1950年代末 仏パテ社 パテ・ウェボ M型9.5mm 動画カメラ(アンジェ二ュー/ベルティオ)

1940年代末、動画カメラの大型化とハイスペック化が進んでいく中で本家仏パテ社が発表したのがターレット型の本機でした。

今回入手したのは「9236」のシリアル番号が付された一台です。1950年代が4桁、60年代に5桁シリアルとなっているようで、レンズの組みあわせ等を含め1950年代末頃に市販/使用されていたものとおもわれます。

本体は灰色仕上げのダイキャスト。ファインダーを二種類搭載(下側がリフレックス型でレンズの捉えている像をリアルタイムで確認できます)、撮影速度は毎秒8~80コマまでの6速対応。30メートル(100フィート)のフィルムまで装填可能な仕様でした。

対応レンズの多さが売りでもあり、ソン・ベルティオ社とアンジェニユー社の広角、標準、望遠、ズームレンズを様々に組みあわせユーザーのニーズに対応できる態勢を取っていました。本機は:

・アンジェニユー R4 (F12.5 1:2.2)
・ベルティオ Cinor (F20 1:1.9) フィルター付
・ベルティオ Cinor (F50 1:3.5)

の3本が付属していました。

実使用されていたと思われ細かなペイントロスや傷、ファインダー内への埃の入りこみが見られます。メカニズム的には良好で、フィルムさえ入れたら今すぐにでも撮影できそうな感じでした。

1931年頃 9.5mm 仏個人撮影動画『踊る子等』( »Enfants dansant » c1931)

「9.5ミリ動画 05b 個人撮影動画」より

c1931 Enfants dansant

お祭りか何かの催しで、仮装した人々が躍る様子を記録した個人撮影動画。タイトルには子供たちとありますが年配の方も含まれています。前半は古代~中世をイメージした感じで子供たちが花飾りをかぶって踊っています。

途中には二人の子供のクローズアップ、撮影者自身のお子様ではないかと思われます。フィルムケースには『踊る子等』の後に「オデット(ODETTE)」の名が手書きされており、二番目に出てくる少女が対応しているのでしょう。

後半は衣装を変え、料理人姿に着替えての舞踏が捉えられています。

天候の良い日に撮影されており、真っ白な服やシャツの部分がハレーション気味に表現されています。

c1920 – 9.5mm 『隙あらば』(Indiscrétion)仏トリブレ社 (綺乃九五式 第4回試運転)

「9.5ミリ 成人向け動画」より

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Indiscrétion (Films Triboulet)

9.5mm、10m(約1分20秒)。

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登場人物は女性一人のみ。薄手のネグリジェ姿の女性が起床し、画面奥にある窓の鎧戸を開く場面で始まります。手前に数歩戻ってくると体の向きを変え、鏡に映った自分の姿を見つめます。続いてカメラの位置が変わり、椅子に座った女性が下着を手に取ってはいていく場面の描写となります。足元にストンと落ちるネグリジェ。

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鏡台を前にパフで白粉をはたいている女性の後ろ姿。最初は胸元まで髪を下ろしていましたが、この時点では束ねられてすっきりとまとめられています。下着姿の女性のバストショット。肩ひもがずり下がって乳房がむき出しとなっています。物思いにふけった表情。立ち上がって着替えを終わらせたところでフィルムが終了しました。

04-Indiscretion04b

そこまで凝ったものではないにせよ鏡や椅子、鏡台など調度品がしっかりしていて安っぽさがありません。またレースカーテンやシースルーのネグリジェなど透過性の高い小物が含まれることで画面の装飾性が高まっています。着替えの場面を順に撮影したソフトな内容で露出度は低め。それでも字幕を上手く活用し、「着替えを見ている誰か」の存在を匂わせることで背徳的な盗撮の感覚を演出しています。

04-Indiscretion03-s

1920~30年代 – 9.5mm 仏ソフトコアポルノ短編集

「9.5ミリ 成人向け動画」より

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Film pornographique des années 1920-30
1920-30s 9.5mm French Softcore Porno Short Movies

1920年代から30年代に闇取引されていた9.5ミリのポルノ短編7本をまとめた一本。それぞれ2分程で全体の長さは15分。1930年代中盤から後半に編集されたと思われます。


1)「運転はお嬢様にお任せ」(Vous me conduirez, Mademoiselle!)

