] 映画の郷 [ 電子工作部:映写機用レンズの実写性能比較システムを作る(02)

映写機用レンズ比較システムの試作機でテストを行いました。テスト対象は仏エルマジ社のマジステール3本とメイヤー・ゲルリッツ社のキノン・スーペリアー。マジステールのF=1:1.6 40ミリは仏パテ社のリュクス映写機、F=1:1.9 40ミリはスイス製パイヤール・ボレックス社のD型映写機、F=1:1.9 45ミリはボレックス社のDA型映写機、キノン・スーペリアーF=1:1.6 40ミリは独パテックス社の200B型映写機についていたものです。

被写体は1922年公開『ちびっこギャング(Our Gang)』の英パテスコープ社抜粋版(「Fickle Flora」10240番)より犬の画像。

[エルマジ社マジステール F=1:1.6 40ミリ]

レンズ中央部付近の解像度は高く、犬の毛並みの質感や土表面の細かな陰影も綺麗に再現されています。周辺部では光量低下(ケラれ)が目立ち、流れるような感じのボケが発生しています。

[エルマジ社マジステール F=1:1.9 40ミリ]

中央で焦点を合わせているはずが何度やっても完全に結像しませんでした。レンズを一旦ばらして清掃しても結果は変わらず。他のレンズと比べて被写界深度が浅く、フィルムに発生しているわずかな凹凸でピントが外れてしまうようです。映写機で実使用する際にもピント合わせがシビアな一本ということになります。左上、左下の隅の光量低下はF=1:1.6 40ミリより大きくなっています。

[エルマジ社マジステール F=1:1.9 45ミリ]

四隅ぎりぎりはさすがに光量が落ちているもののケラレは比較的少なく、周辺部まできっちりピントがあっています。今回試した3本のレンズで実写能力は一番高かったです。画質がシャープで1:1.6 40ミリと比べてやや「硬い」感じの画質。また40ミリの2本が赤みを強調した色の出方をしているのに対し45ミリはモノクローム感が強いです。

[メイヤー・ゲルリッツ社 キノン・スーペリアー F=1:1.6 40ミリ]

「マジステール F=1:1.6 40mm」と「F=1:1.9 40mm」の中間位の画質、でしょうか。マジステールと比べて明るい部分がやや強く出ていてコントラストが強調されています。周縁部のボケ方はマジステール以上に激しく癖があります。

上に挙げたレンズの特徴(ケラれが目立つ、ピントがあいにくい…)は実写時に感覚として分かってくる話ではあります。今回のシステムを練り上げていくと複数のレンズを同一条件で並べた上で違いを可視化でき、必要ならグラフ化、数値化して定量的に比較できるようになります。

今回は試作機の位置付けで、テストによって幾つか問題がでてきました。

1)今回各レンズの焦点距離とF値から計算して3Dプリンタの補助パーツを製作したのですが、どこかで計算を間違ったようで焦点距離35ミリ以下のレンズで思っていた結果になりませんでした。

2)フィルムの平面性。フィルムは巻き癖がついてしまうためやや湾曲しがちで、しかも古い9.5ミリは湿度の影響で表面が凸凹しているものが多いです。一般的な映写機は金属(主に真鍮)のゲージ部でフィルムをサンドイッチ状に挟みこみ平面性を確保していますが、今回は2ヵ所の突起でフィルムを引っ掛けているだけなのでまだその意味で安定していません。

3)システムの精度の問題。今回のテスト方式ではレンズが僅かに斜めになっていただけでも結果が変わってきます。レンズの被写体深度を考慮しても十数ミクロン~数十ミクロンの精度が要求されており、測定ごとにピックテスターで条件を揃える必要がありそうです。

この辺をフィードバックした形で修正を施していく予定です。

ちなみに焦点距離35ミリ以下のレンズでもピントあわせには成功しています。ただし画像がセンサーの四方からはみ出る形になってしまいました。レンズの一番周辺の部分が見切れているため上のデータとは対等には扱えませんが、参考までにリュクス映写機用の32ミリレンズとパテベビー用のスタンダードレンズ、パテクソール・クラウス25ミリレンズの結果も公開しておきます。

