1917 – スーパー8 『移民』(Bネガ 東和版 1970年代初頭)

「8ミリ 劇映画」より

手持ちとしては4種類目となる『移民』のプリント。チャップリンがミューチャル社と契約していた時期に制作された作品はしばしば「ミューチャル短編」と括られます。しかし実際にミューチャル社のロゴを持つ最初期のプリントは『午前一時』を除くと見つかってないそうです。

1917-the-immigrant-jp-super8-06
(左)東和版8mm (中)UK版9.5mm(右)フリッカー・アレイ版DVD

左二つは国外向けBネガ由来で、船酔いした左のロシア人がカメラを見ています。右のAネガ由来のDVDではチャップリンがカメラを直視しています。


credit
« Towa Company, Ltd.
Presents »

ネガやアウトテイクの流れをタイムラインで追っていくと次のようになります。

1919年、『移民』の制作元であるローン・スターフィルム社がミューチャル短編をクラーク・コーネリアス社に売却。この売却には米国内用のネガ(Aネガ)、輸出向けネガ(Bネガ)、さらに75万フィートに及ぶアウトテイクが含まれていました。

クラーク・コーネリアス社はロゴと字幕を新たに作り直し「チャップリン・クラシック・デラックス」シリーズと名付け、1920年から米国内での再公開を行っていきます。クラーク・コーネリアス社は1923年に一度発展解消、CCピクチャー社と名前を変えます。それでも「チャップリン・クラシック」のロゴは生き続け、1925年まで国内各地で上映が続けられていきました。

しかし時代に波にのまれ次第に売り上げは低迷、多額の負債を抱えたCCピクチャー社は借財返済のため二種類のネガとアウトテイクをオークションにかけます。1925年3月、国内向け/輸出向け2種類のネガの版権を買い取ったのがルイス・オーバック(Louis Auerbach)でした。同氏は自身が社長となり設立したミューチャル・チャップリン社に権利を売却します。

この時期に米コダスコープとの話が持ち上がり同社が16ミリのレンタル権を取得します。また国外向けに仏パテ/英パテスコープとの契約が結ばれ9.5mm形式のフィルム販売が行われていきます。両者の元になったのはチャップリン・クラシック版ですが16mm/9.5mmいずれも元々の形ではなく、細かな改変が行われたそうです。

1917~18年に実写されていたミューチャル版が発見されれば全ては解決されるはずですが、それが叶わない現在、1920年代前半に使用されていた「チャップリン・クラシック」を元に「正規版」の再構成が行われています。2014年にフリッカー・アレイ社から発売された『チャップリンのミューチャル喜劇 1916-1917』に至るまで、専門家が集まってできる限りオリジナルに近づけようとしているのです。

しかしながら「チャップリン・クラシック」版をベースにしていくと足りないパーツがあるようだ、ということが分かってきます。1917年のオリジナル公開時、著作権登録のために作品を要約した文章が残されていて、そこに書かれている幾つかの場面が見当たらないのです。

例えば(1)冒頭、船上でチャップリンが船酔いしたロシア人と出会った後、臭気に耐え兼ね船の逆側に逃げ出したところ、母に背をさすられ嘔吐している息子の場面があったとされています。また(2)食堂でヒロインと出会ったチャップリンが、食堂を出た後の場面があったとも記されています。

この場面は現時点では確認されておらず、フリッカー・アレイ版のDVD/ブルーレイにも収められておりません。ただ、数人の専門家が「昔TVで観た版にはあった」と記憶を頼りに証言。しかもその一人は「2000年頃、日本のテレビで見た『移民』にその場面があった」とのこと。

Two missing scenes from the Flicker Alley’s 2014 Blu-ray/DVD version. (left) « with his mother’s assistance he manages to empty the contents of his anatomy in a series of volcanic spasms »(right) « … necessitating a hasty grip on his mouth and a dash to therailing outside »

