1930年前後 – 9.5mm個人撮影動画 『沖縄』(亀甲墓、バーキ/竹かご、民家、農作業など)【6/7 追記あり】

「9.5ミリ動画 05b 個人撮影動画」より

1930年頃 日本・個人撮影動画『沖縄』
c1930 Okinawa (9.5mm Private Film)

以前にデジタル化した『かごめかごめ』と同じ東京帝大薬学部関連のフィルム群より。研究者が何らかの理由(研究会?フィールドワーク?)で沖縄を訪れ、一人が手持ちの動画カメラで現地風景を撮影したものです。時期は1930年前後。フィルムの長さは20m、コマ数は2200弱で、13コマ毎秒で再生すると2分40秒になります。細かく見ていくと:

01

1)湾岸部に広がる民家が映し出されます。極小さく人影が見えます。

0202b

2)亀甲墓

03

3)暗転後に海岸部が映し出されます。自生している木々を撮影している感じがします。

0404b

4)ややぬかるんだ広い道の左右にお店が並んでいます。路肩に乗用車が一台。カメラが移動していくと左手には「明治 リボンキャラメル」の看板が見えます。

05

5)やや深めの籠を抱えた地元民が民家の奥に消えていく後ろ姿

06

6)路上に立っている男性の姿

07

7)天秤をかついだ少年

08

8)海岸に沿った細い道、向こう側からやってくる女性の影、同時にカメラの前を横切っていく別な女性の横顔

09

9)先のショットの細い道を角度を変えて撮影

10

10)橋を渡っていく3人の女性の後ろ姿。頭の上にバーキと呼ばれる竹かごを乗せています

11

11)同じ橋の上で、幼い弟と妹の面倒をみながら働いている3人の若い女性

12

12)集会所か何かの建物。入口付近に自転車が一台。

13

13)笠をかぶり畑仕事をしている地元民

14

14)自生している植物

15

15)研究所の同僚と思われる男性たち

16

16)同僚たちが道なりに歩いていく後ろ姿、その先には中国文化の影響を感じさせる屋根の建物が見えます

17

17)畑の脇に並んでいるサイロのような背の低い建物

18

18)自生している植物(細長く先が尖った葉っぱ。ツルアダン?)

フィルムそのものには撮影場所が明記されていません。2)、10)、16)から沖縄の(市街地ではなく)農村部〜漁村部を撮影したと考えることができます。また3)、14)、18)など木々や野草を撮影した映像が見られます。薬草学を研究していたためこういった要素に反応しやすかったものと思われます。

古いフィルムで汚れやキズなどが目立ちます。一部を綺乃九五式でスキャンし、その後デジタル修復したのが下の動画です。スキャンは2400×1800ピクセルで行いましたが抜粋版は1200×900まで画質を落としています。

1930年頃 日本・個人撮影動画『沖縄』

沖縄の戦前写真については時折メディアに取り上げられていますが、個人が撮影した動画は珍しいと思われます。撮影した正確な場所は分かりませんが、戦前の沖縄史に詳しい方であれば特定できそうです。

同時期の視覚資料として、国立国会図書館のデジタルアーカイブに収められていた
『沖縄県写真帖. 第1輯』(1917年、小沢書店)
『沖縄写真帖. 第1輯』(1925年、坂口総一郎)
『沖縄写真帖. 第2輯』(1925年、坂口総一郎)
を参考にさせていただきました。


【6/7 追記】

20200607-okinawa-times-01

「90年前の沖縄発見!」

2020年6月7日、沖縄タイムス紙で綺乃九五式スキャンによる動画『沖縄』を紹介していただきました。お時間を割いて対応してくださった編集部の皆様、および関係者の皆様に感謝申し上げます。同記事には本サイトでは特定できなかった詳細な撮影場所の情報が含まれています。この辺は専門家に任せるのが一番ですね。

補足の情報があるのでこちらで追記させていただきます。

昭和5年、朝比奈泰彦氏の下で学んでいた木村康一氏、新井俊次氏が『薬学雑誌』582号に学術論文「漢藥串羗の生藥學的研究」を発表、同論文ではシダの一種「ハカマウラボシ」を分析しており、その際に「琉球産ハカマウラボシ」のサンプルを比較対象として入手した旨の記述がありました。

