1913 – 『プロテア』(エクレール社、ヴィクトラン・ジャッセ監督) 仏シネマテーク・フランセーズ 2Kデジタル版を見る

「『ジゴマ』/ヴィクトラン・ジャッセ [Zigomar / Victorin-Hippolyte Jasset]」より

Protéa (1913, Eclair, dir/Victorin-Hippolyte Jasset)
La Cinémathèque Française 2K Restauration

『ジゴマ』(1911年)で知られるジャッセ監督による犯罪活劇物で、1913年に他界した同監督の遺作となったものです。不完全なフィルムの現存は以前から知られており、1998年に複数のネガ(35mm/16mm)を元に修復版が作成され、2013年に2Kデジタル化が行われました。

デジタル版はシネマテーク・フランセーズの公式サイトで視聴可能。中盤にフィルムの見つかっていない個所があり字幕で補完する形になっています。

物語の大枠としては、欧州の架空の国メッセニア、セルティア、スラヴォニア3国の緊張関係を背景とし、セルティアとスラヴォニア間で秘密裏に締結された条約にメッセニアの外務大臣が危機感を抱きます。指示を受けた同国の警視総監(シャルル・クラウス)は旧知の女スパイ・プロテア(ジョゼット・アンドリオ)に条約の草案奪取を依頼します。

プロテアは収監中である相棒の「ウナギ(アンギーユ)」の釈放を条件に依頼を引き受けます。

ウナギ(アンギーユ)役のリュシアン・バタイユ

ウナギ(アンギーユ)と合流したプロテアはセルティアに向かうのですが同国ではすでに間諜潜入の知らせを受けており、二人の捕縛に乗り出していきます。プロテアとウナギ(アンギーユ)は次々と姿を変えながら条約の草案を盗み出し、お尋ね者の身となりながらメッセニアへの国境に向かっていく…

物語はシンプルながら登場人物が多いためフランス語字幕では関係が見えにくいかもしれません。春江堂から出ていた日本語小説版が内容理解の助けになるかと思います。

『探偵活劇 プロテア』
(1916年、春江堂、筑峰 翻案)

見どころについては実際に見てもらうのが一番だと思います。個人的に指摘しておきたいポイントが2つ。

1点目は冒頭の人物紹介の場面です。『ジゴマ』、『ファントマ』など当時の仏連続活劇では冒頭で主人公が様々な姿に身を変えて変装の達人ぶりを強調しています。『プロテア』も同じ「型」をなぞっているのですがフレームを使用することで絵のように見せています。枠のデザインはアールヌーヴォーの影響を受けており若い頃に画家を志していたジャッセ監督の趣味を強く反映しています。

プロテアの相棒「ウナギ(アンギーユ)」の紹介では枠そのものにウナギのデザインを採用。やはりアールヌーヴォー期の日本趣味、東洋趣味にインスパイアされた発想です。1:1.33の画面を使って何をどう見せるか、卓越した構図力がジャッセの強みだった訳で『プロテア』では冒頭からそのセンスを発揮しているといえます。

もう1点は作品中盤、プロテアと相棒が機密書類を盗みに入る場面。この時に二人がまとっていたタイトな黒装束は後にフイヤード監督作『レ・ヴァンピール』(1915年)のミュジドラ、さらに同作へのオマージュである『イルマ・ヴェップ』(1996年)のマギー・チャンに受け継がれていくものです。

『レ・ヴァンピール』(1915年)でのミュジドラ

『イルマ・ヴェップ』(1996年)でのマギー・チャン

暗闇に乗じて暗躍する悪党団の不気味さ、身体のラインを強調したフェティッシュなエロスを混在させる想像力はフランス連続活劇特有のもので、ハリウッド物との差別化を図る重要な要素となっていました。

[原題]
Protéa

[公開年]
1913

[IMDB]
Protéa

1921-22 『ハリケーン・ハッチ』(米パテ・エクスチェンジ社、ジョージ・B・サイツ監督)

« Hurricane Hutch » (1921-22, US Pathe Exchange, dir/George B. Seitz) 1924 Enomoto Shoten Novelization

