1922 – 9.5mm 『カマルグの王』(アンドレ・ユゴン監督)

「9.5ミリ 劇映画」より

魔法をつかふ一人のボヘミアの女がルノ婚約女であるリヴエットに或る運命を告げました。所がその勇氣と武功とから人々の賞讃を得た傲慢なルノーはカマルグ王の綽名を受けたのであります。而してリヴエットを怖れさせた魔法つかひを罸しやうと思ひました。併しそのボヘミアの女に出會つた彼はその女から發する不思議なチヤームに捕へられたのであります。でその眼の權威とその輝やくほゝ笑みから彼女はルノーに泥地の眞中の一軒家であひゞきを約束しました。とその婚約者の裏切りを知らされたリヴエットは不實ものに出會ふべく同じ場所へと赴いたのであります。けれどルノーは人々が踏込むたゞ一つの淺瀬を示したその標示杭を變へたのであります。それでリヴエツトは彼女を葬むつた泥水よりも尚一層ルノーの裏切りから死んだのであります。この立派なドラマのその感動させる演出の所作にプロヴアンスの美しき空がまた詩的なありさまを加へます。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

1890年に公刊された地方色の色濃い運命劇をアンドレ・ユゴン監督が自身の脚本を元に映像化した一作。ゴーモン=パテ社アーカイヴに35ミリを元にした一時間版が現存。

冒頭から西部劇風の世界が展開し驚かされますが、南仏カマルグに伝わる独自の土着文化を元にしたものです。二枚目俳優として人気のあったシャルル・ド・ロシュフォールが「カマルグ王」を演じ、若手女優として台頭していたエルミール・ヴォーティエがヒロイン役、呪術的な力を持つ流浪の女にクロード・メレルを配しています。

アンドレ・ユゴンは大手制作会社と一線を画した独立系/仏インディ系映画監督の祖に位置づけられる人物です。ユゴン映画社製作による本作は宿命劇、土着風味やメロドラマの要素を上手く絡めて要を得た作品に仕上がっています。

本作の特徴としてはあまり強調したくないのですが、『カマルグの王』はフランスで初めて長編劇映画に女性の全裸を登場させた作品になるのではないかと思われます(9.5ミリ版ではカット)。1920年代のフランスの規制はアメリカや日本に比べて緩く、濡れ場とは違う、文脈に沿った裸体は許容される傾向にありました。倫理規制の強い時代ですし、原作に基くとは言え当時も賛否両論あったと思われます。それでも商業的リスクの大きいチャレンジに取り組む辺りが大手の監督とはやはり異なった姿勢となっています。

9.5ミリ版は1924年発売。早い時期に絶版になったタイトルで今回入手したフィルムもほぼ一世紀前のものとなります。1/4程に切り詰められていてもオリジナルの良さをある程度伝えているのかな、と。脚本の完成度、演技・演出の質も高く1920年の『労働』(アンリ・プクタル監督)、1919年の『恋するスルタン』と並び1920年前後の仏映画を代表する隠れた名作の一つです。

[公開年]
1922年

[IMDB]
Le Roi de Camargue

[メーカー]
仏パテ社

[メーカー記号]
692

[9.5ミリ版発売年]
1924年

[フォーマット]
9.5mm 無声 10m×6巻

1925 – スーパー8 『国定忠治』(澤田正二郎主演、マキノ省三監督)

「8ミリ 劇映画」より

1925 - 国定忠治(スーパ8)

Kunisada Chûji (1925, Tôa Kinema, dir/Makino Shôzô) Early 1970s Sungraph Super8 Print

映畫劇ではない。澤正一派が舞臺では十八番の「國定忠次」をその儘撮影したに過ぎない映畫である。然し澤田正二郎氏の忠次は立派に成功して居る。舞臺で聞く彼獨特の沈痛な臺詞こそ聞かれないが、彼一流の力強い演技は映畫に於ても充分味へられた。舞臺から映畫に移つた俳優の誰よりも巧い事は確かである。決して映畫俳優の演技ではない彼の演技が見る者に何の不自然さも感じさせず思はず拍手を惜しませぬ、彼の力強い演技には全く敬服した。その型の好き敏捷な動作は舞臺同様觀客を唸らせずに置かない。牧野省三氏の監督は映畫劇としては成功して居ないけれど澤正を活かした事は成功して居るそして舞臺俳優を使つて短日時の内にこれ丈のものを作り上げる事は恐らく氏以外にはあるまいと思はせた。老練と云ふ言葉が滿ちている監督振りである。俳優は澤正以外全くゼロで澤正ピカ一である事は止むを得ない。場面では山形屋の痛快さで唸らせ最後の落入りで十分泣かせて居る。

「主要映画批評:國定忠次」
(山本綠葉『キネマ旬報』183号 大正14年1月21日付)

関東一帯の不作と、悪政に苦しむ百姓を見かねた上州長脇差・国定忠治は悪代官を血祭に上げ、一党三百名と共に、関八州の捕手を向うに廻して赤城の山に立てこもった。しかし川田屋惣次などの情義により赤城の山を降りることにした。

「赤城の山も今宵が限り、生れ故郷の国定村や、縄張りを捨て、国を捨て、可愛いい子分の手前等とも別れ別れになる門出だ。加賀の国の住人・小松五郎義兼が鍛えし技物、万年田、溜の雪水に清めて、俺には生涯手前という強え味方があったのだ」……忠治は一人旅に出る。

