛門、そして謎の美女としてデビューしたばかりの木下双葉が登場。

殺陣に迫力が欠けるの批判があって以前DVDで見た時に同じ印象を持ちました。今回8ミリで確認してみると、確かにロングショット主体で編集のリズムも良くないのですが、決めポーズなどさすがと思わされる場面も幾つかありました。

[原題]
右門一番手柄 南蛮幽霊 

[公開]
1929年

[JMDb]
右門一番手柄 南蛮幽霊

[IMDB]
Umon ichiban tegara – Namban yûrei

[メーカー]
株式会社サングラフ

[カタログ番号]
商品 No.810

[フォーマット]
スーパー8 白黒60m 18fps 光学録音(カセットテープ付き)

1917 – スーパー8 『移民』(Bネガ 東和版 1970年代初頭)

「8ミリ 劇映画」より

手持ちとしては4種類目となる『移民』のプリント。チャップリンがミューチャル社と契約していた時期に制作された作品はしばしば「ミューチャル短編」と括られます。しかし実際にミューチャル社のロゴを持つ最初期のプリントは『午前一時』を除くと見つかってないそうです。

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(左)東和版8mm (中)UK版9.5mm(右)フリッカー・アレイ版DVD

左二つは国外向けBネガ由来で、船酔いした左のロシア人がカメラを見ています。右のAネガ由来のDVDではチャップリンがカメラを直視しています。


credit
« Towa Company, Ltd.
Presents »

ネガやアウトテイクの流れをタイムラインで追っていくと次のようになります。

1919年、『移民』の制作元であるローン・スターフィルム社がミューチャル短編をクラーク・コーネリアス社に売却。この売却には米国内用のネガ(Aネガ)、輸出向けネガ(Bネガ)、さらに75万フィートに及ぶアウトテイクが含まれていました。

クラーク・コーネリアス社はロゴと字幕を新たに作り直し「チャップリン・クラシック・デラックス」シリーズと名付け、1920年から米国内での再公開を行っていきます。クラーク・コーネリアス社は1923年に一度発展解消、CCピクチャー社と名前を変えます。それでも「チャップリン・クラシック」のロゴは生き続け、1925年まで国内各地で上映が続けられていきました。

しかし時代に波にのまれ次第に売り上げは低迷、多額の負債を抱えたCCピクチャー社は借財返済のため二種類のネガとアウトテイクをオークションにかけます。1925年3月、国内向け/輸出向け2種類のネガの版権を買い取ったのがルイス・オーバック(Louis Auerbach)でした。同氏は自身が社長となり設立したミューチャル・チャップリン社に権利を売却します。

この時期に米コダスコープとの話が持ち上がり同社が16ミリのレンタル権を取得します。また国外向けに仏パテ/英パテスコープとの契約が結ばれ9.5mm形式のフィルム販売が行われていきます。両者の元になったのはチャップリン・クラシック版ですが16mm/9.5mmいずれも元々の形ではなく、細かな改変が行われたそうです。

1917~18年に実写されていたミューチャル版が発見されれば全ては解決されるはずですが、それが叶わない現在、1920年代前半に使用されていた「チャップリン・クラシック」を元に「正規版」の再構成が行われています。2014年にフリッカー・アレイ社から発売された『チャップリンのミューチャル喜劇 1916-1917』に至るまで、専門家が集まってできる限りオリジナルに近づけようとしているのです。

しかしながら「チャップリン・クラシック」版をベースにしていくと足りないパーツがあるようだ、ということが分かってきます。1917年のオリジナル公開時、著作権登録のために作品を要約した文章が残されていて、そこに書かれている幾つかの場面が見当たらないのです。

例えば(1)冒頭、船上でチャップリンが船酔いしたロシア人と出会った後、臭気に耐え兼ね船の逆側に逃げ出したところ、母に背をさすられ嘔吐している息子の場面があったとされています。また(2)食堂でヒロインと出会ったチャップリンが、食堂を出た後の場面があったとも記されています。

