c1920 – 9.5mm 『隙あらば』(Indiscrétion)仏トリブレ社 (綺乃九五式 第4回試運転)

「9.5ミリ 成人向け動画」より

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Indiscrétion (Films Triboulet)

9.5mm、10m(約1分20秒)。

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登場人物は女性一人のみ。薄手のネグリジェ姿の女性が起床し、画面奥にある窓の鎧戸を開く場面で始まります。手前に数歩戻ってくると体の向きを変え、鏡に映った自分の姿を見つめます。続いてカメラの位置が変わり、椅子に座った女性が下着を手に取ってはいていく場面の描写となります。足元にストンと落ちるネグリジェ。

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鏡台を前にパフで白粉をはたいている女性の後ろ姿。最初は胸元まで髪を下ろしていましたが、この時点では束ねられてすっきりとまとめられています。下着姿の女性のバストショット。肩ひもがずり下がって乳房がむき出しとなっています。物思いにふけった表情。立ち上がって着替えを終わらせたところでフィルムが終了しました。

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そこまで凝ったものではないにせよ鏡や椅子、鏡台など調度品がしっかりしていて安っぽさがありません。またレースカーテンやシースルーのネグリジェなど透過性の高い小物が含まれることで画面の装飾性が高まっています。着替えの場面を順に撮影したソフトな内容で露出度は低め。それでも字幕を上手く活用し、「着替えを見ている誰か」の存在を匂わせることで背徳的な盗撮の感覚を演出しています。

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1913 – スタンダード8 パール・ホワイト主演 『紙人形(ペーパー・ドール)』

「8ミリ 劇映画」より

1913 Pearl White in Paper Doll
Pearl White in The Paper Doll (1913) Standard 8 Blackhawk Print

『ポーリンの危難』公開の前年、1913年のパール・ホワイトはクリスタル映画社と契約を結んでいて、この年だけでも百作を超える短編に出演する人気を見せていました。

観衆から暖かく受け入れられているのは劇場に顔を出す度に響き渡る万雷の歓声からも伺える。ホワイト嬢を「我らがパール」と呼ぶのが多くの者の習わしとなっていた。

ヴィックスバーグ・イヴニング・ポスト紙
1913年5月10日付

The warm place she holds in the estimation of the public is forcibly illustrated in the applauses accorded to her personnal appearance in any theater. « Our Pearl » has become the popular characterization of Miss White.

Vicksburg Evening Post
May 10, 1913

クリスタル社作品で現存が確認されており、8ミリで市販されていた一本が『紙人形』でした。不幸な偶然の重なりで恋人に殺人の嫌疑をかけられてしまった女性主人公アリス(パール・ホワイト)が間一髪でその疑いを晴らす内容です。

冒頭はグラスハウスでの撮影で、登場人物が一通り紹介されると屋外撮影に切り替わりピクニックとなります。思惑のすれ違いから彼氏のクレメンツ(チェスター・バーネット)とアリスに想いを寄せるレイナー(ジョゼフ・ベルモント)との諍いが生じ、カップルは喧嘩別れしてしまいます。

その後レイナーは拳銃の暴発事故で亡くなってしまうのですが、直前にクレメンツがレイナー宅を訪れていた様子が目撃されていました。動機もあり、状況証拠も揃っていることからクレメンツが殺人犯として逮捕されてしまうのです。事件を知ったヒロインが悲しみに暮れていると幼い妹がやってきます。さて二人が如何にして無罪を証明していくか…が見どころとなっています。

物語のメリハリや伏線が上手く機能しており、1911~13年頃の脚本術や演出術の高い水準を伺わせる好編となっています。

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1910年代前半の映画流儀にならい、『紙人形』の大半は膝上ショット(ミディアム・フル・ショット)で撮影されています。手紙等を見せる場面では手元の接写が使われたりするのですが、本作では拳銃に寄った場面が含まれていました。単調な流れに視覚的アクセントが生まれてくる訳で、こういった経験が蓄積されていく中で数年後に表情や事物のクローズアップ法とそのヴァリエーションが確立されていくことになります。

