1930年代中盤・日本 9.5ミリ個人撮影動画 『無題(素人劇)』

9.5ミリ 個人撮影動画 [日本]より

Mid 1920s Japanese 9.5mm Home Movie (Amateur Drama)

道端に座りこんでいた麦藁帽姿の老人。背伸びをしてふと目をやると道路に財布が落ちています。先ほど通り過ぎていった男が落としたようです。

恐々と財布を拾うと中には札束が。はてさて、どうしたものか。

料理屋に向かう男の後ろ姿。うどんを食べて腹一杯、酒も進みます。

店を出たところで、「おい待て」の声。警官に見つかったようです。慌てて逃げだした男、「逃げると撃つぞ!」。哀れ御用の身となるのでした…

…となったらさぁ大変だ。豪遊は夢想に留め、男は財布を届けることにしたのでした。

1930年代中頃~後半に制作された9.5ミリ素人劇。以前に紹介した『無題(草上の昼食)』と同じ東北で撮影された一連の動画のひとつ。短い時間内で起承転結をまとめ道徳的なオチもついています。料理屋の場面では壁の品書きも映っていますが光の加減から屋内ではないようで、戸外に簡易セットを自作したと思われます。

c1920 – 9.5mm 『隙あらば』(Indiscrétion)仏トリブレ社 (綺乃九五式 第4回試運転)

「9.5ミリ 成人向け動画」より

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Indiscrétion (Films Triboulet)

9.5mm、10m(約1分20秒)。

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登場人物は女性一人のみ。薄手のネグリジェ姿の女性が起床し、画面奥にある窓の鎧戸を開く場面で始まります。手前に数歩戻ってくると体の向きを変え、鏡に映った自分の姿を見つめます。続いてカメラの位置が変わり、椅子に座った女性が下着を手に取ってはいていく場面の描写となります。足元にストンと落ちるネグリジェ。

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鏡台を前にパフで白粉をはたいている女性の後ろ姿。最初は胸元まで髪を下ろしていましたが、この時点では束ねられてすっきりとまとめられています。下着姿の女性のバストショット。肩ひもがずり下がって乳房がむき出しとなっています。物思いにふけった表情。立ち上がって着替えを終わらせたところでフィルムが終了しました。

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そこまで凝ったものではないにせよ鏡や椅子、鏡台など調度品がしっかりしていて安っぽさがありません。またレースカーテンやシースルーのネグリジェなど透過性の高い小物が含まれることで画面の装飾性が高まっています。着替えの場面を順に撮影したソフトな内容で露出度は低め。それでも字幕を上手く活用し、「着替えを見ている誰か」の存在を匂わせることで背徳的な盗撮の感覚を演出しています。

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1913 – スタンダード8 パール・ホワイト主演 『紙人形(ペーパー・ドール)』

「パール・ホワイト連続活劇 [Pearl White Serials]」
& 「8ミリ 劇映画」より

1913 Pearl White in Paper Doll
Pearl White in The Paper Doll (1913) Standard 8 Blackhawk Print

『ポーリンの危難』公開の前年、1913年のパール・ホワイトはクリスタル映画社と契約を結んでいて、この年だけでも百作を超える短編に出演する人気を見せていました。

観衆から暖かく受け入れられているのは劇場に顔を出す度に響き渡る万雷の歓声からも伺える。ホワイト嬢を「我らがパール」と呼ぶのが多くの者の習わしとなっていた。

ヴィックスバーグ・イヴニング・ポスト紙
1913年5月10日付

The warm place she holds in the estimation of the public is forcibly illustrated in the applauses accorded to her personnal appearance in any theater. « Our Pearl » has become the popular characterization of Miss White.

Vicksburg Evening Post
May 10, 1913

クリスタル社作品で現存が確認されており、8ミリで市販されていた一本が『紙人形』でした。不幸な偶然の重なりで恋人に殺人の嫌疑をかけられてしまった女性主人公アリス(パール・ホワイト)が間一髪でその疑いを晴らす内容です。

冒頭はグラスハウスでの撮影で、登場人物が一通り紹介されると屋外撮影に切り替わりピクニックとなります。思惑のすれ違いから彼氏のクレメンツ(チェスター・バーネット)とアリスに想いを寄せるレイナー(ジョゼフ・ベルモント)との諍いが生じ、カップルは喧嘩別れしてしまいます。