その道中、通りがかった権堂の宿場外れで、百姓喜衛門の難儀を知り、事情を聞いて山形屋に乗りこみ、だまし取られた金を取り戻してやる。

忠治に恥ずかしめられた山形屋は、子分と共に小松原に待ち伏せ、闇討ちせんと企てたが、白刃一閃二閃忠次に切り倒される。 忠治は再び旅へ…

今回宣材の絵葉書紹介にあわせてスキャンをし直しました。強いコントラストのプリントで白飛びが目立つものの解像度が若干改善されました。

[原題]
国定忠治

[公開年]
1925年

[JMDb]
国定忠次

[IMDb]
Kunisada Chûji

[フォーマット]
スーパー8 白黒無声 55メートル 約10分(18コマ/秒)

1928 – 9.5mm『坂本龍馬』(枝正義郎監督、阪妻プロ)戦前伴野版

「阪東妻三郎関連」より

Sakamoto Ryoma (1928, Bantsuma Production, dir/Edamasa Yoshiro)
Banno Co., Early 1930s 9.5mm Print

枝正義郎氏を監督に迎えた最初期の龍馬映画9.5ミリ縮約版。100メートルリール2巻物。戦前~戦中期に信濃毎日新聞社のフィルムライブラリーが旧蔵していた品でリール側面に「貸出部」の印がありました。

前半に当たる第一リールでは薩長同盟結成から後藤象二郎らを巻きこんで大政奉還に挑むまでの流れが描かれています。前半ハイライトは新撰組による寺田屋襲撃での立ち回り。足元をとられながらも屋根伝いに逃れ、お龍らが準備していた船に乗りこんで何とか一命をとりとめます。

第二リールとなり、大政奉還を促すため二条城に赴いた象二郎の帰りが遅くなり海援隊内部に動揺が走ります。「この上は二条城に乗りこみ、慶喜討つべし」と隊員が声をあげても沈黙を貫く龍馬。業を煮やした仲間が一人、また一人と去っていく中、龍馬がまさに決断を下さんとしたその時、象二郎が吉報を持ち帰るのです。

第二リール後半は近江屋での龍馬暗殺を描いていきます。本作は京都見廻組による犯行説を採っており展開としては王道。ただ見廻組=実行犯説が定説化してきたのが大正期になってからですので、公開時にはまだ目新しい解釈だったのかなと思われます。

見廻組の佐々木只三郎(春日清)が名を偽って龍馬らに取次ぎを依頼、只三郎は返事を持ってきた下僕の藤吉(浪野光雄)を切って捨てると仲間を誘導し、龍馬と中岡慎太郎(春路謙作)を襲撃します。不意を突かれた龍馬は剣を抜く暇も与えられず、眉間に致命傷を負い、「身は死しても魂は…永久…皇国の…大海原を守護し奉る」と中岡に言い残して力尽きるのでした。

◇◇◇

伴野版の『坂本龍馬』はチャンバラと呼べる場面は前半の寺田屋しか見当たらず、それも決して派手な立ち回りではありませんでした。龍馬を剣豪、あるいはアクションヒーローとして扱おうとする意図はなかったと思われます。

また全長版でクレジットされている西郷隆盛や勝海舟は数秒のみ登場、女優陣(森静子、西條香代子、泉春子)の出演場面もカットされています。経済思想家、あるいは私人龍馬の姿はここにはありません。

30分弱に切り詰められたダイジェスト版で強調されていたのは、国の行く末を案じ、天皇主体の新たな日本を作るため組織間の調整に身を削り、夢半ばで倒れていく憂国の士、龍馬でした。

端々のセリフ(「それは皇国に殉する言葉ではなくて」「将軍家に一矢を報ひ皇国の爲に気を吐きませうぞ」)から伺えるように元々の脚本にそういった側面は含まれていたようです。その意味では戦後に流布した無頼派で、海外の諸事情に明るく、超派閥的に時代を動かしていく自由人の龍馬像とは根本的に違った設定です。9.5ミリ版編集は1930年代に行われたため、時代の要請として皇国史観や滅私奉公の要素が強調された可能性は高いと思われます。

もう一点重要な指摘として、1928年版『坂本龍馬』は撮影アングルや照明を重要視した映画作りとなっています。

寺田屋立ち回りでのミドルショットでは左側からメインの照明を当てつつ、陰が出すぎないよう右側から補助の光を照射(襟元の影で分かります)。さらに黒い髪が背景と一体化しないよう背後上から光を当て後光のような輪郭を形成しています。これは「ハリウッド式の3点ライティング」を採用した典型的作例です。

殺陣の速度感や迫力は『雄呂血』に軍配があがるものの、あの立ち回りは屋外ロケの自然光下で撮影されたもので光や陰に対する配慮は感じられませんでした。カメラマンとして業界で名を成した枝正義郎氏はコントラストや構図を重視。ハリウッドでは1920年代以降スタジオ撮影の比重が上がるにつれて照明の重要性が増し「ライティングで狙った絵を作る」発想が顕著になってきます。枝正氏はそういった傾向を自作に取り込もうとしているのです。『坂本龍馬』を評価する際もそういった要素を考慮する必要があるだろうと考えられます。

[原題]
坂本龍馬

[公開年]
1928年

[JMDb]
坂本龍馬

[IMDb]
Sakamoto Ryôma

[フォーマット]
9.5ミリ 白黒無声 100メートル×2巻 ノッチ無

1920 – 8mm 『キスメット』(オーティス・スキナー主演、ルイ・ガスニエ監督) 米ブラックホーク社プリント

« Kismet » (1920, Waldorf Photoplays Inc., dir/ Louis J. Gasnier)
US Blackhawk Standard8 Print, with Paul Killiam Annotations

1920年前後のハリウッドではエキゾチックな設定を生かしたドラマや恋愛物がひとつの人気ジャンルとなっていました。ルドルフ・ヴァレンチノ主演の『シーク』や『血と砂』へと発展していく傾向で、中世のバグダッドを舞台にした1920年作品『キスメット』も大きくはこの流れに含まれています。