上海品をハカマウラボシなりと決し得たるは日本羊歯類圖集の緒方正資氏より琉球産ハカマウラボシの生植物の惠與を得て比較解剖したるによるものなり。

「漢藥串羗の生藥學的研究」(木村康一&新井俊次、
『朝比奈泰彦及協力者報文集:
植物学生薬学之部』より、 昭和9-10年)

『沖縄』には野生の植物を映した次のショットが含まれています。

okinawa-sample

中央左の植物がメインの被写体に見えますが、実は手前に生えているシダも意識してフレームに収められています。昭和5年に朝比奈教授が地衣類の研究を本格化させ、その下で学んでいた研究者が沖縄に自生するシダに触れていた状況ともリンクする映像かな、という気もします。

もう一点、朝比奈泰彦氏の自伝『私乃たどった道』を読んでいて次の一節を見つけました。

地衣採集の布袋をブラブラさせて他の人々と一緒に活動している風景は私のパテーベビーのフヒルムに残っている。

(『私乃たどった道』、朝比奈泰彦、1949年、85ページ)

まさかのパテベビー登場。朝比奈氏自身が9.5ミリ動画カメラと映写機を所有しフィールドワークに活用していたのです。最先端のガジェットを趣味に仕事にとフル活用するのが同氏研究室では当たり前になっていたのでしょうね。

9.5mm 個人撮影動画 1930年代初頭 – 台灣/台湾の伝統的な結婚式 (大阪在住・川口光羊氏撮影)

「9.5ミリ動画 05b 個人撮影動画」より

c1930-film-damateur-possibly-in-taiwan-00

先日スキャンしていた戦前個人撮影動画で興味深いフィルムを見つけました。手振れが多く解像度も高くありませんが、珍しい画像が含まれているためこちらで紹介させていただきます。撮影者は大阪在住の川口光羊氏。伴野製の20メートルケースに収められていますが実際の長さは10メートル。総コマ数が約1100で13コマ毎秒で再生すると1分半になりました。

sample00sample02

フィルムは冒頭で大通りの人々を捉えていきます。やや袖口の開いた七分丈の上着や靴のデザインが日本とは違っています。

sample03asample03b

大通りでのパレード。看板には「連興商店」「大福商店」の文字。提灯や幟のようなものを担いだ人々。傘をかぶった男性が腰の高さで御輿を運んでいます。

sample04

目の前を横切っていく幟。動きが早く文字までは判読できませんでした。平仮名を使わず漢字だけが並んでいるように見えます。

sample05asample06a

幟の先端に何かの飾り。獣の面をかぶった人々がその後を練り歩いていきます。

sample09asample08

見物人たち。奥と手前に車が停まっています。

sample11sample09

通りに出ている看板には「味の素」「アスター」「森永の菓子」など日本語が見て取れます。

sample-comparing01sample-comparing02

YouTubeには「百年前の台湾人の結婚式を撮影した貴重な映像記録片(百年前台灣人結婚珍貴紀錄片)」という動画があり、子供が幟をもって歩く後に二輪の貴賓車が続き、その後新婦を乗せた御輿が進んでいく様子が記録されています。

婚礼の際に新婦を運ぶ御輿は「大花轎(大花轿)」と呼ばれていたそうです。中国伝統文化紹介のオンライン記事(「中国传统代表文化——大花轿」)によると、

抬花轿者一般为4人,也有8人的,轿前轿后各半,并配有对彩旗、对唢呐、对铜锣、对高灯等随轿而行。

「彩旗」「唢呐(チャルメラ)」「铜锣(銅鑼)」「高灯」を掲げた人が行列の先を切って進み、4人で「花轎」を運んでいくのが一般的だったとされています。

元々のフィルムには撮影場所の情報がありません。1930年前後、漢字文化圏かつ中華文化圏、なおかつ日本語の看板が通りに並んでいるため日帝時代の台湾で撮影された可能性が高いと思われます。