建物の玄関口に立つワンピース姿の女性。お迎えの車が来たようですがどうも様子が変。エンジンの調子がおかしいようです。それなら私が!、とばかりボンネットを開けて修理に挑戦。服を汚してなるものか、エイヤと脱ぎ捨ててしまうのでした。



2)「無題」

受付に現れた帽子姿のエレガントな女性。受付に座っていた男性が何やら言葉で促すと女性が服を脱ぎ始めます。その腰へ伸びていく男の指先…



3)「ピエレット嬢うたた寝危機一髪の巻」(Pierette s’était endormie et …!) エレム映画社

納屋の入口に積み重ねられた藁。ピエレット嬢は疲れた体を横たえうたた寝を始めます。何度も足を組み替えスカートがめくれあがっています。通りすがりのバプティスタン君がこっそり近づいていますよ…



4)「水辺にて」(Au fil de l’eau)エレム映画社

ロジーヌとピエレット嬢の二人は川に洗濯へ。仕事中、洗濯桶が川に落ちてしまいピエレット嬢が引き寄せにいきます。びしょ濡れになり、上着も流されたピエレット嬢は半裸のまま洗濯を続けていきます。3)と同じエレム社作品で素朴な田舎風味。



5)「無題」(レズ絡み)

壁に絵が掛けられた小綺麗な一室、二人の女性が半裸姿でじゃれあう様子を収めた一作。



6)「無題」(ヌーディスム)エレム映画社

ベランダで男性が本を読んでいると外から音楽が聞こえてきました。何だろうと顔を出すとリュートを弾いている女性が一人。すぐ次の場面でなぜか半裸となり、下着姿で音楽を奏でています。降りていった男が声をかけてあげるのでした。



7)「無題」(レズ寄りのライトなSM、盗撮風)

日傘を手に散歩しているサングラス姿の女家庭教師。ベンチで女子生徒?が読書中。背後から近づいていき、指揮棒のようなもので文字を追っていきます。生徒の手から本を取り上げると服を脱ぐよう指示。指揮棒で叩くと女の子は恍惚の表情を浮かべるのでした…


確認できた限り欧米圏でこれまで発売されたVHSやDVDに収められている作品は一つもありませんでした。ただ3)と4)については、2006年にカルト・エピックス社から発売されたDVD『1920年代ヴィンテージ・エロティカ』(Vintage Erotica Anno 1920)に「ピエレット嬢、川に洗濯の巻」という同系作品が収録されています。

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戦前に違法流通していたポルノは製作会社の表記がないものが大半です。1920年代に活動していたトリブレ映画社を幾つか保有しているのですが、今回エレム社作品が3つ追加されたことで比較対象が出来た形です。

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1940年代末~50年代前半 仏GIC社 9.5ミリ動画カメラ

「9.5ミリ動画カメラ」より

GIC 9.5mm Movie Camera
GIC 9.5mm Movie Camera
(w/ Som Berthiot Cinor B 1:1.19 F=20 C Mount)

戦前にパテ社動画カメラなどを手掛けたマルセル・ボリュー氏は戦後ETM(エレクトロ・テクニーク・メカニーク)社に籍を移し動画カメラ開発に関わっていました。市場での成功を収めた後、同社の筆頭株主となったボリュー氏は1949年に社名をGIC(グループマン・アンデュストリエル・シネマトグラフィーク)に変更、同社の第一弾商品として8/9.5/16ミリ動画カメラを発売しました。こちらは9.5ミリ用で一般的に「GIC 9.5」と呼ばれています。