米ブラックホーク社の8ミリ版は作品全体を展開しているものではなく、映画史家ポール・キリアム氏の字幕解説コメントを中心とし、同作の見どころをまとめていく形を取っています。

『キスメット』の見どころの第一はその主人公。同作は元々舞台での人気作を映画化したものです。悪徳カリフに妻と息子を奪われ、今は物乞いとして暮らしている中年男ハジの復讐を描いた物語で、舞台版で主演を演じたオーティス・スキナーが映画版でもハジ役を務めています。スキナーはこの時点で還暦を越えているベテラン俳優。アイドル人気を博す要素はほとんどありませんが長年舞台で培った演技力は際立っており、登場の瞬間から生き生きした表情や動作で画面を支配していきます。

第二の見どころは豪華な設定…と続いていくものの、正直そこまで圧倒される感じはありませんでした。8ミリの解像度はこういった豪華絢爛なセットや衣装の凄みは伝えきれない気がします。

権力争いに巻きこまれ、ハジは豊かな皇子であると身分を偽って宮殿内に入りこみます。このとき冷遇されているカリフの妻とハジの間に恋愛感情が生まれてきます。妖艶な妻を演じたのは1910年代に娘役として活躍したローズマリー・セビー。1920年代前半のハリウッドらしいエキセントリックなファッションが目を引きます(リアルのイスラム圏の人は違和感を覚えそうですが)。

最後の見どころして挙げられていたのが「アイリス・エフェクト(瞳/絞り風の表現効果)」を使用した場面。

この見せ方は素敵。映画史の教科書に載って良いレベルだと思います。作品後半の物語展開に軽く触れてフィルムは終了。

ポール・キリアム氏は戦後、無声映画を紹介するテレビ番組のコメンテーターを務めていました。1950~70年代アメリカでサイレント映画に慣れ親しんだ世代には良く知られた人物でもあります。ブラックホーク社がその番組の権利を一部取得しており、同社の8ミリにはこれらのテレビ番組をダイジェスト化した作品も多く含まれています。こちらの『キスメット』も同様の経緯で生み出されてきたものです。見どころをピンポイントで説明してくれる啓蒙的な性質のフィルムで、言われないと気づかないままだった情報も多く含まれていて思った以上に楽しめる内容でした。

8ミリ版で触れられていなかった重要なポイントが一つ。『キスメット』の監督はパール・ホワイト初期連続活劇を担当したルイ・ガスニエでした。『ポーリンの危難』と『拳骨』で他作が霞んでしまう傾向がありますが1920年の『キスメット』や1932年の『トパーズ』など節目節目で秀作を生み出してきた戦前実力派、本作でもそのセンスを確認する事ができます。

[IMDb]
Kismet

[Movie Walker]
キスメット

[公開]
1920年11月14日

[8ミリ版]
米ブラックホーク社

[カタログ番号]
860-535

1925 – 35mm 『凸凹の密輸人退治』断章 (スヴェンスク・フィルムインドゥストリ社、グスタフ・モランデル監督) 独プリント

« Polis Paulus’ påskasmäll » (1925, Svensk Filmindustri, dir/Gustaf Molander) 1920s German « Pat und Patachon als Polizisten » 35mm Fragments

先日ドイツのイーベイで題名不詳の35ミリフィルム数本がオークションにかけられていました。そのうちの一本がこちら。

ホテルのレストランで開かれているパーティーが舞台となっていて
 1)仮面姿の女性が燕尾服の男の背後にそっと近づいてキスをして逃げ去る場面
 2)年配の男女4人が談笑し食事をしている場面
 3)仮面をかぶった背の高い男性が投げキッスを送る場面
 4)会食中の女性が嬉しそうに微笑むクローズアップ
と展開していきます。

最初に目に留まったのはクローズアップされたぽっちゃり系の女優さんでした。

Stina Berg in « Polis Paulus’ påskasmäll »

1910~20年代北欧で活動していた名脇役スティーナ・ベウです!見覚えがあったため手持ちのデータを確認したところ1925年公開のスウェーデン作品『Polis Paulus’ påskasmäll』断章と判明しました。日本未公開作品で邦題はなく、英題(The Smugglers 「密輸人」)をそのまま訳出しています。

本作はデンマークの喜劇ユニット「フュー・オ・ビ(Fy og Bi)」が主演した喜劇連作の一作。同シリーズはデンマークのラウ・ラウリッツェン監督の手による物が多いのですが、本作で初めて国外(スウェーデン)の製作会社・監督に委ねられることになりました。

物語はディナ(スティーナ・ベウ)が自身の経営するホテルに姪アンヌ・マリー(リリィ・ラニ)を招待したことから始まります。アンヌ・マリーとステン(エリック・バークレイ)の恋愛模様と、町の警察官(ハラルド・マドセン=凹)と浮浪者(カール・シェンストローム=凸)の追跡劇が同時進行していく中で最後は地元で暗躍している犯罪グループが摘発されてハッピーエンド。

グスタフ・モランデルの監督・演出はこなれたもので喜劇要素を大事にしつつも多層的な展開を上手くまとめあげており、凍りついた湖や森などの美しい自然描写を随所に盛りこんでいます。

オーストリアとデンマークの映画協会がそれぞれ不完全な35ミリ版を所蔵しており、2009年に両者を組みあわせて1時間42分のリストア版が制作されています。入手した断片はこの修復版の中盤、50分20秒~52分40秒辺りに対応している部分でした。

[IMDb]
Polis Paulus’ påskasmäll

[Movie Walker]