蹴倒す、投げ出す、打倒す、ハツチは鬼の如く荒廻つた末遂に二人の幽閉されてゐる室へ飛び込んだのである、それツと二人の婦人を抱いて船室から飛び出ようとする時であつた、どうして焔へ上つたか船は炎々たる紅蓮の炎に包まれてゐるのである、もう仕方がない、ハツチは兩人を抱いたまゝザンブと海中へ躍り込んだのである、船はと見れは地獄の如く阿鼻叫喚の修羅の巷と替り果てゝ了つてゐる、ハツチとナンシー嬢は流れ來る破片に縋り、従妹テツド嬢は漂ひ來る木片に取り縋るのであつた[…]。

『ハリケン・ハッチ』(榎本書店 活動文庫、1924年)

『ハリケーン・ハッチ』は1921年秋から22年初頭に公開された米パテ社の15幕物連続活劇です。主演チャールズ・ハッチソンは旧作『伯林の狼』や『大旋風』で日本でも名を知られており、またパテ社の大掛かりなプロモーションが功を奏したこともあって人気を呼び、『豪傑ハッチ』『スピードハッチ』と次作以降も紹介が続いていきます。


『ハリケーン・ハッチ』の脚本を書いたのはハッチソン自身であるが、本人はこの作品でのアクションを「古びたもの」と切り捨てている。バイクに乗った主人公のハッチがまさに真下を機関車が雷鳴を立てて通り過ぎていく瞬間に壊れた橋を9メートルもジャンプして飛び越えていく。オーセイブルの急流に飛びこみ、その滝を泳ぎ切っていく。丸太に乗って木製の水路を流れていき、そのまま木材で埋め尽くされた川に突入する。ハドソン川の真上30メートルの端にかかったロープを滑り降りていき、揺れたまま通りすがりの帆船のマストに飛び移る。他にも観ているだけで血の気が引くようなアクション満載なのだが「古びたもの」だそうだ。

「ピクチャーゴーア」誌 1921年12月号

Hurricane Hutch was written by himself, but he dismissed his exploits therein as « old stuff. » When Hurricane Hutch is released, you will see « Hutch » leap thirty feet across a broken bridge on a motor-cycle just as a train thunders by beneath him. Also plunge into Ausable Rapids and swim over the falls there ; « ride » a lumber-sluice on a log into a river jammed with other logs; slide down a rope from a hundred-foot bridge over Hudson river, and swing to the mast of a passing schooner, and numerous other blood-curdling stunts. Old stuff!

Picturegoer Magazine (1921 December Issue)


多彩なアクションが伝わってくる記事です。フィルムそのものは遺失。パテ社製作の予告編をシリアル・スカドロン社がデジタル化(『ロスト・シリアル・コレクション』DVDの2枚目に収録)しておりユーチューブでも見る事ができます。

主演チャールズ・ハッチソンについて現在まとまったオンライン記事はありません。紙ベースでは活劇史を扱った『Bound and Gagged』(1968年)の第6章で幾つか作品が触れられていました。古い雑誌で調べているとピクチャーゴーア誌のインタビューを発見。その内容によると父親がスコットランド系イギリス人、母親がアメリカ人で幼少時をイギリスで過ごしているそうです。10代後半で舞台に立ち8年の経験を積んでから映画界に参入。当初トライアンフ社で活動しその後クリスタル社など転々とします。パテ社との契約第一弾となった『伯林の狼』(1918年)成功で連続活劇界の花形となりました。

上の写真は1922年のパテ・エクスチェンジ社の広告。パール・ホワイトと並ぶ扱いを受けているのが分かります。同じ雑誌に寄稿されたパテ・エクスチェンジ社マネージャー(エドガー・オスワルド・ブルックス)の一文では、旧来型の連続活劇と方向性を変え青少年に悪影響を与えない「健全」な作風に向かう旨が記されています。興行としても内容・表現的にも行き詰まりを見せていた活劇ジャンルの再興を目論んでいるのです。しかしパール・ホワイトは次作『プランダー』をもって活劇を引退、ハッチソンも翌年にはパテ社を離れています。

1914年後半から始まったハリウッド連続活劇のブームはこの1923~24年で一旦終焉を迎えました。ハッチソンの名も忘れられていくもののその血脈は『怪傑ハヤブサ』などに受け継がれていきます。

[Movie Walker]
ハリケーン・ハッチ

[IMDb]
Hurricane Hutch

[発行者]
榎本松之助

[発行所]
榎本書店(大阪)