リュクス映写機用32ミリとパテベビー用のスタンダードは解像度、ヒストグラム共に似たような結果が出ています。ただしベビー用レンズはサイズが小さいこともあって周辺部での光量低下が目立ちます。パテクソール・クラウスはサイズ的にパテベビー用レンズと同じくらいながらも光量低下が少なく全般的にクリアな映像になっています。

] 映画の郷 [ 電子工作部:映写機用レンズの実写性能比較システムを作る(01)

今年になってから9.5ミリ映写機用レンズの実写性能を比較するシステム作りを始めました。運用できるレベルには達しておらず試行錯誤中ながらもある程度形が見えてきたので経過報告です。

システムのコア部分に転用した独イハゲー社のカメラ用アクセサリー2点(マクロ撮影用ベローズ & 金属製エクステンションチューブ)。どちらも本来はカメラとレンズの間にかませて使用するものです。

左の写真はイハゲー社のアナログカメラにマクロ撮影用ベローズを実際につけてみたところ。蛇腹を伸ばすと焦点距離が長くなり、小さな被写体を接写できるようになります(右は桃色のカスミソウを撮影した一枚)。

両者ともに単体ではマクロ撮影にしか使えないのですが、今回は3Dプリンタで製作した補助器具を埋めこみ別種の機器に流用していきます。

スケッチブックでイメージ作り。センサー/レンズ側とフィルム/光源側の二つのパーツに分けて作っていくことにしました。

【センサー/レンズ側】

金属製エクステンションチューブは竹の節に似た構造になっていて幾つかに分けることが出来ます。今回はこのチューブを二つに分け、一方の内側に樹脂製リングをかませたレンズを埋めこんでいきます。

映写機用レンズには共通規格としての「マウント」概念がないため外径や長さがまちまちです。レンズの外径を図り、フィットする形でリングを作っていきます。

左は仏エルマジ社のレンズF=1.6 40mm(レンズの外径30.0ミリ)を装着した時の様子。右は同社のレンズF=1.9 45mm(レンズの外径28.0ミリ)をつけた際の様子。

【フィルム/光源側】

金属製チューブの残り半分にも3Dプリンタで作ったパーツを埋めこんでいきます。9.5ミリフィルムの断片(3コマ分)を固定できるフィルムフォルダーです。二ヵ所の小さな突き出しをフィルムの穴(パーフォレーション)にはめて固定する形です。

このフィルムホルダーをセットする仕組みを作っていきます。複数の樹脂パーツを組みあわせたもので、四角い箱型の部分がランプハウスとなっており、1)LED電球、2)背面の光を反射させるお椀型のミラー、3)パテベビー映写機から取り出したコンデンサーをはめこんでいます。LEDの電圧が12Vだったので単三電池8本を外付けにして電力を供給します。

フィルムホルダーをはめこんだ金属製チューブを置きます。電源のスイッチをオンにするとフィルムが一コマ分、チューブの中央部で照らし出されます。

センサー/レンズ側パーツとフィルム/光源側パーツを向かい合わせにセットします。マクロ撮影用ベローズの土台部には2ミリ弱程の隙間があるので、光源側パーツの土台から伸びた薄い板を差し込む形になります。

組みあわせたところ。フィルム部分が光っています

同じ状態でセンサー/レンズ側から見たところ。レンズを通して見ているため天地左右が逆転しています。センサー/レンズ側にはカメラをセットするマウント(EXAKTAマウント)がありますので、マウントアダプタ(マイクロ4/3-EXAKTA)経由でミラーレスカメラ(マイクロ4/3マウント)を取りつけます。

蛇腹でレンズとの距離を調整し、映写された画像の幅とセンサー幅が一致する地点を見つけさらにピントをあわせていきます。上手くいくとミラーレスカメラの画角(3:4)一杯に拡大された映像が映り、デジタル撮影ができるようになります。