[タイトル]
The Paper Doll

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003252

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-424

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

ガブリエル・ロビンヌ Gabrielle Robinne (1886 – 1980) 仏

「フランス [France]」より

Gabrielle Robinne 1914 Autographed Postcard
Gabrielle Robinne 1914 Autographed Postcard

 ガブリエル=ロバンヌは飽くまで華麗な仏蘭西の女性である。彼女の持つ美。それは一時に何者をも直ちに感受せしめねば止まぬ、實感性の強い美である。而も彼女には他に求め得られぬ氣品が保たれて居る。さうしてロバンヌの美しその姿態より生れる彼女の技藝、そこには又情味と熱に富んで居る事も思はなくてはならない。『船火事』の如き『宮殿の怪火』の如き、『優しき復讐』の如き『空中王』の如き『呪の縁』の如き、美しい感じ好いパテー映畫は我々に永久に消えないロバンヌの印象とその藝術の影とを残して呉れたのである。

 ロバンヌは映畫界の名聲もさる事ながら、巴里の劇界の名望は偉大なものである。コメデー・フランセイ座附名女優として彼女の名は佛国の隅々までも喧傳されて居る。佛国パテー社は早くルネ・アルクサンダー氏を相手役として、ロバンヌの出演映畫撮影に從い數多の映畫を完成させて居った。その内戦亂となりその製作能力は衰へたが、一昨年頃より更にロバンヌ夫人と新契約の下に數多の新映畫を撮影して今日に至つて居る。ロバンヌの名聲、夫は今も尚輝いて居るのだ。

「歐州活動女優物語:ガブリエル・ロバンヌ夫人」
『活動画報』 1919年8月号

宛名面に「14年4月9日」のメモ書きあり。

1900年代に美貌を謳われた女優さん。コメディ・フランセーズ座の活動を中心としながらも折に触れ映画に出演していました。

確認できる最も古い作品はセグンド・ド・ショーモン監督による『吟遊詩人(トゥルバドール)』(1906年)、後半に一瞬窓際に立つお姫様として登場。『ギーズ公の暗殺』(1908年)ではギーズ公の愛人である侯爵夫人役で出演。その後もパテ社の初期短編(アルベール・カペラーニ、ルネ・ルプランス)で姿を見ることができます。

一般の人気があったのは1900年代で、この頃はクレオ・ド・メロードと並ぶ美人女優として無数の絵葉書が流通していました。なのですが1913年の『女心』を見直してみて、人気の落ち着いた10年代以降の方が演技力・表現力共に安定していたと思います。9.5mmフィルムでは『ギーズ公の暗殺』以外にもニュースリールで登場していたのを見た覚えがあります。

Gabrielle Robinne in Coeur de Femme (1913)
『女心』(Coeur de femme, 1913)より。
ゴーモン・パテ・アーカイヴ蔵

[IMDB]
Gabrielle Robinne

[誕生日]
7月1日

[出身]
フランス(モンリュソン)

[サイズ]
9.0 × 14.0cm

1917 – スーパー8 『移民』(Bネガ 東和版 1970年代初頭)

「8ミリ 劇映画」より

手持ちとしては4種類目となる『移民』のプリント。チャップリンがミューチャル社と契約していた時期に制作された作品はしばしば「ミューチャル短編」と括られます。しかし実際にミューチャル社のロゴを持つ最初期のプリントは『午前一時』を除くと見つかってないそうです。

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(左)東和版8mm (中)UK版9.5mm(右)フリッカー・アレイ版DVD

左二つは国外向けBネガ由来で、船酔いした左のロシア人がカメラを見ています。右のAネガ由来のDVDではチャップリンがカメラを直視しています。


credit
« Towa Company, Ltd.
Presents »

ネガやアウトテイクの流れをタイムラインで追っていくと次のようになります。

1919年、『移民』の制作元であるローン・スターフィルム社がミューチャル短編をクラーク・コーネリアス社に売却。この売却には米国内用のネガ(Aネガ)、輸出向けネガ(Bネガ)、さらに75万フィートに及ぶアウトテイクが含まれていました。

クラーク・コーネリアス社はロゴと字幕を新たに作り直し「チャップリン・クラシック・デラックス」シリーズと名付け、1920年から米国内での再公開を行っていきます。クラーク・コーネリアス社は1923年に一度発展解消、CCピクチャー社と名前を変えます。それでも「チャップリン・クラシック」のロゴは生き続け、1925年まで国内各地で上映が続けられていきました。