[出版年]
1924年

[フォーマット]
A7:10.5×7.4㎝、32頁

1916 – 9.5mm 『快漢ブレーズ』(米トライアングル社、ダグラス・フェアバンクス主演、ジョン・エマーソン監督) イタリア語版

9.5ミリ 劇映画より

« The Americano » (1916, Triangle/Fine Arts Film Company, dir/John Emerson) 1920s 9.5mm Italian Version

鉱山技師のブレーズ(フェアバンクス)の元にカリブ海の小国パラゴニアから仕事の依頼が舞いこんだ。鉱山の再開作業に手を貸してほしいと云ふのである。一旦は斷つたブレーズであつたが、帰り際に垣間見た同国大統領の令嬢フアナ(アルマ・ルーベンス)の美しさに心惹かれ前言を翻すのであつた。

パラゴニアに到着したブレーズ。しかし市民の様子がおかしい。話を聞くと大統領バルデス派と軍部のエスパダ大臣の対立が激化し、バルデスは監獄に幽閉され、娘フアナも自宅に軟禁されたのだと云ふ。バルデス宅に入りこんだブレーズ青年。男の姿に目を留めたフアナは小さな毬にメッセージを添へ窓の外に投げ放ち助けを求めるのであつた。

ブレーズ青年の動きを警戒したクーデター派はその一挙一動を監視していた。カフエのテラスで食事中のブレーズの元に貧しい身なりの物売りが声をかける。此の物売りこそ、大統領を救はんと身をやつした首相カスティーユ(トート・デュクロウ)であつた。カスティーユに案内され監獄付近を探索していると「1899年11月23日」の文言がしたためられた紙片を発見。その謎を解くべくブレーズは再度フアナの元に向かう。

政変は成功したかに見えた。フアナは父の命と引き換えにクーデター派将軍(チャールス・スティーヴンス)に嫁ぐよう強要され涙に暮れている。残された時間は少ない。ブレーズらは大統領救出作戦に乗り出した。カリブ小国の命運と青年技師の恋物語の行く末や如何に。

1916年末公開、フェアバンクスにとってトライアングル社最後の作品となった一作。中米の架空の島国パラゴニアを舞台とし、政変の只中で奮闘する青年技師ブレーズの活躍を描いていきます。

トライアングル社での旧作と比べ人間関係やプロットの絡み具合が段違いに複雑。9.5ミリ版は元の1/4程に縮約されていたこともあって展開を追うのに一苦労。アクションの比率も少なく単体のエンタメ作品として見るなら前作『空中結婚』に軍配が上がると思います。一方で単純明快な作品ばかりを作っている状況から脱却したい製作側の思いも伝わってきます。この後独立プロを立ち上げユナイテッド・アーチストに合流していくフェアバンクスの試行錯誤のひとつなのかな、と。

Mildred Harris as a stenographer

小動物の使い方、手のクローズアップ、群衆表現などにスーパーバイザーとして関わったD・W・グリフィスの影響大。また前半に一瞬登場したタイピストの女性に見覚えがあって、確認したところ後にチャップリン夫人となるミルドレッド・ハリスと判明、当時日本でも名の知られていた女優ながら初期出演作の大半が失われていて今回初めて動いている姿を見ることができました。

[IMDb]
The Americano

[Movie Walker]


[公開]
1916年12月24日

[9.5ミリ版]
イタリア語字幕版(※)

[カタログ番号]
10-010

(※)フェアバンクスの初期短編については米パテックス社から『ドーグラスの好奇(Manhattan Madness)』、英パテスコープ社から『ドーグラスの飛行(American Aristocracy)』『空中結婚(The Matrimaniac)』『快漢ブレーズ』の9.5ミリプリントが発売されていました。ドイツやフランス、イタリアなどではイギリス版の字幕を差し替えたものが市販されており、今回入手したのは英パテスコープ版をベースにしたイタリア語版です。

1928 – 9.5mm 『スピオーネ』(フリッツ・ラング監督) 独パテックス社4リール版

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」より

Spione (Early 1930s German Pathex 9.5mm Version)

昨年『メトロポリス』『ファウスト』で世話になったドイツのフィルム収集家ヴォルフ・ヘルマンさんと再度ご縁があり、ラング監督のスパイスリラー『スピオーネ』9.5ミリ版全4巻を入手できました。