その後レイナーは拳銃の暴発事故で亡くなってしまうのですが、直前にクレメンツがレイナー宅を訪れていた様子が目撃されていました。動機もあり、状況証拠も揃っていることからクレメンツが殺人犯として逮捕されてしまうのです。事件を知ったヒロインが悲しみに暮れていると幼い妹がやってきます。さて二人が如何にして無罪を証明していくか…が見どころとなっています。

物語のメリハリや伏線が上手く機能しており、1911~13年頃の脚本術や演出術の高い水準を伺わせる好編となっています。

1913-paper-doll-11

1910年代前半の映画流儀にならい、『紙人形』の大半は膝上ショット(ミディアム・フル・ショット)で撮影されています。手紙等を見せる場面では手元の接写が使われたりするのですが、本作では拳銃に寄った場面が含まれていました。単調な流れに視覚的アクセントが生まれてくる訳で、こういった経験が蓄積されていく中で数年後に表情や事物のクローズアップ法とそのヴァリエーションが確立されていくことになります。

[タイトル]
The Paper Doll

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003252

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-424

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

ガブリエル・ロビンヌ Gabrielle Robinne (1886 – 1980) 仏

「フランス [France]」より

Gabrielle Robinne 1914 Autographed Postcard
Gabrielle Robinne 1914 Autographed Postcard

 ガブリエル=ロバンヌは飽くまで華麗な仏蘭西の女性である。彼女の持つ美。それは一時に何者をも直ちに感受せしめねば止まぬ、實感性の強い美である。而も彼女には他に求め得られぬ氣品が保たれて居る。さうしてロバンヌの美しその姿態より生れる彼女の技藝、そこには又情味と熱に富んで居る事も思はなくてはならない。『船火事』の如き『宮殿の怪火』の如き、『優しき復讐』の如き『空中王』の如き『呪の縁』の如き、美しい感じ好いパテー映畫は我々に永久に消えないロバンヌの印象とその藝術の影とを残して呉れたのである。

 ロバンヌは映畫界の名聲もさる事ながら、巴里の劇界の名望は偉大なものである。コメデー・フランセイ座附名女優として彼女の名は佛国の隅々までも喧傳されて居る。佛国パテー社は早くルネ・アルクサンダー氏を相手役として、ロバンヌの出演映畫撮影に從い數多の映畫を完成させて居った。その内戦亂となりその製作能力は衰へたが、一昨年頃より更にロバンヌ夫人と新契約の下に數多の新映畫を撮影して今日に至つて居る。ロバンヌの名聲、夫は今も尚輝いて居るのだ。

「歐州活動女優物語:ガブリエル・ロバンヌ夫人」
『活動画報』 1919年8月号

宛名面に「14年4月9日」のメモ書きあり。

1900年代に美貌を謳われた女優さん。コメディ・フランセーズ座の活動を中心としながらも折に触れ映画に出演していました。

確認できる最も古い作品はセグンド・ド・ショーモン監督による『吟遊詩人(トゥルバドール)』(1906年)、後半に一瞬窓際に立つお姫様として登場。『ギーズ公の暗殺』(1908年)ではギーズ公の愛人である侯爵夫人役で出演。その後もパテ社の初期短編(アルベール・カペラーニ、ルネ・ルプランス)で姿を見ることができます。

一般の人気があったのは1900年代で、この頃はクレオ・ド・メロードと並ぶ美人女優として無数の絵葉書が流通していました。なのですが1913年の『女心』を見直してみて、人気の落ち着いた10年代以降の方が演技力・表現力共に安定していたと思います。9.5mmフィルムでは『ギーズ公の暗殺』以外にもニュースリールで登場していたのを見た覚えがあります。

Gabrielle Robinne in Coeur de Femme (1913)
『女心』(Coeur de femme, 1913)より。
ゴーモン・パテ・アーカイヴ蔵

[IMDB]
Gabrielle Robinne

[誕生日]
7月1日

[出身]
フランス(モンリュソン)

[サイズ]
9.0 × 14.0cm

1913 – 8mm パール・ホワイト主演 『夜に彷徨ふ女(ロスト・イン・ザ・ナイト)』 (米ブラックホーク社)

「パール・ホワイト連続活劇 [Pearl White Serials]」
& 「8ミリ 劇映画」より

Standard 8 Pearl White in Lost in The Night
(1913, US Blackhawk Print)

サイレント時代に活躍した活劇俳優(ウィリアム・ダンカン、エディー・ポロ、ヘレン・ホームズ、ルース・ローランド…)たちは最初から連続活劇スターを目指していた訳ではなく、キャリア初期の試行錯誤の末に流れついた者がほとんどでした。パール・ホワイトも同様で、1910~13年の間に様々な役柄で1~2リール物の短編劇に出演しています。