「ノーカット版」とされた今回の日本語字幕版8ミリはその意味で興味深い物でした。実際に「母親が嘔吐する息子の背中をさすっている場面」「食堂から出ていくチャップリンの後ろ姿」、他にもフリッカー・アレイ版に存在していない短い場面が幾つも含まれています。

食堂でのチャップリン/エドナを捉えている角度から、この8mmプリントがBネガ(輸出用ネガ)を元にしているのも確認できます。『移民』の日本初公開は1918年ですので、その際に輸入されたプリントから派生してきたものであるとすると「チャップリン・クラシック」以前、ミューチャル社配給によるプリント(ただしBネガベース)なのかなという印象です。

1917-the-immigrant-jp-super8-09
1917-the-immigrant-jp-super8-10

(left) Japanese super8 (center) UK pathescope 9.5mm (right) Kodascope 16mm

同じBネガ由来の英パテスコープ版と比べてみると、UK版はアスペクト比(縦横比率)がおかしくなっていて、やや横が圧縮されていると分かります。東和版のエドナの方がややふっくらして見えますがこちらが元の比率。ただしトリミング幅も大きいです。コダスコープ版はAネガ由来のため撮影角度が異なっています。

正規版は本国初公開版(Aネガ)の再構成を目指していてBネガの出番はあまりないとも言えます。また2リール物=約24分程度にまとめたい、という整合性の問題も発生します(東和版は30分ほどの長さ)。それでも、本国の専門家すら見たことのない場面が日本のお茶の間で普通に放送されていたのが面白いところ。子供の頃に何度も見たあの『移民』にはお宝が隠されていたのでした。

参考文献
Chaplin’s Vintage Year: The History of the Mutual-Chaplin Specials / Michael J Hayde (2014年) Google Booksにて購入

c1970 – スーパー8 『松竹8mmライブラリー 日本映画史 前編』(Japanese Cinema History Part I, super8)

「8ミリ 劇映画」より

c1970 Super8 日本映画史 前編

日本映画史00 - 松竹ロゴ日本映画史02 - 緒言日本映画史01 - タイトル

1960年代末~70年代初頭に発売されたと思われる2巻物。前編は19世紀末の映画前史から終戦後の1949年までを扱っています。

現在でも古典として愛されている作品(『愛染かつら』『悲しき口笛』『晩春』)、無声映画の愛好家にはなじみ深い歴史的作品(『紅葉狩』『路上の霊魂』)を中心に、松竹作品を軸として初期映画の流れを追っていきます。
日本映画史07 - 活動大写真b日本映画史07 - 活動大写真c

短い抜粋ながら『ジゴマ』が含まれていたり、『後のカチューシャ』や『虞美人草』(戦闘モブシーンにグリフィスの影響あり)を動画で観れたりと貴重な経験でした。

驚いたのは1913年の 『天馬』。ドイツ映画初の活劇スター、ハリー・ピールの初期作。この時期のハリー・ピール作品が残っているという話をドイツ語圏で聞いた覚えがなく、現地の映画愛好家が聞いたら悶絶しそう。

1887年 『疾走中の馬の連続写真』エドワード・マイブリッジ Sallie Gardner at a Gallop [imdb]

日本映画史05 - メイブリッジ01日本映画史06 - メイブリッジ02

1899年 『紅葉狩』 柴田常吉監督 Momijigari [imdb] [jmdb]
日本映画史08 - 紅葉狩01日本映画史09 - - 02

1911年 『ジゴマ』ヴィクトラン・ジャッセ監督 Zigomar [imdb]

日本映画史12 - ジゴマ01日本映画史13 - ジゴマ02

1912年 『日本南極探検(南極実景)』 Japanese Expedition to Antarctica [imdb] [jmdb]

日本映画史15 - 南極探検01日本映画史16 - 南極探検02

1913年 『アントニィとクレオパトラ』エンリコ・ガッツォーニ監督 Marcantonio e Cleopatra [imdb]