[公開]
1925年4月6日

1915 – 『呪の列車』(ヴァイタグラフ社、ラルフ・インス監督) 米ハーポディオン社 2012年旧デジタル版 & 2017年新デジタル版

The Juggernaut (Vitagraph, 1915, dir/Ralph W. Ince)
2012 US Harpodeon Reconstruction DVD

アナログフィルム文化の衰退と共に『呪の列車』は再び忘却に埋もれていく運命となりました。世紀が変わり、デジタル文化の時代に同作を再度世に送り出したのが米ハーポディオン社でした。同社を運営しているW・ダスティン・アリグッド(W. Dustin Alligood)氏は2012年、ブラックホーク社が使用したのと同じ最終リールを元にDVDを発売しています。

2017年には新デジタル版を公開、オンラインストリーミング/DVD/ブルーレイの3つの形式に対応。今回は物理メディアは購入せずオンラインでデジタルデータのみ購入しました。

The Juggernaut (Vitagraph, 1915, dir/Ralph W. Ince)
2017 US Harpodeon Reconstruction Version

第5リールのみを扱っていた英ペリーズ版、米ブラックホーク版、ハーポディオン旧版と異なり、新デジタル版はジョン・グリッグス(John Griggs)氏の制作した「第4世代」の16ミリポジをベースにしていました。ダスティン氏によるブログの説明をまとめると以下になります。

第1世代)撮影時に発生したオリジナルの35ミリネガティヴ

第2世代)上映・レンタル用の35ミリポジティヴ

第3世代)ジョン・グリッグス氏個人製作による16ミリネガティヴ
レンタル用35ミリから16ミリネガを「自炊」した私家版。現存せず

第4世代)16ミリポジティヴ
数点現存。1点はイェール大学所蔵のジョン・グリッグス・コレクションに保管。
もう1点はフィルム収集家カール・マルケイムス(Karl Malkames)氏の死後に
ハーポディオン社ダスティン・アリグッド氏の手に渡る

第5世代)ハーポディオン社2017年デジタル版

ジョン・グリッグス氏は戦前から活動していた映画フィルム収集家。1930年代にレンタルで流通していた35ミリポジを入手、16ミリネガを作ってそこから複製した16ミリポジを発売、小銭を稼いでいたものです。数少ないこの私家版16ミリポジをハーポディオン社が入手しています。

染色プリントの美しさ、解像度の高さは一目瞭然ですがそれ以上に物語前半をデジタル化した功績が大きいのかな、と。初公開から百年以上が経過した2017年に初めて作品の全体像が見えたという話であって、このレベルにまとめあげたダスティン氏の情熱に敬意を表したいと思います。

【参考リンク】
Those Awful Reviews :ダスティン・アリグッド氏の個人サイト。『呪の列車』ジョン・グリッグス私家版ネガについて言及。それ以外にも面白い記事が沢山あって当サイトでも何度か引用しています。

Nitrate Ville:2016年に(当時まだ存命中だった)ブラックホーク社のデヴィッド・シェパード氏とダスティン・アリグッド氏が揉めた経緯を記録したスレッド。誤解に基づいた個人攻撃が含まれており、現在はスレッドが閉鎖され投稿できないようになっています。

1927 – 9.5mm 『メトロポリス』(フリッツ・ラング監督)英パテスコープ社5リール版

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「9.5ミリ 劇映画」より

1927- Metropolis (Fritz Lang)1930s UK Pathescope 9.5mm version
1927- Metropolis (Fritz Lang) 1930s UK Pathescope 9.5mm version

先日ドイツのフィルムコレクターさんと取引させていただく機会があり、『メトロポリス』9.5ミリ版を手に入れることができました。旧所有者はヴォルフ⁼ヘルマン・オッテさん。地元の教会で『カリガリ博士』の映写会を開くなどサイレント映画の再発見に尽力されておられます。

『メトロポリス』9.5ミリ版は公開から5年も経たない1931年に市販されておりラング作品の小型フィルム化では最も古いひとつになります。同監督では他に『死滅の谷』(SB537)『ニーベルンゲン第一部/第二部』(SB729/737)『スピオーネ』(SB752)が英パテスコープ社から発売されていました。

英語でのやりとりで出てきたのが手持ちの映写機の話。ヴォルフさんの挙げていたのはウルティエ社のトリ・フィルムとリゴニー社の映写機。戦後9.5ミリ映写機で最も完成度の高い機種で、この二台持ちは達人認定できるレベルです。そんなベテランにあなたは何を使ってるんですかと聞かれ一瞬ヒヤリ。これってフレンドリーな会話に見せかけて、迂闊な映写機名をあげるとお叱りを受けるパターンですよね。ボレックスのG916他数台で回答したところ「それなら大丈夫(Your projectors are okey!)」とのこと。あはは、本当に試験でしたか。どうやらパスした模様です。

とはいえ実際に映写機にかける機会はなさそうです。良い環境で保管させていただき、いつか次世代のフィルム愛好家に引き継いでいけたら良いかなと思っています。

[タイトル]
Metropolis

[公開年]
1927年

[IMDB]
tt0017136

[メーカー]
英パテスコープ社

[カタログ番号]
SB745

[フォーマット]
9.5mm 白黒無声 120m×5 ノッチ無

1920年代後半 – 『ニーベルンゲン』 絵葉書16枚(独ロス出版社)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」より

late-1920s-nibelungen-postcard00
1920年代の後半、独のロス出版社からフリッツ・ラング監督作『ニーベルンゲン』二部作の絵葉書セットが発売されていました。同社カタログナンバーで言うと:

672(8枚): 第一部『ジークフリート』主要人物紹介
673(6枚): 第一部『ジークフリート』名場面集 その一
675(9枚): 第一部『ジークフリート』名場面集 その二
676(5枚): 第二部『クリームヒルトの復讐』主要人物紹介
677(8枚): 第二部『クリームヒルトの復讐』名場面集
678(4枚): 第一部『ジークフリート』龍との闘い

が一連のシリーズとなっています(ドイツの絵葉書屋さんのHPに全画像あり)。単体で見ると珍しい訳ではなく一枚5~10ユーロ程度(700~1500円位)で取引されているのが常です。ただし枚数が多いためフルコンプ(40枚)が難しく良い状態での全数セットは4万円程度に値段が跳ねあがっています。

今回手に入れたのはこの内673と675からの13枚と672から2枚、678から1枚を合わせた16枚。第一部『ジークフリート』を好きな方が保管されていたセットのようで実使用された1枚を除くと非常に良いコンディションで届きました。

1929 – 9.5mm 『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』 (マルコ・ド・ガスティーヌ、仏パテ社4リール版)

「『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』[La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc, 1929]」
& 「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

9.5mm La Vie merveilleuse de Jeanne D'Arc (1929)
La Vie merveilleuse de Jeanne D’Arc
(1930s French Pathé 4339)

1995年の仏VHS版、1930年代前半の英9.5ミリ版2巻物に続き、30年代仏9.5ミリ4巻物を手に入れることができました。全体の映写時間は約50分で、劇場公開版の半分弱をカバーしています。


英パテスコープ社版より尺に余裕があるため、周辺エピソードまで収録されており映画の全体像にかなり近づいています。VHS版、ゴーモン・パテ・アーカイヴで以前に公開されていた35ミリ琥珀染色版(VHSと同一ソース)と画質を比べてみましょう。

1)生まれ故郷の村で従軍兵士の話に耳を傾けるジャンヌ


2)ジルドレが自分を王と偽ってジャンヌを試そうとする一幕より

左から順に9.5ミリ版、仏ルネ・シャトー社VHS版、パテ社所蔵35ミリ琥珀染色リストア版

VHS版(中央)はパテ社所蔵の35ミリ版(琥珀染色版、右端)を白黒に変えただけでアングルや流れに変更は加えておりません。一方の9.5ミリ版では人物が大きく映るようトリミングが施されています。1)の例で手前の袖の部分がカットされるなど全体の構図が大きく変わるアレンジの様相を呈しています。

リストア版は非常に美しい琥珀色をしています。35ミリと9.5ミリとでは面積比で15倍ほどの差があって、情報量としては35ミリ版に圧倒的な軍配。9.5ミリでは粒子感が残ってしまっていますよね。ただし35ミリ版の方は室内撮影、スタジオ撮影の場面で暗い部分が黒飛びしており、ディテールが潰れてしまっています。2)のジルドレのアクセサリーや衣装デザインを比べると9.5ミリの再現力も捨てたものではないのかな、と。

もう一つ重要な指摘としてVHS版と35ミリ修復版は人の面立ちがややほっそりしています。9.5ミリ版とアスペクト比の圧縮が微妙に異なっているのです。他の場面も同様で、どうやらデジタルリストア版では左右の比がやや圧縮されているのではないかと考えています。

genevois-sample01s
9.5ミリ版の横幅を8%縮めたもの
genevois-sample02
デジタルリストア版を黄色枠でトリミングしグレースケール変換

9.5ミリ版画像の縦サイズを変えず、横サイズを8%ほど縮めると修復版と同じ感じになりました。

[タイトル]
La Vie merveilleuse de Jeanne D’Arc

[原題]
La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc

[製作年]
1929年

[IMDB]
tt0020165

[メーカー]
仏パテ社

[メーカー記号]
4339

[9.5ミリ版発売年]
1934年

[フォーマット]
9.5mm、無声、白黒、4リール(480m、約50分)、ノッチ無

1929 – VHS 『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』 (マルコ・ド・ガスティーヌ、白黒リストア版)

「『ジャンヌ・ダルクの驚異の一生』[La Merveilleuse vie de Jeanne D’Arc, 1929]」より

2011~12年頃に入手した仏VHS版。

主演のシモーヌ・ジュヌヴォワは1930年代半ばには結婚して女優業を退いていましたが、戦後、晩年の1980年代になって夫であり元映画プロデューサーのコンティ氏と共に本作の修復プロジェクトを始動させました。実際に作業の中心となったのはルネ・リヒティグ女史で1985年には琥珀色に染色された125分のリストア版が完成。この修復版を白黒で収録したのがVHS版となります。

1990年代半ばのVHSからDVDに切り替わった時期に発売されたため自国フランスでもほとんど流通せず、中古市場でも見かけることが少ない一作。1929年の初公開時にはドライヤー版のインパクトとトーキーの到来にかすんでしまった上、VHSの発売ではDVDにかき消されてしまう辺りが「フランス無声映画史上最も不運な映画」の面目躍如でしょうか。

元々2010年頃、本作をデジタル化した動画が(ユーチューブではない、そして今ではもう存在していない)動画サイトに投稿されていました。そこで初めて見て完成度の高さに驚きVHSを探し始めました。海外発送不可のセラーさんの手元にあるのを見つけ、輸入代行業者に委託して送ってもらいます。VHSの規格が日仏では異なっており手持ちのデッキでは再生できずさらに別な業者に依頼してデジタル化してもらった覚えがあります。

[原題]
La Merveilleuse Vie de Jeanne D’Arc

[公開年]
1929年

[IMDB]
tt0020165

[メーカー]
仏ルネ・シャトー社

[発売年]
1995年頃

[フォーマット]
VHS

1931年 トーキー文庫 『無憂華』 (東亞キネマ作品)

Madame Takeko Kujo, Sorrowless tree (Muyuu-ge
« Madame Takeko Kujo, Sorrowless tree (Muyuu-ge) », a novelization based on the 1930 eponyme film.