しかし時代に波にのまれ次第に売り上げは低迷、多額の負債を抱えたCCピクチャー社は借財返済のため二種類のネガとアウトテイクをオークションにかけます。1925年3月、国内向け/輸出向け2種類のネガの版権を買い取ったのがルイス・オーバック(Louis Auerbach)でした。同氏は自身が社長となり設立したミューチャル・チャップリン社に権利を売却します。

この時期に米コダスコープとの話が持ち上がり同社が16ミリのレンタル権を取得します。また国外向けに仏パテ/英パテスコープとの契約が結ばれ9.5mm形式のフィルム販売が行われていきます。両者の元になったのはチャップリン・クラシック版ですが16mm/9.5mmいずれも元々の形ではなく、細かな改変が行われたそうです。

1917~18年に実写されていたミューチャル版が発見されれば全ては解決されるはずですが、それが叶わない現在、1920年代前半に使用されていた「チャップリン・クラシック」を元に「正規版」の再構成が行われています。2014年にフリッカー・アレイ社から発売された『チャップリンのミューチャル喜劇 1916-1917』に至るまで、専門家が集まってできる限りオリジナルに近づけようとしているのです。

しかしながら「チャップリン・クラシック」版をベースにしていくと足りないパーツがあるようだ、ということが分かってきます。1917年のオリジナル公開時、著作権登録のために作品を要約した文章が残されていて、そこに書かれている幾つかの場面が見当たらないのです。

例えば(1)冒頭、船上でチャップリンが船酔いしたロシア人と出会った後、臭気に耐え兼ね船の逆側に逃げ出したところ、母に背をさすられ嘔吐している息子の場面があったとされています。また(2)食堂でヒロインと出会ったチャップリンが、食堂を出た後の場面があったとも記されています。

この場面は現時点では確認されておらず、フリッカー・アレイ版のDVD/ブルーレイにも収められておりません。ただ、数人の専門家が「昔TVで観た版にはあった」と記憶を頼りに証言。しかもその一人は「2000年頃、日本のテレビで見た『移民』にその場面があった」とのこと。

Two missing scenes from the Flicker Alley’s 2014 Blu-ray/DVD version. (left) « with his mother’s assistance he manages to empty the contents of his anatomy in a series of volcanic spasms »(right) « … necessitating a hasty grip on his mouth and a dash to therailing outside »

「ノーカット版」とされた今回の日本語字幕版8ミリはその意味で興味深い物でした。実際に「母親が嘔吐する息子の背中をさすっている場面」「食堂から出ていくチャップリンの後ろ姿」、他にもフリッカー・アレイ版に存在していない短い場面が幾つも含まれています。

食堂でのチャップリン/エドナを捉えている角度から、この8mmプリントがBネガ(輸出用ネガ)を元にしているのも確認できます。『移民』の日本初公開は1918年ですので、その際に輸入されたプリントから派生してきたものであるとすると「チャップリン・クラシック」以前、ミューチャル社配給によるプリント(ただしBネガベース)なのかなという印象です。

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1917-the-immigrant-jp-super8-10

(left) Japanese super8 (center) UK pathescope 9.5mm (right) Kodascope 16mm

同じBネガ由来の英パテスコープ版と比べてみると、UK版はアスペクト比(縦横比率)がおかしくなっていて、やや横が圧縮されていると分かります。東和版のエドナの方がややふっくらして見えますがこちらが元の比率。ただしトリミング幅も大きいです。コダスコープ版はAネガ由来のため撮影角度が異なっています。

正規版は本国初公開版(Aネガ)の再構成を目指していてBネガの出番はあまりないとも言えます。また2リール物=約24分程度にまとめたい、という整合性の問題も発生します(東和版は30分ほどの長さ)。それでも、本国の専門家すら見たことのない場面が日本のお茶の間で普通に放送されていたのが面白いところ。子供の頃に何度も見たあの『移民』にはお宝が隠されていたのでした。

参考文献
Chaplin’s Vintage Year: The History of the Mutual-Chaplin Specials / Michael J Hayde (2014年) Google Booksにて購入