ボリュー氏はやがてGIC社を離れ、自身の名を冠した会社を設立。同社が展開した8ミリ/16ミリカメラは現在の日本でも多くの愛好家から評価されています。

GIC9.5は堅牢な造りが特徴です。本体に栗色のシボ加工を施されており、レンズはソン・ベルティオ社のシノールBを標準搭載。速度は毎秒16フレーム固定で静止画撮影などの機能はありません。本機はシリアルナンバー21132で、側面にルーアンの写真機店ヌヴー社のシールが貼られています。

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ミラーレスでの試写

[メーカー]
仏GIC社

[シリアルナンバー]
21132

[時期]
1949~1953年

[レンズ]
ソン・ベルティオ シノールB 1:1.19 F=20 Cマウント

[本体]
5.4 × 10.0 × 15.5cm (レンズ、持ち手含まず)

1920s – 9.5mm 『美しい浴客』(仏パテ社/英パテスコープ)

水の清らかさに誘はれてこの温雅な水神達は、無作法者の目から隠れたと信じて 自由に水を浴びてゐます。パテベビーはあなた方の爲めに 彼女等の面白い飛躍をこゝに現します。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

湖畔で水浴びする友人に誘われ、うら若き女性陣が着替えを始めます。手を取りあいながら石造りの橋に移動、じゃれあって湖面へと飛びこんでいきます。

当初「水着美女」で名高いセネット短編の抜粋と思ったのですが、石橋は欧州風の造り。静止画で確認すると背景に一瞬映りこんだフランス語の看板(「ルー川ホテル Hôtel du Loup」)を見つけることができました。以前、南仏の観光地ルー川周辺で撮影された個人動画を紹介しましたが、同地周辺で撮影された仏パテ社のオリジナル動画のようです。

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« Hôtel du Loup » 拡大

海外のコレクターさんによるデジタル版を以下で閲覧できます。

[タイトル]
Graceful Bathers

[原題]
Les Jolies baigneuses

[メーカー]
英パテスコープ社(?)

[仏パテ社版カタログ番号]
378

[フォーマット]
10m(ノッチ有)

1912年 – 9.5mm 『液體空氣の實驗』(仏パテ社/伴野商店)

「9.5ミリ動画 05c 伴野商店」より

壓搾機械の方法で零度以下二〇〇〇度に冷却すると空氣は液體となります。而してその状態に於てそれは不思議な特質を所有します。パテー ベビーはこゝに思實に映寫して甚だ興味あるその多くの實驗を明かにお目にかけます。

『パテーベビーフヰルム 解説書 No. 1』
(大橋善次郎編集・出版、1926年)

伴野商店のカタログで189番として紹介されたフィルムで、1920年代中盤に仏パテ社で市販された動画に日本語字幕を付け直したもの。初出はさらに古く、1912年に「科学入門シリーズ」の一貫として公開された記録が残っています。

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カイゼル髭の男性が液体空気の作り方やその特性を紹介していきます。「有害ではありません」と管に口を近づけそのまま飲んでしまうなど科学物としてはなかなかワイルドな展開も含んでいます。

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1912年6月8日付の仏シネ・ジュルナル誌より
「液体空気(L’air liquide)」の文字が見えます

1912年は映画業界が軌道に乗った直後の時期ですでに多くの製作会社が勃興し多様なコンテンツを提供していました。ドラマだけではなく、地誌や科学も素材とされ毎週のように各社が新作を提供していたのです。

結果として、1912~14年の製作となる短編ドキュメンタリーが相当数残されました。1920年代中盤に仏パテ社が9.5ミリソフトの市販化に取りかかった時、この時期の動画が復刻の対象となりました。先日デジタル化した『消えゆく民 アイヌの人々』(1912年)も同じ流れで製作~公開~ソフト化された一本です。

[タイトル]
液體空氣の實驗

[原題]
L’Air liquide et les applications du froid intense, série instructive

[メーカー]
伴野商店

[仏パテ社版カタログ番号]
74

[フォーマット]
10m(ノッチ有)