1930年秋に公開された東亞のオールスター作品『無憂華』をノベライズした説明本。

内容は和風聖女伝。名門寺社の娘として生れ、貴族の元に嫁ぎ、歌人として、さらに社会活動家(関東大震災後の慈善活動、京都女子大創設)として名を上げながら若くして病に倒れた大正女性の生き様を描いた内容です。

聖女のイメージとは裏腹に実際の武子夫人は気さくな性格で、人間臭い悩みやトラブルを抱えていたことも知られていますが、小説版は暗黒面に踏みこむことはせず都合の悪い個所は曖昧にぼかされていました。

興味深いのは、本作が東亞キネマ後期の特作品として製作され時代劇および現代劇の俳優が数多く出演している点です。

独身時代と結婚後のヒロインをオーディションで選ばれた新人女優(鈴村京子と三原那智子)が別々に担当。若き武子の良き相談役だった籌子の方を個性派・久世小夜子が演じ、その他端役で里見明、歌川絹枝、石川秀道、千種百合子、大井正夫、冨士幸子、椿三四郎などが続々登場。

また映画中に劇中劇『洛北の秋』が挿入されていて原駒子と木下双葉、尾上紋弥が共演する仕掛けとなっています。嵐寛寿郎と羅門光三郎以外の俳優が揃っているのではないかという豪華布陣はオールスターの名に恥じないものです。

後期東亞キネマのサイン帳について調べていた時に完全版が現存しているのを知りました。機会があれば是非見てみたいと思っています。

[発行年]
昭和6年2月

[発行所]
映畫研究會

[フォーマット]
150頁 17.0cm×11.7cm

[定価]
二十銭

1912- 9.5mm 『ナピエルコウスカ嬢のカンボジア風舞踏』(1912年)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1912 9.5mm Napierkowska : Danses Cambodgiennes

ギリシヤの彫像のやうにすらつりつとした姿整で、華やかな衣装をつけてゆつたりとした態度の中に人をひきつけるその踊り子は、カンボチヤンダンスの不思議な現はれであります。中にも一座のスターは他のきらく數多の踊り子眞中に、更に一段と輝いて居るのを御覧ください。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

仏パテ社が9.5ミリ小型映画を最初に売り出した時にカタログに含まれていた初期のフィルムで、1912年に公開された中編映画(『La Fièvre de l’or』)の一場面を抽出したもの。

映画全体は金銭欲に取りつかれた男が亡父の銀行を乗っ取り投資ブームを仕掛け、人々が踊らされていく内容を描いています。途中の祝宴場面に使用されていたのがスタシア・ナピエルコウスカによるカンボジア風の舞踏でした。

[タイトル]
Danses Cambodgiennes

[原題]
La Fièvre de l’or

[製作年]
1912年

[IMDB]
tt0250381

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
47

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 10m *1リール

1931 – 16mm 『殉教血史 日本二十六聖人伝』を見る (池田富保、後半第2リール、仏語サウンド版)

「池田富保 関連コレクション」より

1931年に公開された池田富保監督の歴史物。純商業作品ではなく国内外に向け日本のキリスト教徒のイメージアップを図る目的で製作されたものです。

『殉教血史 日本二十六聖人伝』16mm 仏語サウンド版
The 26 Martyrs of Japan / Les 26 Martyrs du Japon (c1950s Kodak 16mm Print w/French Narration, 2nd and last reel)

現存は以前から知られていましたが、近年海外のサレジオ会修道院で発見されたプリントが修復され、2017年2月にヴァチカン市国で上映されています。また国内でも2017年10月に企画「シネマの冒険 闇と音楽 2017」の一環として国立映画アーカイブ所蔵のプリントが上映されていました。

本作の成立背景については『日本研究 第41巻』に収録された山科淳氏の論文(「映画『殉教血史 日本二十六聖人』と平山政十 : 一九三〇年代前半期日本カトリック教会の文化事業」 PDF)に詳しいためこちらでは割愛させていただきます。

成立過程の特殊さゆえ宗教映画・プロパガンダ映画の側面に光が当たりがちな作品です。しかし純粋に1930年代初頭の無声映画として見ても興味深い点が多いものです。

1)日活でオールスター時代劇を任される機会の多かった池田監督の作品であり、本作も同社の重要俳優が多く出演しています。普段と異なった役柄は力量ある役者(山本嘉一、澤田清)にとって実力を発揮する良いチャンスとなりました。

日本二十六聖人伝 山本嘉一
ペトロパプチスタ神父役の山本嘉一(Yamamoto Kaichi as Pedro Bautista)
日本二十六聖人伝 澤田清
ヨハネ諏訪野正道役の澤田清(Sawada Kiyoshi as Suwano Masamichi)

喜劇の印象が強い高勢実がキリスト教徒弾圧を目論む僧侶として登場、憎々しい演技で気を吐いています。また池田映画でおなじみの怪優・新妻四郎は教会に盗みに入りながら、神父の言動に心動かされ改心していく強盗・北海熊を好演しています。