この場面は現時点では確認されておらず、フリッカー・アレイ版のDVD/ブルーレイにも収められておりません。ただ、数人の専門家が「昔TVで観た版にはあった」と記憶を頼りに証言。しかもその一人は「2000年頃、日本のテレビで見た『移民』にその場面があった」とのこと。

Two missing scenes from the Flicker Alley’s 2014 Blu-ray/DVD version. (left) « with his mother’s assistance he manages to empty the contents of his anatomy in a series of volcanic spasms »(right) « … necessitating a hasty grip on his mouth and a dash to therailing outside »

「ノーカット版」とされた今回の日本語字幕版8ミリはその意味で興味深い物でした。実際に「母親が嘔吐する息子の背中をさすっている場面」「食堂から出ていくチャップリンの後ろ姿」、他にもフリッカー・アレイ版に存在していない短い場面が幾つも含まれています。

食堂でのチャップリン/エドナを捉えている角度から、この8mmプリントがBネガ(輸出用ネガ)を元にしているのも確認できます。『移民』の日本初公開は1918年ですので、その際に輸入されたプリントから派生してきたものであるとすると「チャップリン・クラシック」以前、ミューチャル社配給によるプリント(ただしBネガベース)なのかなという印象です。

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(left) Japanese super8 (center) UK pathescope 9.5mm (right) Kodascope 16mm

同じBネガ由来の英パテスコープ版と比べてみると、UK版はアスペクト比(縦横比率)がおかしくなっていて、やや横が圧縮されていると分かります。東和版のエドナの方がややふっくらして見えますがこちらが元の比率。ただしトリミング幅も大きいです。コダスコープ版はAネガ由来のため撮影角度が異なっています。

正規版は本国初公開版(Aネガ)の再構成を目指していてBネガの出番はあまりないとも言えます。また2リール物=約24分程度にまとめたい、という整合性の問題も発生します(東和版は30分ほどの長さ)。それでも、本国の専門家すら見たことのない場面が日本のお茶の間で普通に放送されていたのが面白いところ。子供の頃に何度も見たあの『移民』にはお宝が隠されていたのでした。

参考文献
Chaplin’s Vintage Year: The History of the Mutual-Chaplin Specials / Michael J Hayde (2014年) Google Booksにて購入

1953 – スーパー8 『鞍馬天狗 青銅鬼』(並木鏡太郎監督)

「8ミリ 劇映画」より

嵐寛寿郎主演による鞍馬天狗物は40本ほど製作されています。こちらはその中でも後期に属し、戦後のチャンバラ解禁を受けてシリーズが再開された直後の一作になります。

幕府要人を誘拐した新撰組に立ち向かう鞍馬天狗とその仲間たちの活躍を描いた内容で、近藤勇役に大河内傳次郎が配されています。この8ミリ版ではその辺りのやりとりはカットされ、青銅鬼と鞍馬天狗との対決、地下の鍾乳洞での死闘に焦点をあてたものとなっています。

[タイトル]
鞍馬天狗

[原題]
鞍馬天狗 青胴鬼

[製作年]
1953年

[Movie Walker]
mv23451

[IMDB]

[JMDB]
http://www.jmdb.ne.jp/1952/cb002840.htm

[メーカー]
東宝株式会社/東宝映像株式会社

独バウアー T3型 Super8用サイレント映写機 (1960年代後半、イスコ・ゲッティンゲン・ヴァリオ・キプタゴン)

「映写機」より

先日入手したのが音響の分野で定評のあるバウアー社のT3映写機です。日本では取扱いされた記録がなく、電圧設定(110~250v)からみて海外から持ちこんだ一台と思われます。