英パテスコープ社版は現存数が多く市場で何度か見た覚えがあります。こちらは流通数の少ない独パテックス版。『スピオーネ』は複雑に絡みあうサイドストーリーやサブプロットが特徴なのですが、そういった要素はカットされ、悪漢ハギー(ルドルフ・クライン=ロッゲ)と英国諜報員326号(ヴィリー・フリッチ)、その狭間で揺れる女スパイ・ソニア(ゲルダ・マウルス)三者の駆け引きに重点を置いた展開に編集されています。

リール1:ハギーの指令で326号に近づいたソニアが恋に落ち、お守りを渡すまで
リール2:前半はソニアに騙された326号が自暴自棄になる展開。後半は日本外交官マスモト/マツモトの秘密書類をめぐる駆け引き
リール3:ハギーが急行列車で諜報員326号謀殺を図る件
リール4:ハギーがソニアを人質に諜報局を脅迫〜銀行爆破、逮捕劇

キャスティングの魅力、語りのスリリングさ、強いインパクトを残す構図…ラング世界を9.5ミリフィルムの質感で追体験できるのは至福の時間でした。

1912 – スタンダード8 『若き女電信技手の勇猛(The Grit of the Girl Telegrapher)』(米カレム社、アンナ・Q・ニルソン主演)

1912-the-grit-of-the-girl-telegrapher-011912-the-grit-of-the-girl-telegrpher-standard8-s

kalem-kalender-1912-august-the-grit-of-the-girl-telegrapher
『カレム・カレンダー(Kalem Kalender)』1912年8月号、14-15ページ

電信技手ベチーの許婚は汽車専属の警官で、街の外からの呼び出しを受け、ベチーに手錠を託してその場を去った。程なくしてベチーが受け取った伝言には、列車内のスリとして悪名高い「煙巻きのスミス」を探し出せ、と事細かな描写が添えられていた。駅に現れたスミスは見破られないだらうと高をくくり、近くの宿に部屋を取つた。

ベチーはこの男こそ電報のスミスに違いないと確信し、手錠をポケットに忍びこませ宿屋へと向かった。呑気な泥棒は他の若い宿泊客と鬼ごつこに興じている最中であつた。ベチーがこれ幸いとスミスに手錠をかけると男は忽ちにしてその本性を現して一帯を混乱に陥れた。しかしベチーはこれを制して男を駅に閉じこめるに成功した。

何とか逃げ出したスミスは蒸気機関車に乗りこみ、速度を上げさせて駅を出立せしめた。しかしながらベチーは泥棒が高跳びしたのに気がつくともう一台の機関車に飛び乗り、機関士に先の車両を追うよう説得したのであつた。派手な追跡劇の後に泥棒は捕縛された。男を連行した機関車が駅に戻ると、婚約者が降りてきてスミスを引き受け、若き電信技手の勇猛を称えたのであつた。

『カレム・カレンダー(Kalem Kalender)』1912年8月号、14-15ページ

BETTY’S fiance, a railroad detective, is called out of town on private business and leaves his handcuffs in the care of the girl telegrapher. Shortly after the detective’s departure Betty receives a message to be on the lookout for Smoke-Up Smith, a notorious thief — a full description being given. Smith appears at the station, feeling assured that he will not be recognized and engages quarters at a nearby boarding house.

Betty, fully convinced that Smith is the person described in the message, slips the handcuffs into her pocket and goes over to the boarding house, where the happy-go-lucky thief is playing “blind man’s buff » with the young boarders. This gives Betty an opportunity to slip the irons on Smith and he immediately shows his true identity by the disturbance he causes, ere he is imprisoned in the station.

Smith manages to escape and, entering a locomotive, speeds down the track and out of the yards. Betty, however, discovers the flight of the thief and hastens to another engine, prevailing upon the engineer to steam up and follow in pursuit. A thrilling chase takes place and the criminal is captured. As the locomotive returns with the prisoner, the detective steps off a train and taking charge of “Smoke-Up,’’ congratulates the young operator on her bravery.