26-martyrs-of-japan-21-nakamura-masatoshi
トマス小崎彦太郎役の中村政登志(Nakamura Masatoshi as Kozaki Hikotaro)
日本二十六聖人伝 片岡千恵蔵
フランシスコ大工伝吉役の片岡千恵蔵(Kataoka Chiezo as Denkichi)
日本二十六聖人伝 市川小文治
前田玄意役の市川小文治(Ichikawa Kobunji as Maeda genni)
日本二十六聖人伝 金平軍之助
高山右近太夫長房役の金平軍之助(Kanehira Gunnosuke as Takayama Ukon)
日本二十六聖人伝 山本礼三郎
コスマ竹屋吉郎兵衛役の山本礼三郎(Yamamoto Reizaburo as Takeya Kichirobei)

映画の後半は弾圧・殉教篇で、ここでは子役たち(中村英雄、中村政登志、尾上助三郎)の芸達者ぶりが目を引きます。慈悲心を備えた僧侶として市川小文治、大工役の千恵蔵がそれぞれ持ち味を出していました。

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細川ガラシャ夫人役の伏見直江(Fushimi Naoe as Gracia Hosokawa)
右にマダレナ桜木役の山田五十鈴
日本二十六聖人伝 滝沢静子
竹屋女房お仙役の滝沢静子(Takizawa Shizuko as Osen)
右に吉松役の中村寿郎
日本二十六聖人伝 浦辺粂子
お久役の浦辺粂子(Urabe Kumeko as Ohisa)

出演場面は短いながら女優陣も健闘。伏見直江は堂々たる細川ガラシャ夫人姿を披露、その脇に山田五十鈴の姿も見えます。山本礼三郎の妻として登場する滝沢静子の豊かな感情表現。そして物語最後、十字架にかけられた我が子を探し泥だらけの姿で刑場へやってくる母親は演技派・浦辺粂子さんでした。

2)また本作からは日本無声映画の技法が成熟期に入っている様子も伝わってきます。『殉教血史 日本二十六聖人』の制作・公開された1930~31年は、欧米でカメラ移動の可能性が追及されていた時期でもあります。米キング・ヴィダー監督が映画史に残るクレーン撮影の長回しを披露した(『群衆』『街の風景』)のがこの時期でしたし、ドイツでは長尺で凝ったトラベリング撮影が好んで使用されていました(『令嬢エルゼ』『会議は踊る』)。

『日本二十六聖人』後半は聖職者と信者たちが長崎まで長距離護送されていく展開でトラベリングが多用されています。大掛かりではないものの緊張感と豊かな空間性をもたらす効果を出しており、製作陣が当時の最先端の感覚を取りこんでいる様子が伝わってくるのです。

26-martyrs-22-sawada-kiyoshi-and-his-cross
A martyr and his cross

また、信者たちが牢獄に閉じこめられている場面では祈りを捧げる際に格子の影が十字に浮かびあがります。『裁かるゝジャンヌ』(1928年)や『サンライズ』(1927年)にも見られた発想です。後者はキネマ旬報洋画部門の一位を取った作品でもあり、当時の邦画界もノウハウとして共有していたと思われます。

手元にあるプリントはフランスから輸入したもので後半第二リールのみ。リード部分にはフランス語でタイトルが付されています。字幕はなく音声付きの形でした。ナレーションの語り口や音楽から1940年代後半~50年代のプリントと思われます。

『殉教血史 日本二十六聖人伝』は製作者・平山政十の奮闘にもかかわらず欧州で一般公開されぬままで山科論文でもフィルムの動きは掴めていないままでした。この16ミリ版は平山氏が現地に残したプリントが何らかの形で編集され、仏語圏のキリスト教徒の集いで上映されていた痕跡と考えることができます。第一リールに含まれている内容(秀吉の変心や慶長伏見地震)は欧米人に馴染みにくいため第二リールの受難篇だけを単独で上映していたのではないでしょうか。現在Youtubeに完全版がアップロードされておりますので、興味のある方は是非一度ご覧ください。

『殉教血史 日本二十六聖人伝』

[タイトル]
殉教血史 日本二十六聖人伝

[公開年]
1931年

[JMDb]
bg004370

[IMDB]
tt0422548

[フォーマット]
16mm シングルパーフォレーション サウンド版 仏語ナレーション入り 500メートル(約45分)

サンライズ・サイレンツ (Sunrise Silents, 2004-2012)

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2000年代中盤から10年代初頭にかけ、ハリウッド無声映画の理解と受容に大きな影響を与えたのが「サンライズ・サイレンツ」シリーズでした。米ロードアイランド州在住のリッチー・オリヴィエリ氏(Rich Olivieri)氏によるプロジェクトで、手作りのサイトを拠点としながら多くのサイレント作品のDVD-Rを販売していました。

クライテリオンやマイルストーン社、キノ社など無声映画のDVD化を手掛けている大手会社は幾つもありましたが、多くが手堅い有名な作品を扱っていたのに対し、サンライズ・サイレンツは長く忘れ去られてきた無名作を次々と取り上げていきます。カタログを眺めているだけで勉強になる稀有なサイトでした。

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経営的に難しい部分があったようで2012年に活動を停止。流通量が少なかったため中古で見かける機会もなく、現在は幻のコレクターズ・アイテムと化しました。

手元にあるのは4枚。当時もっと買っておけば…と後悔しています。

1. セダ・バラ主演『愛の試練』(The Unchastened Woman, 1925)
2. ヴァイオラ・ダナ主演 『肉弾王』 (The Ice Flood, 1926)
3. ジャクリーヌ・ローガン主演 『ルックアウト・ガール』 (The Look Out Girl, 1928)
4. ガートルード・オルムステッド主演 『スゥイート・アデライン』 (Sweet Adeline, 1926)

その他インス撮影所の様子を紹介した短編や、メイ・ブッシュ主演のキーストン喜劇などおまけも充実しています。

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1923 – 9.5mm 『いろり』 (ロベール・ブドリオズ監督)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