日本映画史19 - アントニーとクレオパトラ

1913年 『天馬』 ハリー・ピール監督 Tenma/Pegasus (Unidentified Harry Piel Action Short)

日本映画史20 - 天馬日本映画史21 - 天馬02

1915年 『後のカチューシャ』 細山喜代松監督 Nochi no Katyusha [imdb] [jmdb]

日本映画史17 - 後のカチューシャ01日本映画史18 - 後のカチューシャ

製作年不明 『自雷也』 尾上松之介主演 Jiraiya (Unidentified Version)

日本映画史10 - 自雷也01日本映画史11 - 自雷也02

1921年 『路上の霊魂』 村田実監督 Souls on the Road [imdb] [jmdb]

日本映画史23 - 路上の霊魂01日本映画史24 - 路上の霊魂02

1921年 『虞美人草』 小谷ヘンリー監督 Gubijinsô [imdb] [jmdb]

日本映画史25 - 虞美人草01日本映画史26 - 虞美人草02

1923年 『船頭小唄』 池田義信監督 Sendô kouta [imdb] [jmdb]

日本映画史29 - 船頭小唄

1923年 『関東大震災』

日本映画史30 - 関東大震災日本映画史31 - 関東大震災02

1931年 『マダムと女房』 五所平之助監督 Madame and Wife [imdb] [jmdb]

日本映画史32 - マダムと女房01日本映画史33 - マダムと女房02

1938年 『愛染かつら』 野村浩将監督 The Tree of Love [imdb] [jmdb]

日本映画史34 - 愛染かつら01日本映画史35 - 愛染かつら02

1939年 『暖流』 吉村公三郎監督 Warm Current [imdb] [jmdb]
1943年 『花咲く港』 木下恵介監督 Port of Flowers [imdb] [jmdb]
1945年 『そよかぜ』 佐々木康監督 Soyokaze [imdb] [jmdb]
1949年 『悲しき口笛』家城巳代治監督 Sad Whistling [imdb] [jmdb]
1949年 『晩春』 小津安二郎監督 Late Spring [imdb] [jmdb]

白黒110メートル(約18分)
光学録音
サングラフ/松竹

1953 – スーパー8 『鞍馬天狗 青銅鬼』(並木鏡太郎監督)

「8ミリ 劇映画」より

嵐寛寿郎主演による鞍馬天狗物は40本ほど製作されています。こちらはその中でも後期に属し、戦後のチャンバラ解禁を受けてシリーズが再開された直後の一作になります。

幕府要人を誘拐した新撰組に立ち向かう鞍馬天狗とその仲間たちの活躍を描いた内容で、近藤勇役に大河内傳次郎が配されています。この8ミリ版ではその辺りのやりとりはカットされ、青銅鬼と鞍馬天狗との対決、地下の鍾乳洞での死闘に焦点をあてたものとなっています。

[タイトル]
鞍馬天狗

[原題]
鞍馬天狗 青胴鬼

[製作年]
1953年

[Movie Walker]
mv23451

[IMDB]

[JMDB]
http://www.jmdb.ne.jp/1952/cb002840.htm

[メーカー]
東宝株式会社/東宝映像株式会社

独バウアー T3型 Super8用サイレント映写機 (1960年代後半、イスコ・ゲッティンゲン・ヴァリオ・キプタゴン)

「映写機」より

先日入手したのが音響の分野で定評のあるバウアー社のT3映写機です。日本では取扱いされた記録がなく、電圧設定(110~250v)からみて海外から持ちこんだ一台と思われます。

驚いたのは機体のコンパクトさ。ボタン類も最小限に抑えられ子供向けと思わせる簡素さながら、レンズにはイスコ社によるヴァリオ=キプタゴンを搭載しています。

取っ手がついていて持ち運びやすく、パーティーなどで映像を流したり、手持ちのフィルムを取り急ぎ確認したい時などに真価を発揮しそうです。

対応フィルム:Super8 (60mまで)
対応電圧:110/130/150/220/240/250v
製造国:ドイツ
製造時期: 1966~67年
レンズ:Isco-Göttingen Vario Kiptagon 1 : 14 / 18-30
ランプ:8v/50w p30s (Osram 58.8007/Philips 13120/Sylvania CXR/KP-GT)