蒸気機関車を大きく扱い、駅構内に勤める女性を主人公としたアクションドラマ、という非常にピンポイントな短編映画がハリウッドでは1911年頃から盛んに作られるようになりました。その嚆矢となったのがグリフィスの『女の叫び』(The Lonedale Operator、バイオグラフ社、1911年)で、この流れはすぐにハリウッド史上最長の連続活劇『ヘレンの冒険』(The Hazards of Helen、カレム社、1914年)へと繋がっていきます。

この両作品を結び付けていくのが1912年のカレム社作品『若き女電信技手の勇猛』でした。主演は北欧系の若手女優として頭角を現していたアンナ・Q・ニルセン。ルース・ローランドやヘレン・ホームズ他のカレム社活劇女王と比べて背が高くスラリとした存在感があり、ワンピース姿で拳銃を手に悪漢を追いつめていく展開はかなりの迫力がありました。

ストーリーは訳出した通りですが、編集のテンポが良く文字で読む以上にスピーディー。ヒロインが電信を受け取る場面を長回しで寄って撮っていたり、二台の蒸気機関車の追跡では連結器の結合を丁寧に描くなど作りが丁寧です。

カレム社はこの時期に同系統の作品(『1862年鉄道急襲事件秘話(The Railroad Raiders of ’62)』『時との闘い(A Race with Time)』)を幾つか作っており、ここで蓄積されたノウハウが『ヘレンの冒険』を生み出していきました。米連続活劇が好きなら見ておいて損のない作品だと思います。

フィルムは英レスター在住のB・V・ベイツ氏の旧蔵品。オイミッヒの400フィートリールにグリフィス初期短編(「The Narrow Road」)と一緒にマウントされていたものです。クレジットは取り除かれていましたが米ブラックホーク社プリントだと思います。

[タイトル]
The Grit of the Girl Telegrapher

[公開年]
1912年

[IMDB]
tt0229427

[メーカー]
米ブラックホーク社?

[メーカー記号]
810-653?

[フォーマット]
Standard 8mm 200フィート (60m)

1916 – 9.5mm ダグラス・フェアバンクス主演 『電話結婚』 (The Matrimaniac)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

9.5mm Douglas Fairbanks in The Matrimaniac (1916)
9.5mm Douglas Fairbanks in The Matrimaniac (1916)

御なじみの名高いダグラスフエーヤバンクスは彼の獨得の妙技を振って演じた快味湧くが如く姿又眞に迫つた活劇である。彼は絶世の美人マルヂヨリーに戀したけれども父は頑強に反對したのである。彼は決心のほぞをきめてマルヂヨリーを奪ふやいち早く逃げた追急して來る追手からのがれんとして心膽を寒からしむる彼獨得の冒険を犯しつゝ迹け終り逸早く牧師を説得し目出度く結婚すると云ふ血沸き肉躍る活劇である。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

フェアバンクス初期主演作の9.5ミリ版。

1910年代のフェアバンクス短編は後年の長編(『奇傑ゾロ』『ロビンフッド』)と質を異にしています。十数分の枠にお笑いやアクション、恋愛劇をバランス良く詰めこみ物語は勧善懲悪で綺麗にまとまっています。

また新人女優にとって良い登竜門になっていました。ジュエル・カーメン(『火の森』)、アルマ・ルーベンス(『アメリカ人』)、ポーリーン・カーリー(『ドグラスの跳ね廻り』)、アイリーン・パーシー(『ドーグラスの蛮勇』)、マージョリー・ドウ(『ドーグラスの現代銃士』)などがフェアバンクスとの共演を通じて女優キャリアのステップアップを実現していきました。

『電話結婚』はコンスタンス・タルマッジを相手に据えた一本で、ロミオとジュリエットを念頭に「相手の親の反対にも関わらず猪突猛進するドーグラス」を楽しそうに演じています。

[タイトル]
Mariage au téléphone

[原題]
The Matrimaniac

[公開]
1916年

[IMDB]
The Matrimaniac

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
10025

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *2リール

1917-22 忘れじの独り花(16)エディット・メラー Edith Meller (1897 – 1953)

「フィア・エーマンス旧蔵サインコレクション」より

Edith Meller c1920 Autographed Postcard
Edith Meller c1920 Autographed Postcard
第一次大戦中の1916年にデビューし1922年頃まで旺盛な活動を見せていたハンガリー出身の女優。

初期はナチオナール映画社やPAGU社作品に多く出演。このうち助演した1917年の « Der feldgraue Groschen »が現存しており、オンラインで動画が公開されています。

« Der feldgraue Groschen »でのエディット・メラー(右端)

1920年にPAGU社で製作された恋愛アドベンチャー『熱国の呪』(Indische Rache)は日本でも公開されています。

Edith Meller in Die wilde Ursula (1918)
キノベジッツァー誌 1918年5月13日付
初期主演作 « Die wilde Ursula » の紹介記事