このうち米ブラックホーク社が2作を8ミリで販売していました。1913年作品の『夜に彷徨ふ女』がその一つです。

パール・ホワイトは夢遊病を患った婦人役で登場。貴金属盗難をめぐるミステリと家族ドラマのどっちつかずになってしまい、当時の基準から見ても並以下の出来映えなのですが、パール・ホワイトのキャラクター作りの変遷を見ていく上で興味深い作品です。

もう一作の『紙人形(The Paper Doll)』が面白いという話も小耳に挟みました。どちらともデジタルソフト化されていませんので機会があったら8ミリで入手したいと思っています。

[タイトル]
Lost in The Night

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003083

[メーカー]
米ブラックホーク社

[メーカー記号]
810-417

[フォーマット]
Standard 8mm 400フィート

1926 – 9.5mm セダ・バラ主演『マダム・ミステリー』

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1937年、20世紀フォックス社のフィルム所蔵施設で火災が発生し、収められたフィルムの全てが焼失しました。セダ・バラ出演作品の大半もこの大火で失われています。

『クレオパトラ』断片を含め、現在まで残された出演作品は6作のみとされています。その一つが引退作となった『マダム・ミステリー』で、こちらは9.5ミリの縮約版となります。

デビュー当初の妖婦・毒婦の設定が時代遅れとなっていく中で、セダ・バラは幾度かイメージチェンジを行いながら時代に適応しようとしていました。本作はローレル&ハーディーによる喜劇物で、セダ・バラは「街一つ吹き飛ばすほどの威力がある」超小型爆弾を運ぶ女スパイに扮しています。

後半、客船での移動は初期のセダ・バラ映画によく見られた展開(船に乗っている謎の美女)をパロディにしたものです。髪を下ろした就寝場面での妖しい存在感がさすがです。

[タイトル]
Madame Mystery

[公開]
1926年

[IMDB]
tt0017098

[メーカー]
米パテックス社

[カタログ番号]
C-110

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *2リール

サンライズ・サイレンツ (Sunrise Silents, 2004-2012)

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2000年代中盤から10年代初頭にかけ、ハリウッド無声映画の理解と受容に大きな影響を与えたのが「サンライズ・サイレンツ」シリーズでした。米ロードアイランド州在住のリッチー・オリヴィエリ氏(Rich Olivieri)氏によるプロジェクトで、手作りのサイトを拠点としながら多くのサイレント作品のDVD-Rを販売していました。

クライテリオンやマイルストーン社、キノ社など無声映画のDVD化を手掛けている大手会社は幾つもありましたが、多くが手堅い有名な作品を扱っていたのに対し、サンライズ・サイレンツは長く忘れ去られてきた無名作を次々と取り上げていきます。カタログを眺めているだけで勉強になる稀有なサイトでした。

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経営的に難しい部分があったようで2012年に活動を停止。流通量が少なかったため中古で見かける機会もなく、現在は幻のコレクターズ・アイテムと化しました。

手元にあるのは4枚。当時もっと買っておけば…と後悔しています。

1. セダ・バラ主演『愛の試練』(The Unchastened Woman, 1925)
2. ヴァイオラ・ダナ主演 『肉弾王』 (The Ice Flood, 1926)
3. ジャクリーヌ・ローガン主演 『ルックアウト・ガール』 (The Look Out Girl, 1928)
4. ガートルード・オルムステッド主演 『スゥイート・アデライン』 (Sweet Adeline, 1926)

その他インス撮影所の様子を紹介した短編や、メイ・ブッシュ主演のキーストン喜劇などおまけも充実しています。

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1917 – 9.5mm 『移民』(Bネガ 仏パテ社版 1929年初頭)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

1917 - 9.5mm Immigrant (Chaplin 1929 Nega-B-based French Pathé Print)1917-immigrant-fr-and-uk
『移民』を含むミューチュアル社期(1916-17年)のチャップリン短編は国内(USA)向けと国外向けの二つのネガが準備されていたことが知られています。二種類のネガは異なったカメラで撮影されたもので、同一場面でもアングルなどが微妙に異なっていたります。

1920年代末に仏パテ社と英パテスコープ社から発売されていた9.5mm版はBネガを元にしています。こちらは仏パテ版。英パテスコープとも異なっており、

1)仏語は編集での切り詰めが目立ち、英語版の流れの方がオリジナルに近い
2)仏語版はややコントラストが強い
3)イギリス版はフィルムが右に寄る形でプリントされており、映写時には右端が切れる