] 映画の郷 [ 電子工作部:Python + Kivyによるスキャン画像修復システムを構築する(2)

restoration-sample-m

昨年末から作り始めているスキャン画像修復システムの進捗報告です。

フィルムによって、時によっては同じフィルムでも場面によってノイズの出方が様々で、一つのパターンだけ作ってはい完成!とはいかないな、と試行錯誤している感じではあります。それでも修復の精度は間違いなく上がっている実感があります。

数日前に手掛けていた日本の個人撮影動画の一部をGIFアニメにしてみました。

anigif
『初秋の頃』(9.5ミリ個人撮影動画、日本、1930年前後)

1931年頃 9.5mm 仏個人撮影動画『踊る子等』( »Enfants dansant » c1931)

「9.5ミリ動画 05b 個人撮影動画」より

お祭りか何かの催しで、仮装した人々が躍る様子を記録した個人撮影動画。タイトルには子供たちとありますが年配の方も含まれています。前半は古代~中世をイメージした感じで子供たちが花飾りをかぶって踊っています。

途中には二人の子供のクローズアップ、撮影者自身のお子様ではないかと思われます。フィルムケースには『踊る子等』の後に「オデット(ODETTE)」の名が手書きされており、二番目に出てくる少女が対応しているのでしょう。

後半は衣装を変え、料理人姿に着替えての舞踏が捉えられています。

天候の良い日に撮影されており、真っ白な服やシャツの部分がハレーション気味に表現されています。

1930年代初頭 9.5mm 個人撮影動画 『かごめかごめ』(自作スキャナー「綺乃九五式」サンプル動画)

「9.5ミリ動画 05b 個人撮影動画」より

Early 1930s 9.5mm Home Movie « Kagome Kagome »
(Kino Type 95 Film Scanner Sampler)

かごめかごめ、かごのなかの鳥は
いついつ出やる 夜明けの晩に
鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?

昭和6年(1931年)頃に撮影されたと思われる動画。

自宅の中庭で遊んでいる子供4人を父親が撮影した内容です。冒頭はお手伝いさんと思われる女性を交え「かごめかごめ」をしています。その後末っ子のおちびちゃんがカメラを前にポーズを取り始めます。場面は続いて縁側へと移り、兄姉弟が仲良く戯れている様子。大きな飼い犬も登場。最後は再び中庭へと戻って映像が終了。

元々は15本組で入手したフィルムセットのひとつで同じ兄姉弟を中心とした動画が他に数本含まれています。末っ子の坊やが披露していた両手をぐるりと回す動きは学校か何かで習う踊りのようで、別フィルムでお姉さんたちが完全版を披露。他にも仕事絡みの動画があって、内容から撮影者が東京帝国大学の朝比奈教授の下で化学/薬草学を学んでいた研究者さんだったと推測できます。

20メートルフィルム/1175フレーム/再生速度11フレーム毎秒
2400×1800の解像度でスキャンを実施、YouTube版は1080×810まで解像度を下げています

1920年代 -9.5mm 個人撮影動画 フランス『森の精』

「9.5ミリ動画 05b 個人撮影動画」より

« Le Faune », film d’amateur français des années 20

1920年代の半ば~後半に撮影されたと思われるフランスの個人撮影動画。観光で南仏を訪れた家族が寸劇を披露している様子が記録されています。

まずは字幕で場所の説明がされています。南仏ニース近郊を訪れたようで、キャンピング地として人気のあるルー川付近(Les Gorges du Loup)で撮影されたようです。

冒頭、木陰から登場人物たちが順に登場、ファッションショーのランウェイよろしくカメラに向かって歩いてきます。先頭に娘さん、続いて奥さんが登場、最後にお父さんが姿を見せます。

画面が切り替わりと木陰で休んでいる女性二人。奥の方から毛皮をまとった「森の精」が出現、逃げ出した女性を追いかけ始めます。特にオチのようなものはなく、最後は三人が仲良く肩を寄せあって幕を閉じます。

他愛ない即興の素人劇ながら素敵な思い出作りではないでしょうか。

撮影者は息子さんと思われますが、もう一台別に手回しのパテベビー動画カメラを携行していたようで画面に写りこんでいました。

2台目のカメラ
2台目の手回し動画カメラ