後に性格俳優として評価を確立していくシャルル・ヴァネル(Charles Vanel)が初めて注目を浴びた長編として知られています。

捨て子として育てられた女性アルレットをめぐり、兄弟の間で奪い合いが始まります。アルレットは弟のジャンに好意を持っていたのですが、養父は芸術家肌のジャンを認めず、兄のベルナールに無理矢理嫁がせてしまうのです。失意のうちに家を出るジャン。しかし夫の暴力に耐えきれなくなったアルレットは手紙でジャンに助けを求めるのでした…

物語は暗めで配役にも華やかさはありません。しかし兄(ヴァネル)、弟(ジャック・ド・フェロディ)、父(モーリス・シュルツ)の三者三様の演技は見応えがあり、田舎の封建的な様子をえぐっていく展開もなかなかで硬派な秀作と見ました。

[タイトル]
L’Atre

[公開年]
1923年

[IMDB]
tt0011901

[メーカー]
仏パテ社

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 200m *1リール

1915 – 9.5mm 『思ひ出(アルト・ハイデルベルク)』 (ジョン・エマーソン監督、米)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

古い大学町に遊学でやってきた皇太子と旅館の看板娘の恋と別れを描いたメロドラマ。19世紀末に戯曲として出版され人気を博しました。

サイレント映画としては1927年のハリウッド版が有名ですが、その12年前に最初に映画化されたものがこちら。人気絶頂だった美形俳優のウォーレス・リードとギッシュ姉妹の妹ドロシーが主演を務めています。

後年ドロシー・ギッシュは喜劇作品に多く主演するようになり、姉(リリアン・ギッシュ)のように悲劇に出たいとこぼしていました。ただ本作でも表情や動作がやはりコメディ風なんですよね。また、薬物中毒で早世したウォーレス・リードの貴重な主演作でもあります。

[タイトル]
Alt Heidelberg

[原題]
Old Heidelberg

[製作年]
1915年

[IMDB]
tt0005823

[メーカー]
独パテックス社

[フォーマット]
9.5mm

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第4巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

「テロ事件」と題された第4巻では、第2巻に登場してきた御曹司ハルが再登場してきます。マブゼは情婦の踊り子カーラをハルに接近させますが、そこから逆に足が付きカーラが逮捕されます。

敵の包囲網を感じ取ったマブゼ一味はハルとカーラの殺害を図り、さらには検事たちが集まっている警察への爆破を仕掛けていきます。

本来はこの次に完結編の第5巻があるのですがこちらは入手できなかったため今回の上映はこれまで。物語のポイントを上手く押さえ、作品の骨格にある連続活劇のリズム感を強調した素晴らしい編集でした。

[タイトル]
Dr. Mabuse: Das Attentat

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
231

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第2巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

『ドクトル・マブゼ』第2巻はマブゼ博士の特殊能力である「催眠術」に焦点を当てた内容です。

前半では観劇中に目を付けた富豪の青年に催眠術をかけ、ポーカーで有り金をむしりとっていきます。後半はターゲットを変え、伯爵夫妻をカジノで破産させ、妻を我が物にしようと画策していきます。

どちらのエピソードも短いながらも起承転結がはっきりしており、初期のラングが意識していた連続活劇的な早い物語展開を生み出していきます。

[タイトル]
Dr. Mabuse: I. Macht der Hypnose, II. Die Entführung

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
229

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1922 – 8ミリ 『ドクトル・マブゼ』 第1巻 (フリッツ・ラング監督)

「フリッツ・ラング関連 [Fritz Lang Related Items]」 & 「8ミリ 劇映画」より

『ドクトル・マブゼ』は大正11年(1922年)に公開されたフリッツ・ラング初期の長編映画です。悪漢マブゼ博士の一大絵巻は評判を呼び続編も幾度か作られました。

こちらは1950年代後半~60年代に市販されていた8ミリ版。元々は4時間以上ある大部な作品のエッセンスを5巻(計1時間強)に分けた短縮版となります。

第1巻は「株式取引所」と題されています。

冒頭では客車内での機密書類強奪事件が描き出され、後半は同事件に連動した株価格の上下動を利用してマブゼ博士が一儲けを企てていきます。

[タイトル]
Dr. Mabuse: Unternehmen Börse

[原題]
Dr. Mabuse, der Spieler – Ein Bild der Zeit

[製作年]
1922年

[IMDB]
tt0013086

[メーカー]
独DEFA社

[カタログ番号]
228

[フォーマット]
ノーマル8mm 60m(無声)

1924 – 9.5mm リン・ティン・ティン主演 『義勇の猛犬』

1929年に米アカデミー賞が初めて開催された時、審査員投票で最初に男優賞に選ばれたのはリン・ティン・ティンという名のシェパード犬でした。

栄えあるイベントの初代男優賞が果たして犬でいいのか…審査結果は一旦キャンセルされ、再度の投票で『嘆きの天使』主演のエミール・ヤニングスに付与されることが決まりました。

『義勇の猛犬 (Find Your Man)』はそんなリン・ティン・ティンの初期作。カナダを舞台とし、婚約者と会うために山村にやってきた青年が材木の密売事件に巻きこまれていく物語です。

閉じこめられていたリン・ティン・ティンが助走をつけて檻に突進、しがみついて乗り越えてしまう場面、蒸気機関車との並走場面など見どころ満載。当時の子供たち、そして大人たちまで魅了されたのがよく分かります。

[タイトル]
Rintintin, redoutable témoin

[原題]
Find Your Man

[製作年]
1924

[Movie Walker]
mv2543

[IMDB]
tt0014901

[メーカー]
仏パテ社

[カタログナンバー]
918

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *6リール