[IMDB]
nm0577914

[Movie Walker]
エディット・メラー

[誕生日]
9月16日

[出身]
ハンガリー(ブダペスト)

[サイズ]
8.6 × 13.6cm

[データ]
Film-Sterne 133/4. J.Brass

1917-22 忘れじの独り花(14) エステル・カレナ Esther Carena (1898 – 1972)

「フィア・エーマンス旧蔵サインコレクション」より

Esther Carena c1920 Autographed Postcard
Esther Carena c1920 Autographed Postcard

女優としての活動は大正時代の後期(1916~24年)に集中しています。1916年に舞台の仕事を探しにイタリアからドイツへやってきたのですが、仕事はなく、当初は「乗り気ではなかったのだけれど」映画で生計を立て始めました。

経験を積むにつれ映画の可能性を実感していくようになり、自身の衣装デザインを手掛けるなど積極的な自己主張を見せるようになります。ケリー・ドイチュラント探偵物(ハリー・ピール主演)やウェッブス探偵物(エルンスト・ライヒャー)などミステリー作品に多く出演、イタリア時代に心得のあったアクロバットの経験も生かし、アクションや舞踏など活動派のセンスも見せています。

der kinobesitzer, 1918-06-01, seite 11-carena
キノ・ベジッツアー誌1918年6月1日号より、ハリー・ピール監督作品『彼奴の仇敵』(Sein Todfeind)紹介記事

Esther Carena in Ikarus, der fliegende Mensch (1918)
『鳥人イカルス』(1918年, Ikarus, der fliegende Mensch)より

初期作品の一つ、第一次大戦を背景にしたメロドマラマ『鳥人イカルス』はフィルムが現存しており、ドイツ映画協会のオンラインサイト、フィルムポータル.deにてデジタル版が公開されています。

[IMDB]
nm0136824

[Movie Walker]
Esther Carena

[誕生日]
8月24日

[出身]
ドイツ(ハノーファ)

[サイズ]
9.0 × 14.0cm

[データ]
Verl. Herm. Leiser, Berlin Wilm. 3035

1916 – 9.5mm ダグラス・フェアバンクス主演 『ドーグラスの飛行』 スペイン語字幕版

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

アメリカでは丁度何處の國でも同じ事ではあるが金は最大の力で金あらば何事も爲し得るのであるキャセアスグレゴールは彼れが一生をウヤムヤと只黄金のあとを追ふてのみ葬むる事を欲しなかつた。彼れは有意義に生きたかった瞑想 實現 且又戀に然るに機會は来た強き誘惑の力と眞実の心とを以て 陥し入れんとする密謀 移りかわり此の編中にダグラスフエーヤバンクスは独得の妙技を振つて大活躍をするのである見落すべからざる大傑作。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

昆虫学者の主人公(フェアバンクス)がひょんなことからビジネス界大物と縁を持つようになり、業界にはびこる犯罪一味を一掃し、麗しい令嬢(ジュエル・カーメン)と結ばれるまでを描いた短編作。

日本では『ドーグラスの飛行』として知られているフェアバンクス初期の主演作品。

タイトルクレジット、題、字幕などスペイン語仕様。振られているカタログ番号は英パテスコープ社の連番と同一。同社がライセンスを取ったプリントをスペイン語字幕に置き換えたようなのですが、フィルムの製造は仏パテ社が行っています。

[タイトル]
Aristocracia Americana

[原題]
American Aristocracy

[公開]
1916年

[IMDB]
tt0006357

[メーカー]
仏パテ社?

[カタログ番号]
10.049

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *3リール

ハリー・ピール Harry Piel (1892 – 1963) 独

Harry Piel Autographed Postcard

ヘンニ・ポルテンにしてもアスタ・ニールセンにしても、果敢な冒険追跡物を得意としたドイツ初のスーパーアイドル男優、ハリー・ピールの人気には敵わなかった.

Henny Porten and Asta Nielsen were no match in popularity for the first matinee idol superstar, Harry Piel, specializing in daring adventure and chase films.

『オックスフォード世界映画史』 1996年

Harry Piel in Zigano (1920)
1911年から監督として映画界に携わり1915年から俳優としても活躍、派手な爆破シーンを売りにしたアクション短編で人気を博しました。20~30年代にかけても国際的な知名度を維持し、ドイツの大衆映画を支え続けた功労者です。