1953 – スーパー 8 『珍説忠臣蔵』(古川ロッパ・柳家金語楼・エンタツ&アチャコ・田端義夫・堺俊二ほか)

「8ミリ 劇映画」より

1953年(昭和28年)に公開された忠臣蔵のパロディ映画。吉良上野介が影武者を雇ったり、腰元による長刀隊が登場するなどオリジナルの設定が幾つか組みこまれています。

ドタバタ、シチュエーションの喜劇、アクション、しゃべくり、ナンセンス、ミュージカルなどを組み合わせておりますが、キレッキレという感じはせずまったりしたお笑いの時空間が流れていきます。

ほとんどのキャストが脚本と監督の下で動いているのとは対照的に、エンタツ&アチャコが登場すると二人の独壇場となり空気が変わります。一時代を築いただけはある、と唸らせる貫禄がありました

[原題]
珍説忠臣蔵

[製作年]
1953年

[Movie Walker]
mv23450

[IMDB]

[JMDB]
http://www.jmdb.ne.jp/1953/cc000060.htm

[メーカー]
東宝株式会社/東宝映像株式会社

[フォーマット]
Super 8mm 300ft 24コマ/秒(光学録音/カセット付き)

スーパー8 『邦画名作抄 美人女優列伝 サイレント時代・草分けの美女たち』

「8ミリ 劇映画」より

手元にあるのは第一巻。無声映画期の女優さんが登場するハイライト場面をまとめた内容です。

田中絹代さん主演の『伊豆の踊子』で始まり、松竹スタジオの外観などを挟みながら井上雪子さん主演の『与太者と海水浴』へ。浅瀬に着衣のまま飛びこんでしまう大胆な展開に。

名作『不壊の白珠』を挟んで『夜ごとの夢』。栗島すみ子さんキャリア後期の作品で子供に頬をつけて泣いている時の表情が圧倒的。最後に『金色夜叉』での寛一お宮のやりとりが紹介されています。どの女優さんも雰囲気ありますね。

二巻目以降に倍賞千恵子さん、岸恵子さんが登場するようです。

1) 不壊の白珠(1929年、清水宏監督) 及川道子、八雲恵美子ほか
2) 夜ごとの夢(1933年、成瀬巳喜男監督) 栗島すみ子、飯田蝶子ほか
3) 伊豆の踊子(1933年、五所平之助監督) 田中絹代、若水絹子ほか
4) 与太者と海水浴(1933年、野村浩将監督) 井上雪子、光川京子、高峰秀子ほか
5) 金色夜叉(1937年、清水宏監督) 川崎弘子

白黒200フィート
磁器録音(24コマ/秒)
テレキャスジャパン/大沢商会/松竹

1924 – Super8 『ニーベルンゲン 第一部 ジークフリート』 (フリッツ・ラング監督)

「8ミリ 劇映画」より

『メトロポリス』(1927年)と並ぶラング監督のサイレント期の代表作。『第一部:ジークフリート』は竜退治、不死の力の獲得、ギュンター王の娘クリームヒルトへの求婚を経て、裏切りにあった主人公が殺害されるまでの物語を描いていきます。

8ミリとしては米ブラックホーク社の400フィート5巻物、独ピッコロ社によるダイジェスト版などが発売されていました。こちらは戦後にフランスでリリースされた400フィート4巻物。今回はそのうち2本目を試写しています。

[タイトル]
La Mort de Siegfried

[原題]
Die Nibelungen: Siegfried

[製作年]
1924年

[IMDB]
tt0015175

[メーカー]
仏フィルム・オフィス社

[カタログ番号]
不明

[フォーマット]
Super 400ft*4(無声)