などの違いを挙げることができます。

1917-immigrant-nega-a-based-dvd

camera

Aネガを元にしたDVDと比べてみるとアングルの違いがはっきりわかります。図示したようにBネガを担当するカメラが左に置かれています。

他の場面からも様々な発見があるので、別記事にて分析をまとめていく予定です。

フラッター嬢の『転生の舞』(1907年、仏、セグンド・ド・ショーモン監督、モノクロ版)

「9.5ミリ動画 05a 劇映画」より

フリユツテ孃は人間の美しい蝶々であります。で、その羽根は我々の眼であらゆる不思議な變化を受けます。パテー ベビーはあなた方にかずかずの色をもつとその翼のこの可愛いゝ蟲を御覧に入れます。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

仏パテ社の9.5mmフィルムカタログで12番となる初期の一本。

映画の誕生当初からリアリティを追及する動きと、ファンタジーに向かう動きの二つが見られました。メリエス作品などは後者に位置づけられ、今回ご紹介するスペイン出身のセグンド・ド・ショーモン作品もその流れに属しています。『転生の舞』は最初期の特撮/トリックフィルムで、蝶に扮した女性の羽が羽ばたくごとに模様と形を変えていきます。

パテ社9.5㎜版では手彩色(ステンシルカラー)の物も発売されておりますが今回入手できたのはモノクロ版。華やかな彩色版とはまた違った繊細な美しさがあります。

[タイトル]
Miss Flutter: Metempsycose

[原題]
Métempsycose

[製作年]
1907年

[IMDB]
tt0451432

[メーカー]
仏パテ社

[カタログ番号]
12

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 10m *1リール

手彩色版のデジタル化はこちらから(YouTube)

1913 – 16mm 『エルダーブッシュ峡谷の争い』(The Battle at Elderbush Gulch)

グリフィス監督の初期短編。白人とアメリカン・ネイティヴとの争いを描いた一作で、枠組みとしては西部劇。しかし戦いの描写や物語の運びは西部劇が確立された後代と大分異なっています。

興味深いことに男中心の価値観の中で女たちの動きが丁寧に追われています。生まれたばかりの赤子を奪われ動揺する若い母親(リリアン・ギッシュ)、火の手をくぐり赤ん坊を助け出すお下げ髪の少女(メエ・マーシュ)。1912~14年はグリフィスの創造力が最も豊かだった時期で、生まれようとしている西部劇映画にみずみずしい息吹を注ぎこんでいました。

Lillian Gish & Mae Marsh in The Battle at Elderbush Gulch (16mm B&W Blackhawk Print)

[タイトル]
The Battle at Elderbush Gulch

[製作年]
1913年

[IMDB]
tt0003662

[メーカー]
米ブラックホーク社

[フォーマット]
16mm (ダブルパーフォレーション、無声)

1909 – 9.5mm 『好敵手(良き猫には良いネズミ)』(À bon chat, bon rat)

ベッドで仲良くごろごろしている猫とネズミを撮影した一分ほどの映像。カミーユ・ドゥ・モーロン監督による1909年作品。市販9.5㎜フィルムとしては最初期のカタログ番号14番で発売されました。

原題「ア・ボン・シャ・ボン・ラ」はフランスのことわざで、敵であっても尊敬できるなら切磋琢磨しあえる相手に変わる意味で使われます。

An Early Cat-and-Mouse-Styled Proverbial Short Film by Camille de Morlhon

[タイトル]
À bon chat, bon rat

[製作年]
1909年

[IMDB]
tt0432634

[メーカー]
仏パテ社

[カタログナンバー]
14

[フォーマット]
9.5mm (ノッチ有) 20m *1リール

c1920 – 9.5mm『ヒトデとウニ』(科学/生物)

1923年、パテ・ベビーの動画フィルムが市販された際にNo.11として発売された最初期の作品。レトロな質感で撮影された生き物たちが幻想的な動きを見せます。海洋生物・水産物はスクリーン映えすることもあってこの後も頻繁に登場してきます。

Les Etoiles de mer et l’Oursin (Pathé-Baby 9.5mm B&W Print)

[原題]
Les Etoiles de mer et l’Oursin

[メーカー]
仏パテ社

[仏パテ社版カタログ番号]
11

[フォーマット]
30フィート(ノッチ有)