1913 – 8mm パール・ホワイト主演 『夜に彷徨ふ女(ロスト・イン・ザ・ナイト)』 (米ブラックホーク社)

「8ミリ 劇映画」より

Standard 8 Pearl White in Lost in The Night
(1913, US Blackhawk Print)

サイレント時代に活躍した活劇俳優(ウィリアム・ダンカン、エディー・ポロ、ヘレン・ホームズ、ルース・ローランド…)たちは最初から連続活劇スターを目指していた訳ではなく、キャリア初期の試行錯誤の末に流れついた者がほとんどでした。パール・ホワイトも同様で、1910~13年の間に様々な役柄で1~2リール物の短編劇に出演しています。

このうち米ブラックホーク社が2作を8ミリで販売していました。1913年作品の『夜に彷徨ふ女』がその一つです。

パール・ホワイトは夢遊病を患った婦人役で登場。貴金属盗難をめぐるミステリと家族ドラマのどっちつかずになってしまい、当時の基準から見ても並以下の出来映えなのですが、パール・ホワイトのキャラクター作りの変遷を見ていく上で興味深い作品です。

もう一作の『紙人形(The Paper Doll)』が面白いという話も小耳に挟みました。どちらともデジタルソフト化されていませんので機会があったら8ミリで入手したいと思っています。

[タイトル]
Lost in The Night

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003083

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-417

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

1926 – 9.5mm セダ・バラ主演『マダム・ミステリー』

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1937年、20世紀フォックス社のフィルム所蔵施設で火災が発生し、収められたフィルムの全てが焼失しました。セダ・バラ出演作品の大半もこの大火で失われています。

『クレオパトラ』断片を含め、現在まで残された出演作品は6作のみとされています。その一つが引退作となった『マダム・ミステリー』で、こちらは9.5ミリの縮約版となります。

デビュー当初の妖婦・毒婦の設定が時代遅れとなっていく中で、セダ・バラは幾度かイメージチェンジを行いながら時代に適応しようとしていました。本作はローレル&ハーディーによる喜劇物で、セダ・バラは「街一つ吹き飛ばすほどの威力がある」超小型爆弾を運ぶ女スパイに扮しています。

後半、客船での移動は初期のセダ・バラ映画によく見られた展開(船に乗っている謎の美女)をパロディにしたものです。髪を下ろした就寝場面での妖しい存在感がさすがです。

[タイトル]
Madame Mystery

[公開]
1926年

[IMDB]
tt0017098

[メーカー]
米パテックス社

[カタログ番号]
C-110

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *2リール

サンライズ・サイレンツ (Sunrise Silents, 2004-2012)

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2000年代中盤から10年代初頭にかけ、ハリウッド無声映画の理解と受容に大きな影響を与えたのが「サンライズ・サイレンツ」シリーズでした。米ロードアイランド州在住のリッチー・オリヴィエリ氏(Rich Olivieri)氏によるプロジェクトで、手作りのサイトを拠点としながら多くのサイレント作品のDVD-Rを販売していました。

クライテリオンやマイルストーン社、キノ社など無声映画のDVD化を手掛けている大手会社は幾つもありましたが、多くが手堅い有名な作品を扱っていたのに対し、サンライズ・サイレンツは長く忘れ去られてきた無名作を次々と取り上げていきます。カタログを眺めているだけで勉強になる稀有なサイトでした。

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経営的に難しい部分があったようで2012年に活動を停止。流通量が少なかったため中古で見かける機会もなく、現在は幻のコレクターズ・アイテムと化しました。

手元にあるのは4枚。当時もっと買っておけば…と後悔しています。

1. セダ・バラ主演『愛の試練』(The Unchastened Woman, 1925)
2. ヴァイオラ・ダナ主演 『肉弾王』 (The Ice Flood, 1926)
3. ジャクリーヌ・ローガン主演 『ルックアウト・ガール』 (The Look Out Girl, 1928)
4. ガートルード・オルムステッド主演 『スゥイート・アデライン』 (Sweet Adeline, 1926)

その他インス撮影所の様子を紹介した短編や、メイ・ブッシュ主演のキーストン喜劇などおまけも充実しています。

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