冒頭には「映写機用レンズの実写能力比較システム」と書きましたが、その実態はミラーレスカメラを土台にしたデジタルフィルムスキャナーです。

イメージ図は上のようになっています。右側からランプハウス、フィルム、距離を置いて映写機用レンズと並んでいて、この部分には簡易化した映写機が隠れています。一般的に映写機は投影された映像を「スクリーン」に映しますが、今回はスクリーンに置き換えた剥き出しのカメラセンサーで画像データを取りこんでいく訳です。

一方、映画フィルム用のスキャナーは照らし出されたフィルムをセンサーとレンズをセットにした「カメラ」で撮影するという発想になっています。

センサー~レンズ~フィルム~光源までの並びは同一。映写機で投影した画像をセンサーで取りこむ前者と光で照らされたフィルムをカメラで撮影する後者は発想こそ異なっているものの物理・光学的には同じことをしている話になるのです。

パイヤール・ボレックス社 DA-37型 9.5mm/16mm両用 サイレント映写機(1937年)

「映写機」より

別に紹介している1933年のDA型のアップデート版として1937年に発売されたのがこちらの通称DA-37です。

外観が一部変更され、筒型のランプハウスの横に半円状のせり出しが見られます。内部に羽が格納されていて、映写中に回転しながら光源のオン/オフを繰り返すのですが羽の大型化に伴ってこのようなデザインとなっています。その他スイッチなどに細かな仕様変更有り。

レンズは1:1.9のF=45mm、フレームのデザインが簡素化されています。最も大きな変更点は、ランプが以前の250Wから400Wに変更されたことです。

スペック、デザイン的な変更があるためDA IIとして売り出しても良さそうなものですが、実際には当時DAとして発売されており、シリアルも以前からの連番を踏襲しています。現在メーカーの公式ページではDA-37の名前で紹介されています。

シリアルナンバー: 12398
対応フィルム: 9.6/16mm
製造国:スイス
製造時期: 1937年~
レンズ: Hermagis Magister F=40mm 1:1.9 (シリアル無)
対応電圧: 110-125v
ランプ: 400w

スイス パイヤール・ボレックス社 G916型 9.5mm/16mm両用映写機

Late 1930s Paillard Bolex G916 9,5/16mm Dual Silent Projector
w/Dallmeyer Projection Lens F=50mm

D〜DA型映写機の後継機として1936年に発表され、50年代まで市販されていたボレックス名機のひとつ。

2014年にイギリスのセラーから購入。バーミンガムのシネ・エキップメンツ社が販売していた英国仕様の一台で、レンズが英ダルメイヤー製となっており、240/220Vから110Vにダウントランスする変圧器も付属していました。

D〜DA型映写機と同様、ゲージとスプロケット類を交換できる仕様になっています。

実際に使ってみた感想として、動きがなめらかかつ静かで安定しています。750Wのランプに対する排熱も上手くいっていて振動をほぼ零に抑えながら映写可能。当時の最高峰クラスのレンズを採用しているため画質も良く、1930年代の9.5ミリ用映写機としては最良のひとつと断定できます。

[メーカー名]
スイス パイヤール・ボレックス社

[製造]
スイス

[発売時期]
1936年〜50年代末

[シリアル番号]
G3716

[対応フィルム]
9.5mm/16mm両用

[対応電源]
110~125V

[コンセント]
欧州仕様

[レンズ:]
Dallmeyer Projection Lens F=50mm 181139
[ランプ]
120V 750W (DDB)

[履歴]
2014年12月26日購入

パイヤール・ボレックス社 DA型 9.5mm/16mm両用 サイレント映写機(1933年)

1933年にスイスのパイヤール・ボレックス社から発売されたのがこちらのDA型映写機です。

本体はやや扁平で、緑がかった灰色をしています。後方からフィルムを流しこみ、ゲージを通じてまた後方へと送り返す構造。実際にモーターのスイッチを入れてみると、その静かでなめらかな立ち上がりにおどろかされます。

普段とは異なるルートを使ってスペインから取り寄せた一台。注意書きのプレートがスペイン語表記になっています。

シリアルナンバー:5643
対応フィルム:9.6/16mm
製造国:スイス
製造時期:1933~37年
レンズ:Hermagis Magister F=40mm 1:1.9 (シリアル:274845)
対応電圧:110-125v
ランプ:250w