驚いたのは機体のコンパクトさ。ボタン類も最小限に抑えられ子供向けと思わせる簡素さながら、レンズにはイスコ社によるヴァリオ=キプタゴンを搭載しています。

取っ手がついていて持ち運びやすく、パーティーなどで映像を流したり、手持ちのフィルムを取り急ぎ確認したい時などに真価を発揮しそうです。

対応フィルム:Super8 (60mまで)
対応電圧:110/130/150/220/240/250v
製造国:ドイツ
製造時期: 1966~67年
レンズ:Isco-Göttingen Vario Kiptagon 1 : 14 / 18-30
ランプ:8v/50w p30s (Osram 58.8007/Philips 13120/Sylvania CXR/KP-GT)

1953 – スーパー 8 『珍説忠臣蔵』(古川ロッパ・柳家金語楼・エンタツ&アチャコ・田端義夫・堺俊二ほか)

「8ミリ 劇映画」より

1953年(昭和28年)に公開された忠臣蔵のパロディ映画。吉良上野介が影武者を雇ったり、腰元による長刀隊が登場するなどオリジナルの設定が幾つか組みこまれています。

ドタバタ、シチュエーションの喜劇、アクション、しゃべくり、ナンセンス、ミュージカルなどを組み合わせておりますが、キレッキレという感じはせずまったりしたお笑いの時空間が流れていきます。

ほとんどのキャストが脚本と監督の下で動いているのとは対照的に、エンタツ&アチャコが登場すると二人の独壇場となり空気が変わります。一時代を築いただけはある、と唸らせる貫禄がありました

[原題]
珍説忠臣蔵

[製作年]
1953年

[Movie Walker]
mv23450

[IMDB]

[JMDB]
http://www.jmdb.ne.jp/1953/cc000060.htm

[メーカー]
東宝株式会社/東宝映像株式会社

[フォーマット]
Super 8mm 300ft 24コマ/秒(光学録音/カセット付き)

1924 – Super8 『ニーベルンゲン 第一部 ジークフリート』 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

『メトロポリス』(1927年)と並ぶラング監督のサイレント期の代表作。『第一部:ジークフリート』は竜退治、不死の力の獲得、ギュンター王の娘クリームヒルトへの求婚を経て、裏切りにあった主人公が殺害されるまでの物語を描いていきます。

8ミリとしては米ブラックホーク社の400フィート5巻物、独ピッコロ社によるダイジェスト版などが発売されていました。こちらは戦後にフランスでリリースされた400フィート4巻物。今回はそのうち2本目を試写しています。

[タイトル]
La Mort de Siegfried

[原題]
Die Nibelungen: Siegfried

[製作年]
1924年

[IMDB]
tt0015175

[メーカー]
仏フィルム・オフィス社

[カタログ番号]
不明

[フォーマット]
Super 400ft*4(無声)

1922 – Super8 『吸血鬼ノスフェラトゥ』(F・W・ムルナウ監督)

こちらは名作『吸血鬼ノスフェラトゥ』の名場面をつなげた縮約8ミリバージョン。

ドイツ表現主義に括られがちな作品ながら、幻視者ムルナウ監督はマニュアル化した表現主義を超える独創的な「絵」を次々と生み出していきます。

Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens (Super8 DEFA B&W Print)

[原題]
Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens

[製作年]
1922

[IMDB]
tt0013442

[メーカー]
DEFA

[カタログナンバー]
247

[フォーマット] super8

1928 – Super8 『血煙り高田の馬場』(大河内伝次郎主演、伊藤大輔監督)

「8ミリ 劇映画」より

大河内伝次郎主演、1928年公開『血煙り高田の馬場』の8ミリ抜粋版。

「喧嘩安」の異名を取る浪人・中山安兵衛が村上一派と叔父との果し合いの話を聞き、高田馬場へと駆けつけ、すでにこと切れていた叔父の仇を討つため派手な立ち回りを繰り広げていきます。

小刻みな場面切り替えでリズムを作っていく伊藤大輔監督の才能の片鱗がうかがえる抜粋となります

 
[原題]
血煙高田の馬場

[公開]
1928年

[JMDb]
bd001280

[メーカー]
サングラフ

[フォーマット]
super8